第3章
夢小説設定
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ハンジさんの部屋の前で、私は一度、立ち止まった。
「ユニ。君、甘い物好きだろ?」
扉の向こうから顔を出すハンジさん。そして笑顔と、やけに弾んだ声。
「……はい。好きですけど……。」
嫌な予感は、たいてい当たる。
「実はね、ここに貰い物のケーキがあるんだ。それも、みっつ。」
一瞬、喉が鳴った。
「……戴けるんですか?」
「うん。私は甘い物は食べないからね。その代わり──条件をつけよう。」
やっぱり。
ハンジさんは、満面の笑みで扉を大きく開けた。
「デスクの上を片付けてくれたら1個。床を半分片付けてくれたら、さらに1個ずつ。どう?」
視界に入ったのは──言葉を失う光景だった。
書類、器具、謎の部品。床にも、机にも、規則性はない。
「……デスクの上、だけなら……。」
私がそう答えると、ハンジさんは「よし来た!」と言わんばかりに頷いた。
結果。
ケーキは、確かに美味しかった。けれど代償として、私の服と髪には、しっかり埃がついた。
そして、そのまま──リヴァイ兵士長の執務室。扉を開けた瞬間。
「……。」
何も言われない。
けれど視線が一度、私を上から下までなぞる。
その一拍で、もう分かる。
(……あ。)
「……ハンジか。」
低い声。
言い当てられて、私は思わず一歩後ろに下がった。
埃の匂い。それに、微かに甘い匂い。
さすがにこれ以上近くにいるのは、気が引ける。
「リヴァイ兵士長……、この前もですけど……」
少し、距離を取りながら口を開く。
「私の、何を見て判断してるんですか?」
リヴァイ兵士長は、手元の書類から目を離さない。
「何がだ。」
「純粋な疑問です。今、部屋に入ってきた私に何かあったなんて……普通、気づかないと思うんです。」
一拍。
紙をめくる音が止まり、ようやくこちらを見る。
「……逆だ。」
短く。
「気づかない方が、鈍い。」
私は、瞬きをした。
「歩き方。視線の落ち方。服の皺と、匂い。」
淡々と、列挙される。
「それに──」
ほんの一瞬だけ、目を細めて。
「甘い物を食った後は、動きが少し遅くなる。」
……そんなところまで?
言葉を失っていると、リヴァイ兵士長はもう興味を失ったように視線を戻す。
「気にするな。見てるだけだ。」
それだけ。
けれどその"だけ"が、やけに重かった。
私は小さく息を吐いて、改めて背筋を伸ばした。
(……見られてる、んだな。)
良くも。悪くも。
それを今さら、実感してしまった。