第3章
夢小説設定
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夕方。
執務室の窓から差し込む光はまだ白くて、長い影を床に落としている。
夏だ。
定時を過ぎても、日は高い。
「……こんな時間か。今日はここまでだ。」
書類をまとめながら、リヴァイ兵士長が言う。
私は反射的に、時計を見る。
──定時。
今日の業務は、もう終わりだ。
椅子からなかなか立つ気配を見せない私に、低い声が落ちてくる。
「……どうした。戻らねぇのか?」
少しだけ、間があった。
その間に、胸の奥がざわつく。理由は分かっている。分かっているからこそ、言葉にするのが難しい。
「……いえ。少し……考え事をしていて。」
自分でも、曖昧だと思う返事。
リヴァイ兵士長はこちらを一度見てから、机に肘をついた。
「考え事、って顔じゃねぇな。……迷ってる顔だ。」
見抜かれている。
「……はい。」
小さく、認める。
前なら、もっと簡単に言えた。"隣にいたいです"とか、"もう少し一緒にいてもいいですか"とか。
でも、今は──自分の気持ちを意識し始めた分、慎重になっている。
頭の片隅で、どうでもいい考えがよぎる。
(……後で、ノートに書かなきゃ。)
場違いで可笑しくて、それでも、逃げ道みたいな思考。
「……ユニ。」
名前を呼ばれて、はっとする。
「……はい……。」
視線を上げると、リヴァイ兵士長はもう立ち上がっていた。
「紅茶を淹れてやる。」
短い言葉。
「飲みながら、ゆっくり悩め。」
一瞬、理解が追いつかない。
「……!」
胸の奥が、きゅっと音を立てた気がした。
──まだ、一緒にいられる。
その事実だけで、張り詰めていたものが緩む。
「……悩みは、解決しました。」
思わず、そう言っていた。
「は?」
即座に返ってくる、素の声。
私は立ち上がり、深く一礼する。
「ありがとうございます。」
言葉は、それだけで十分だった。
「おい。」
低く、少しだけ強い声。
「ひとりで悩んで、ひとりで完結するんじゃねぇ。」
叱っているようで、でも、突き放す響きじゃない。
私は顔を上げて、小さく頷いた。
「……はい。」
紅茶の準備をする背中を見ながら、思う。
今日はただ、"ここにいたい"と思った。
理由も、結論も、まだ要らない。
──それだけで、十分な夕方だった。
夏の光は、まだ窓の外に残っている。