第3章
夢小説設定
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体を起こすと、思ったよりも楽だった。頭も胸も、昨日までの重さが嘘みたいに引いている。
無意識に、視線が動く。
─昨日、あの人が座っていた場所。
……いる。まだ、いる。
しかも──目が、合った。
「……起きたか。」
低い声。眠気を含まない、いつもの調子。
「はい……おはようございます……。」
そう答えながら、じっと顔を見る。
……疲れている。
はっきり分かる。目の下の影も、表情の張りも。
──もしかして。
考えがまとまる前に、額に触れる感触。ひんやりしていて、安心する。
「……下がったな。」
その声と同時に、長く、深い息が吐き出された。安堵が、そのまま音になったみたいだった。
胸の奥が、きゅっとする。
「あの……ご心配と……ご迷惑を……おかけしました……。」
申し訳なさを込めて言うと、リヴァイ兵士長は少しの間、何も言わずにこちらを見下ろした。
疲れた目で、逃がさない視線で。
「あぁ……本当にな。」
淡々とした言い方。でも、怒っている感じはしない。
「念のため、今日も休め。仕事はするんじゃねぇぞ。横になってろ。」
即断。
「あ……あの……、」
何か言おうとした、その先を遮るように続く。
「いや……歩けるなら、執務室だ。」
一拍。
「前と同じだ。ソファで寝ろ。」
一瞬、言葉の意味を噛み砕いて。
「……!」
思わず、息を吸った。
「……はい。」
即答だった。
申し訳ない気持ちは、確かにある。けれど──そばに、いられる。
それだけで、胸の奥が少し温かくなった。
リヴァイ兵士長は、それ以上何も言わない。ただ立ち上がって、こちらを見下ろす。
「立てるか。」
「……はい。ゆっくりなら。」
「ならいい。」
差し出された手は、ほんの一瞬だけ迷ってから引っ込められた。
代わりに「……転ぶなよ」と、ぶっきらぼうな声。
でもその背中は、歩調を落としている。私はその少し後ろを、静かについて行く。
──そばにいる。
それだけで、今日は十分だった。
────────────────
兵舎の廊下。
消灯には、まだ少し早い時間。
片付けを終えた兵士達が、小声で雑談しながら歩いている。
「……なぁ。」
声を潜めるようにして、1人が切り出した。
「俺、こないだ見ちまったんだけど。」
「何を?」
隣の兵士が、首を傾げる。
「夜さ。兵舎の中で──」
一瞬、間を置いてから。
「リヴァイ兵長が、ユニを抱いて歩いてた。」
「……え?」
思わず、足が止まる。
「……抱いて?」
「完全に腕、回してた。」
「は?」
「冗談だろ。」
「いや、マジで。」
沈黙。
それから、ひそひそと声が重なる。
「……それ、前の"近い"とかの話じゃねぇな。」
「だよな。」
「介抱、じゃねぇのか?怪我とか、体調不良とか……。」
「だったら医務室だろ。それに、あの抱き方は──」
言葉が、途切れる。誰も、続きが言えない。
「……前もさ……距離が近いって話、あったよな。"男女の仲じゃないか"って。」
「結局、確証なくて流れたけど……。」
小さく、息を呑む音。
「それって……やっぱり──」
「……だよな?」
「……これは──戻ってきた、どころじゃねぇな。」
「上書き、された感じだ。」
誰かが、ぼそっと言う。
「兵長が、誰かをああやって抱く姿なんて──今まで、見たことあったか?」
答えは、ない。
「……だよな。」
沈黙。
その中で、誰かが小さく笑う。
「まぁ。噂が本当かどうかは、どうでもいいけどさ。ただ──兵長が、あんな顔してたのはちょっと、忘れられねぇな。」
誰も、否定しなかった。噂は、また巡り始める。
前よりもずっと静かに、でも確かに──根を持って。