第3章
夢小説設定
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立体機動訓練場。
朝のうちは涼しかった空気が、いつの間にかじわりと肌にまとわりついている。
立体機動装置を装着しながら、私は少し離れた位置で動きを確認していた。
──あれ。
視線の先。リヴァイ兵士長が立体機動で一気に高度を取り空中で身体を捻る。
ワイヤーの張力。遠心力。その勢いを殺さず──
刃が、円を描くように走った。
一瞬。
「……。」
思わず、息を止める。
速い。無駄がない。それでいて、流れるようだ。
私は無意識に一歩、前へ出ていた。
「……あの。」
声をかけると、リヴァイ兵士長が振り向く。
「何だ。」
「さっきの動き……真似してみたいです。」
一瞬、眉が動く。
「回転しながら切るやつです。勢いを利用すれば……私にも、項が切れるかもしれないと思って。」
正直な考え。
言いながら、少しだけ緊張する。
無茶だと言われるかもしれない。けれど──
「……できるかどうか、じゃねぇな。」
低い声。
私は、頷いた。
「はい。回避の時に使えるかもしれませんし、できて損はないと思います。」
一拍。
リヴァイ兵士長は私を上から下まで見てから、小さく息を吐いた。
「……良いだろう。」
意外にも、即答。
「コツを教えてやる。ただし──」
視線が、鋭くなる。
「無理はするな。回る時は、腰を起点にしろ。肩で振るな。軸がブレる。」
言葉が、次々と落ちてくる。
私は、それを零さないよう必死に頭に入れる。
「ワイヤーの張りを感じろ。怖がって力を抜くな。抜いた瞬間、振り回される。」
実演。
近くで見ると、動きの意味がよく分かる。
「……なるほど。」
思わず、声が漏れた。
「分かったか。」
「はい。」
やってみる。
最初は、思った以上に身体が持っていかれる。遠心力が、想像以上だ。
「……っ。」
着地して、息を整える。
「悪くねぇ。」
短い評価。
もう一度。
今度は、腰を意識して回る。刃が、少しだけ安定した。
「……!」
「今のだ。その感覚を忘れるな。」
繰り返すうちに、額にじわりと汗が滲む。日が、高くなってきた。
自分でも分かる。顔が、熱い。
けれど──もう少し、やりたい。
そう思った、その時。
「……休憩だ。」
リヴァイ兵士長の声。有無を言わせない調子。
「水分をとれ。俺が呼ぶまで、日陰で休んでろ。」
私は少しだけ名残惜しくて「……もう一回──」と言いかけて──
「ダメだ。」
即答。
「今はここまでだ。集中力が落ち始めてる。」
……見抜かれている。
「はい。」
素直に答えて、日陰へ向かう。水筒の水が、やけに美味しい。
呼吸が落ち着いてくると、さっきまでの高揚が少しずつ身体から抜けていく。
視線を上げると──少し離れた場所で、リヴァイ兵士長がこちらを確認していた。
……ちゃんと、見てる。
それだけで、胸の奥が少し軽くなる。
私は日陰で膝を抱えながら、次に呼ばれるのを静かに待った。
夏は、もう近い。
──────────────
訓練場の端。
装備を外し水筒を手にした数人の一般兵士が、日陰で息を整えながら視線を向けていた。
視線の先──立体機動のワイヤーが張り、2つの影が空を切って動く。
「……なぁ。」
ぽつりと、誰かが言った。
「あれ、兵長だよな。」
「そうだけど……隣の兵士、ユニだよな?」
空中で、一瞬並ぶ。
回転。踏み込み。勢いを殺さず、抜ける。
「……教えてる。」
「というか……付きっきり、じゃねぇか?」
別の兵士が、思わず笑い混じりに呟く。
「前からあんなだったか?」
「いや……前はもっと──"見て覚えろ"って感じだったろ。」
そのとき、上から低い声が響いた。
「……違う。」
リヴァイ兵士長。
ユニの動きを見て、即座に指示を飛ばす。
「回転の軸を、半拍遅らせろ。勢いに頼るな。制御しろ。」
「……はい。」
即答。
再挑戦。
ワイヤーが鳴り、ユニの身体が、くるりと回る。
少しぎこちない。だが──
「……今のは、悪くねぇ。」
短い評価。
それだけで、ユニの表情がフッと緩んだ。
「……良かった。」
小さく。だが、確かに聞こえる声。
それを見た兵士達が、顔を見合わせる。
「……笑った。」
「笑ったな。」
「……あんな顔、するんだ。」
誰かが、無意識に息を吐いた。
やがてユニの動きが、少しずつ鈍くなる。
顔に、赤み。汗が、頬を伝う。
それに、リヴァイ兵士長が先に気づいた。
「……休憩だ。」
声が、鋭くなる。
「水分を取れ。俺が呼ぶまで、日陰で休んでろ。」
「はい。」
素直な返事。
ユニは言われた通り地上に降り、木陰へ向かう。
その背中を、リヴァイ兵士長の視線が追う。
完全に、追っている。
「……なぁ。」
1人が、苦笑した。
「兵長、過保護じゃね?」
「言うな。」
「……言うなって。」
誰もからかう気はなかった。
ただ──
「あれさ、」
別の兵士が、ぽつりと。
「ちゃんと、"育ててる"って感じだよな。」
「……あぁ。」
誰も、否定しなかった。
訓練場の空気は、少し暑くなってきている。
けれど──あの2人の間には、妙に落ち着いた温度があった。
それを、見ている側が一番よく分かっていた。