第3章
夢小説設定
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冬の食堂は人が集まっている分、外よりは幾分ましだ。それでも、寒がりな奴には足りない。
ユニは、無意識に肩をすくめている。力が入ったまま、何度も首を回す。
……またか。
ここ最近、よく見る動作だ。肩、首。冷えが抜けきらず、固まっている。
言える事は限られている。
「温めとけ。」
それ以上は、言えない。言わないと決めている。
食堂の長椅子に並んで座っていた時だった。
ユニがまた、肩を押さえた。
その瞬間。
「ユニ。」
声をかけたのは、ナナバだ。
自然な歩調で近づいてきて、何でもないように言う。
「寒がりだもんね。私が揉んであげようか。」
一瞬、ユニが迷う。ほんの一瞬。
それから、小さく頷いた。
「……いいの?」
その声は控えめで、頼る時の、いつものやつだ。
ナナバの手が、ユニの肩に置かれる。
躊躇いはない。慣れた動き。
「うわ……結構硬いね。これは辛い。」
指が動くたび、ユニの肩が僅かに沈む。
……チッ。
視線を逸らす。逸らしている、はずなのに。
ナナバの視線が、こちらを一瞬だけ捉えたのが分かった。
分かっててやっている。
あいつは、そういう女だ。
中性的な顔立ち。距離の取り方も、うまい。
ユニが拒まない事も知っている。
唯一の、対等な友達。それも、分かっている。
だから、何も言えない。言う理由が、どこにもない。
(……クソが。)
そう思った瞬間。
その感情に、さらに苛立つ。
何に腹を立てている。
誰が触ろうと、問題はない。問題はないはずだ。
ユニは、兵士だ。ナナバは、仲間だ。
何ひとつ、間違っていない。
なのに胸の奥に残るのは、理由のつかない不快感。苛立ち。
──触れるな、なんて言える立場じゃねぇ。
ナナバの手が離れる。
「少しは楽になった?」
「うん。……ありがとう。」
ユニは少し肩を回して、本当に楽になったように息を吐いた。
その様子を見て、余計に腹が立つ。
……あぁ、クソ。
俺は、黙って立ち上がる。
「行くぞ。」
いつも通りの声。いつも通りの調子。
ユニが、すぐに立ち上がる。
ナナバは最後にもう一度だけこちらを見て、僅かに口角を上げた。
……覚えてろ。
心の中で吐き捨てて、それ以上は考えない。
考えたところで、答えは出ない。出してはいけない。
俺は少しだけ歩幅を狭めて、ユニを視界に入れる。
それだけで、今は十分だ。
──十分だと、思い込むしかなかった。