第3章
夢小説設定
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空中で、視界が交差した。
……近い。
反射的に判断する。
前にも一度、同じような事があった。あの時は、体を捻って回避できた。
今回も、このまま行けば衝突する。けれど──
気づくのが、前より早かった。まだ、間に合う。
そう判断して、立体機動装置の操作に入る。
──だが。思った動きをしない。
(……?)
一瞬視線を装置に向けかけて、すぐにやめた。
原因を探している場合じゃない。今は、目の前だ。
視線を戻す。
先にいる兵士の背中。距離、角度、速度。
足を出す。衝撃を、空中で受け流す。
ワイヤーの巻き取りに異常はない。アンカーは、最初に刺した壁のまま。
着地──
ダン、と、想定よりも大きな音が響いた。
足に、痺れが走る。
「……っ!」
一瞬、体重が揺れる。けれど、転ぶほどじゃない。
他の兵士達が、ほっとしたように息を吐く気配がする。
──うまく、避けた。
そう思われただろう。私自身も、そう判断していた。
次の瞬間。
「……無茶な避け方をしたな。」
低い声。
リヴァイ兵士長が、いつの間にか近くにいた。
「足は。」
視線が、下に向く。
「痺れているだけです。少し休めば、問題ありません。」
即答。事実だ。痛みはあるが、致命的じゃない。
「なら、装備を外して休め。」
短く言って、続けて問いが来る。
「装置の不具合か?」
一瞬、言葉に詰まる。
──あ。そうだ。
「……はい。多分。」
自分でも、今さらのように気づく。
「原因を特定次第、報告書を上げろ。」
「はい。」
装備を外しながら、足の感覚を確かめる。
まだ痺れている。けれど、動かせる。
怪我じゃない。事故だ。そう、結論づける。
ただ──胸の奥に、小さな引っかかりが残っていた。
さっき……もし、もう少し判断が遅れていたら。
もし、立体機動装置が、もう少し言うことを聞かなかったら。
そこまで考えて、軽く首を振る。考えるのは、後でいい。
今は、休んで、原因を調べて、報告書を書く。
それだけだ。
───────────────
視界に入った瞬間、分かった。
……ぶつかる。
空中。ユニと、別の兵士。交差する軌道。
だが、前にもあった。
同じような距離。同じような速度。
あの時は──俺が、動こうとした。
だがユニは自分で体を捻り、判断ひとつで回避した。
だから今回は、動かない。最初から。
ユニは気づいている。このまま行けば衝突する事を。
視線。体の向き。重心。
どれも、判断に入っている。
──問題ない。
そう、思った。……その、次だ。
一瞬。ユニの視線が、自身の立体機動装置に落ちた。
ほんの、刹那。
だが──見逃せる長さじゃない。
……?
嫌な予感が、背骨を走る。
(まさか……装置に、何かあるのか?)
声を出すには遅い。飛び出すには、距離がある。思考が、跳ねる。
だが、次の瞬間。ユニの視線は、もう前に戻っていた。
迷いが、ない。
装置を"見る"のをやめ、人を見る。
判断を切り替え、身体が先に動く。
──あいつらしい。
空中で、踏み込む。
前を行く兵士の背に足をつけ、衝撃を逃がす。
ワイヤーは生きている。軌道は、崩れていない。
そのまま、着地。
だが──
ダン!
音が、大きい。
余計な動き。遅れた分の、無理。
周囲が、息を吐く。
「……うまくやったな。」
「さすがだ。」
──違う。
俺は、もう走っていた。
距離を詰め、ユニの前に立つ。
「無茶な避け方をしたな。足は。」
視線は、足元。
荷重。わずかな、ブレ。
「痺れているだけです。少し休めば、問題ありません。」
即答。判断も、冷静だ。
……だが。
俺は、頷かない。
「なら、装備を外して休め。装置の不具合か?」
一瞬──ユニの表情が、揺れる。
「……はい。多分。」
やっぱり、か。
舌の奥が、苦い。
「原因を特定次第、報告書を上げろ。」
それだけ言う。
余計な事は、言わない。
だが胸の奥に残るのは、安堵じゃない。
──選ばなかった。
助けに出る、という選択を。
正しかった。判断としては。
だが、もしあの一瞬、ユニが切り替えられなかったら。
もし着地が、もう少し遅れていたら。
……俺は。
拳を、無意識に握る。
動かない、と決めた。それを、選んだ。
だが──これでいいのか。
その問いが、はっきりと形を持って胸の中に残ったまま、消えなかった。