第3章
夢小説設定
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備品の補充。それだけの用件だ。
2人で外に出る理由としては、十分すぎるほど簡単なやつ。
革袋の中身を確認しながら歩く。
街路はまだ冷たい空気が残っていて、冬の名残が足元に張りついている。
……静かだ。
ユニは、俺の半歩後ろ。いつも通りの距離。
それなのに──やけに、視界に入る。
「──!」
前方で、小さな騒ぎ。
視線を向けると、商店の脇。子どもが、仔犬を連れている。
いや、連れているというより──引きずられている。
短い脚で、行きたい方向へ一直線。首輪がぴんと張って、子どもが慌てて止めている。
落ち着きがない。興味の赴くまま。止まる気配は、ゼロ。
「……。」
隣で、足音が止まった。
「……かわいい……。」
小さく、息を漏らす声。
横を見ると、ユニが立ち止まっている。視線は、完全に仔犬に釘付けだ。
無自覚。警戒心ゼロ。ただ、目が少し柔らかくなっている。
……あぁ。
(なんか……既視感があるな。)
「好きなのか、犬。」
声をかけると、ユニははっとしてこちらを見る。
「はい。どちらかといえば、猫の方が好きですけど。」
即答。
それを聞いて、なぜか胸の奥が少し引っかかった。
「……そうか。」
短く返す。
ユニはもう一度、仔犬を見る。
仔犬は今度は別の方向へ行こうとして、また引き止められている。
落ち着きがない。でも、楽しそうだ。
「リヴァイ兵士長は?」
不意に、こちらを見る。
「……犬は、どちらかといえば苦手だ。」
正直に言う。
吠える。距離を詰めてくる。予測不能。
──苦手な要素しかない。
ユニは一瞬きょとんとしてから、小さく笑った。
「そうなんですね。」
否定もしない。押しつけもしない。
ただ、それだけ。
「……。」
仔犬がこちらに気づいたのか、突然こちらへ向かって突進してくる。
首輪が引かれて止まるが、勢いだけは止まらない。
一歩、ユニが前に出る。
無意識だ。守るつもりも、触るつもりもない。
ただ──近くで見たかっただけ。
「……。」
俺は、反射的に腕を伸ばしていた。
ユニの肩を、軽く引く。
「近づきすぎるな。」
「……あ。」
言われて初めて気づいたような顔。
仔犬は、尻尾を振っている。何も考えていない。ただ、楽しいだけだ。
「……すみません。」
「別に、謝る必要はねぇ。」
放した腕。距離は、元に戻る。だが──一瞬、確かに触れた。
温度。細さ。反応の遅さ。
(……そりゃ、似てるわけだ。)
仔犬は興味が尽きたのか、今度は別の方向へ走っていった。それを、子どもが追いかける。
ユニはその背中を見送ってから、小さく息を吐いた。
「……元気ですね。」
「……あぁ。」
元気すぎる。落ち着きがない。目を離すと、どこへ行くか分からない。
それでも──誰かのそばにいる。守られている。
「……行くぞ。」
そう言って、歩き出す。
少し遅れて、足音がついてくる。また、半歩後ろ。
……だが。
さっきよりその距離が、妙に自然に感じられた。
(猫だと思ってたが……最近は、仔犬かもしれねぇな。)
そんな事を考えながら、俺は前を向いたまま歩き続けた。
──気づかれないように。