第3章
夢小説設定
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秋の気配が、本部の敷地にも少しずつ降りてきていた。
風は涼しく、日差しはまだ柔らかい。
その日、中庭の方がやけに騒がしかった。
笑い声と、慌ただしい足音。それから──甲高い鳴き声。
「……何か、あったんでしょうか。」
隣を歩いていリヴァイ兵士長が、視線を向ける。
「さぁな。だが、碌なもんじゃねぇな。」
そう言って、進路を中庭へ向けた。
近づくにつれて、理由はすぐに分かった。
──犬だ。
中型くらいの犬が一匹、兵士達の間を縫うように走り回っている。
「おい、そっち行くな!」
「待てって!」
楽しそうに尻尾を振って、完全に遊びだと思っているらしい。
……なるほど。
騒がしくなるわけだ。
私が状況を把握した、その瞬間──犬が、不意にこちらを見た。
目が合う。
一拍。
次の瞬間──
「えっ。」
駆けてきた。一直線に、こちらに。
「──ユニ!」
リヴァイ兵士長の声。
腕を伸ばすのが見えたが、間に合わない。
私は反射的に身体を引いて、後ろへ倒れ込んだ。ごろ、と。
地面に転がりながら、肩と背中で衝撃を逃がす。
……大丈夫。
「おい、大丈夫か。」
すぐ上から、低い声。
私は、息を整えて答える。
「はい。受け身を取りましたから。」
事実だった。痛みも、ほとんどない。
「……ならいい。」
短く言ってから、リヴァイ兵士長は視線を犬へ向けた。
「……おい、お前。」
低い声。けれど、怒鳴ってはいない。
遠慮がちに、犬の首輪を掴む。
「離れろ。」
犬は一瞬きょとんとしてから、それでも抵抗せずに動きを止めた。
そのまま少し距離を取らせてから──
「コイツにじゃれるな。分かったら──あっち行け。」
そう言いながら。
……撫でた。頭を。
ごく自然に。力も入れず、ただ、制するみたいに。
犬は満足そうに尻尾を振ってから、兵士達の方へ戻っていった。
私は地面に座ったまま、その光景を見ていた。
(……。)
リヴァイ兵士長が、犬に話しかけてる。
それに、頭を撫でてる。
……いいなぁ。
──ん?
今、私は……何を思った?
いいなぁ、って。犬に?それとも──
自分で自分の思考に、軽く引っかかる。
立ち上がろうとすると、すぐに手が差し出された。
「立てるか。」
「はい。」
その手を取って、立ち上がる。
埃を払っている間も、さっきの感覚が頭から離れない。
(……あれ。)
胸の奥が、少しだけそわついている。
犬が走ってきて、じゃれてきて。
転んで。守られて。撫でられて。
……。
私は、無意識に首を傾げた。
(私って……。)
なんだか──犬みたいじゃない……?
いや、そんなはずは。
でも──近づいて、反応を待って、許されたら嬉しくて。離れられると、少し、しょんとする。
──あれ?それって。
「……どうした。」
不思議そうな声。
顔を上げると、リヴァイ兵士長がこちらを見ていた。
「いえ……。何でもありません。」
咄嗟にそう答える。
けれど胸の奥の違和感は、消えないままだ。
私は歩き出しながら、そっと考える。
……私。もしかして。犬、なのかもしれない。
その結論に至って、なぜか少しだけ──
恥ずかしかった。