第3章
夢小説設定
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リヴァイ兵士長から渡されたメモを、私は指先で押さえた。
名前が、いくつか並んでいる。
見慣れた文字もあれば、ほとんど話したことのない名前もある。
「こいつらを、俺の執務室に集めてくれ。」
それだけ言って、リヴァイ兵士長はもう机に向き直っていた。
理由は聞かなかった。聞いても聞かなくても、変わらない。
ただ呼べ、と言われたから、呼ぶ。それだけだ。
1人ずつ声をかけるたび、同じ反応が返ってくる。
「……何の用件だ?」
「さぁ……私にも、分かりません。」
リヴァイ兵士長が説明しなかったのなら、きっとそれは、知らなくてもいいという事なのだろう。少なくとも、今は。
時間をかけて、全員が揃う。
執務室は狭くはない。それでも人数が集まると、空気が変わる。
壁際に立つ者。椅子の背に手を置く者。視線の置きどころを探す者。
私は最後に入って、リヴァイ兵士長のそばに立った。いつもの位置だ。
「……揃ったな。」
低い声。
それだけで、室内の空気が一段締まる。
リヴァイ兵士長は椅子から立ち上がり、部屋の中央で集まった顔ぶれを見渡した。
1人ずつ。確認するように。無言で。
そして──最後に、私を見る。ほんの一瞬。けれど。
──あ。
そう思った。
理由は分からない。内容も、予想できない。
ただ──
(もう、迷ってない。)
それだけは、はっきり分かった。
次の瞬間、リヴァイ兵士長は視線を外し、話を始める。
「今日から、班を作る。」
低く、はっきりした声。
「俺が指揮を取る。」
ざわ、と小さく空気が動く。けれど、誰も口を挟まない。
「役割は単純だ。俺の戦闘に追随し、状況に応じて支援する。討伐、制圧、撤退判断──現場で完結する判断を、最短で出す。」
簡潔。余計な言葉はない。
「これは栄誉でも、特別扱いでもねぇ。むしろ──」
一拍。
「要求される精度は、今までより高くなる。」
沈黙。
「拒否するなら、今しかない。」
誰も、声を上げない。
当然だ。
ここに集められた時点で、覚悟がない者はいない。
「……よし。」
それだけ言って、リヴァイ兵士長は話を切った。
「詳細は、後で伝える。今日は解散だ。」
言葉が落ちて、執務室に短い静けさが残る。
誰も、すぐには動かない。
命令は簡潔だった。説明も、補足もない。
それでも──全員が、意味だけは正確に受け取っている。
「……以上だ。」
その一言で、リヴァイ兵士長は机に手をついた。
視線は、もう誰も見ていない。発表は終わった、という態度。
1人が、息を整えるように小さく頷く。
それを合図にしたかのように、他の者達も静かに踵を返した。
敬礼はない。だが、背筋は自然と伸びている。
扉が開き、1人、また1人と廊下へ出ていく。
すれ違いざま互いに視線を交わす者もいれば、何も言わず、前だけを見る者もいる。
私は、最後までその場に残っていた。
いつもの位置。リヴァイ兵士長の、少し横。
視線を向けると、彼はもう書類に目を落としている。
──さっきまでの空気が、嘘のように切り替わっていた。
「……行くぞ。」
短く、低い声。
それが自分に向けられたものだと分かって、私は小さく頷く。
「はい。」
2人で、扉へ向かう。
部屋を出る直前ふと振り返ると、執務室はもう、いつも通りの顔をしていた。決断が下された場所だとは、誰にも分からないほどに。
扉が閉まる。
廊下の空気が、少しだけ軽い。
前を歩く背中は、迷いなく一定の速度で進んでいる。
──さっき、確かに。一瞬だけこちらを見た視線に、ためらいがなかった。
それだけが、なぜか妙に印象に残った。
私は、何も聞かない。
今は、隣を歩いていれば、それでいい。
静かな足音が、廊下の奥へと消えていった。