第3章
夢小説設定
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団長室の窓から、訓練場が見える。
冬の空気は澄んでいて、動く人影がはっきりと分かる。
──ユニ。
動きに、乱れはない。無理も、焦りもない。
その少し離れた位置に、リヴァイがいる。
距離は、適切だ。近すぎず、遠すぎず。
以前のような張り詰め方も、最近見え始めていた停滞も、今はない。
……越えたな。
ほんの一線。自分で気づき、自分で踏み直した。
それだけで十分だ。
俺は、机に置いた書類に視線を落とす。
声をかける必要はない。問いただす理由もない。
問題は、まだ起きていない。
そして──今は、起きそうにもない。
兵士長は兵士長として立っている。兵士は兵士として動いている。
それ以上でも、それ以下でもない。
小さく息を吐き、ペンを取った。
このままでいい。
少なくとも、今は。
──────────────
トロスト区支部は、いつもより静かだった。
壁外調査前の、独特の空気。人は多いのに、声が少ない。
私は、机の上に広げた装備表を指でなぞる。
刃の本数。ワイヤーの予備。ガスの充填量。
どれも、いつも通り。間違いはない。
「ユニ。」
呼ばれて、顔を上げる。
リヴァイ兵士長は、すぐ横。書類を1枚、こちらに差し出してくる。
「最終確認だ。お前の分。」
「ありがとうございます。」
受け取って、目を通す。
……問題なし。
「異常はありません。」
「そうか。」
短い返答。それだけ。
以前なら、ここで一言、二言、あったかもしれない。
「無理はするな」とか。「位置は覚えてるな」とか。
今は、ない。でも──その距離は、遠くない。
机ひとつ分。肩が触れない程度。けれど、確かに隣にいる。
(……近いのに。)
そう思って、少しだけ不思議になる。
視線を落とすと、リヴァイ兵士長の手元が見える。
指先。装備の癖。無駄のない動き。
……変わらない。
そう思う。
変わったのは多分、私の方だ。
「ユニ。」
また、呼ばれる。
「はい。」
「調査中、判断に迷ったら──」
一瞬、言葉が途切れた。私は、続きを待つ。
「……通常通り、報告しろ。」
「分かりました。」
それだけ。
でも、"俺を見るな"じゃない。
そう、思った。
以前なら、「俺の判断を待て」と、そう言われていた。
今は、違う。任されている。兵士として。
それが、少しだけ──嬉しい。
同時に、少しだけ寂しい。
「準備は、以上だ。」
リヴァイ兵士長が言う。
「はい。」
私は、書類をまとめて立ち上がる。
すれ違いざま、ほんの一瞬視線が交わった。
それだけ。でも。
……大丈夫。
そう、思えた。
この距離で。この関係で。今は、まだ。
外では、壁の向こうへ向かう準備が、着々と進んでいる。
知らず知らずのうちに、私は深く息を吸っていた。
……行こう。
壁外調査は、もうすぐだ。