第3章
夢小説設定
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切断用の模型が、吊られている。
風に揺れて、項の位置が僅かにずれる。
俺は距離を取った位置で腕を組み、ユニの動きを見ていた。
「……いけ。」
短く合図を出す。
返事はない。その代わり──ガス音。
一瞬の加速。
軌道に乗せた勢いを、無駄なく回転に繋げる。刃が、円を描いた。
次の瞬間──落ちた。
模型の項が、綺麗に、音もなく切断される。
歪みなし。引っかかりもなし。
……上出来だ。
着地。
ユニは少しだけ息を乱しながら、自分の切った模型を見上げていた。
一拍。
それから──
「……っ。」
声にならない声。
次の瞬間、こちらを振り返る。目が、輝いている。
「……切れました。」
確認するような言い方。自慢じゃない。報告でもない。ただ──嬉しさが、隠しきれていない。
口元が、ほんの少し緩んでいる。
……分かりやすい。
俺は歩み寄って、模型を一度だけ確認する。
「切れてるな。」
事実だけを言う。それで十分だ。
「回転の入りも悪くねぇ。刃の角度も、ちゃんと残ってる。」
評価を重ねると、ユニははっとしたように背筋を伸ばした。
「はい。」
それだけ。
でも、さっきより声が軽い。
……こういうところだ。
褒められ慣れてねぇくせに、結果が出ると全部顔に出る。
「調子に乗るなよ。」
牽制のつもりで言う。
だが、「はい」と、即答。
しかも、ちゃんと分かってる顔だ。
……くそ。
俺は、視線を外す。
「次は、風がある想定でやる。同じ切り方が通るとは限らねぇ。」
「はい。」
それでも、ユニの足取りは軽い。
刃を拭きながら、何度も模型の方を振り返っている。
──嬉しいんだろうな。
初めて"自分のやり方"で、確実に届いた。その感触が。
俺は、小さく息を吐いた。
悪くねぇ。
こういう瞬間を、積み重ねていけばいい。
焦らせず。潰さず。置いていかず。
……育ててる、か。
誰が言ったか知らねぇが、的外れでもねぇ。
ユニがもう一度、こちらを見る。
「次も、お願いします。」
当たり前みたいに言う。
俺は、一拍置いてから答えた。
「……あぁ。」
短く。だが、確かに。
次も見る。それだけは、もう決めている。