第3章
夢小説設定
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視界に入れた。意識して、だ。
いつもなら無意識に置いている位置に、今日ははっきりと「見る」という動作を挟んだ。
整列の列。前後の間隔。風向き。
──ユニ。
距離は、適切だ。近すぎもしないし、離れすぎてもいない。
……だが。
ここ数日続いていた、あの「半歩分の空白」がない。
ただ、それだけの事だ。それだけ、なのに──
胸の奥で固くなっていたものが、ほんの僅かに緩む。
視線を向けた瞬間、ユニが気づいた。
気づいて、一瞬だけ目を瞬かせて──
それから、フッと笑った。
大きくもない。意味を含ませるでもない。
ただ肩の力が抜けたような、静かな笑顔。
──あぁ。
思わず、息を吐く。
(……良かった。)
声には出さない。出す必要もない。
ユニはもう、視線を前に戻している。
いつも通りの姿勢。いつも通りの呼吸。
だがその背中には、ほんの少しだけ、安心した色が残っていた。
俺は、視線を外す。
これ以上は、見ない。だが「見ていた」事は確かに、伝わったはずだ。
それでいい。
寄せもしない。突き放しもしない。
ただ動ける事を、確かめただけだ。
……まだ、答えはない。
だが、動かないままじゃない。
それだけで今は──十分だった。
───────────────
冬の朝は、空気が硬い。
吐く息が白くなるほどではないけれど、指先が少し強張るくらいの冷え方。
私は、いつものように歩いていた。
いつもの廊下。いつもの仕事前。
……でも。
ここ数日、意識して少しだけ距離を取っている。
肩が触れない程度。風除けになる位置より、半歩外。
近づこうと思えば、できる。けれど、そうしない。
それが今の自分にとって、ちょうどいい気がしていた。
その時──視線を、感じた。
横。リヴァイ兵士長だ。
足を止めるほどではない。振り返るほどでもない。
けれど、確かにこちらを見ている。
……あ。
気づいた。
距離だ。
私が寄っていない事。いつもより、少し離れている事。
それに気づいた。
ほんの一瞬、リヴァイ兵士長の足取りが緩む。
表情は変わらない。声も、出ない。
でも視線だけが、こちらに確かに留まっていた。
──あぁ。
胸の奥が、少しだけ緩む。
(良かった……。)
理由は、はっきりしない。
叱られたわけでもない。呼び止められたわけでもない。
ただ「見てくれた」。それだけで。
私は、思わず口元を緩めていた。
小さく。本当に、無意識に。
リヴァイ兵士長と、一瞬だけ、目が合う。
すぐに逸らされる視線。
それでいい。今日は、それでいい。
私はそのまま、歩き続ける。
距離は、変えない。でも、離れているわけでもない。
寒さは、まだ残っている。冬は、まだ続く。
それでも今のこの距離が、ちゃんと「見えている」と分かっただけで、胸の奥は思ったより温かかった。