第3章
夢小説設定
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最近、調査兵団の中で妙な空気が流れている。
誰かが声を張り上げたわけじゃない。
噂話が好きな奴が、面白半分で言い出したわけでもない。
ただ──気づいたら、皆が同じものを見ていた。
朝の食堂。訓練場の端。廊下ですれ違う一瞬。
「……なぁ。」
隣で装備を整えていた同僚が、小声で話しかけてきた。
「最近さ、ユニって……ちょっと、雰囲気変わったと思わないか。」
「は?」
思わず聞き返すと、そいつは言葉を探すように、少し視線を彷徨わせた。
「いや、何ていうか……前から真面目なのは変わらないんだけどさ。」
「……笑うようになった、よな。」
その一言で、俺も思い当たる節が浮かんだ。
確かにユニ・ユニはいつも落ち着いていて、感情を表に出すタイプじゃない。
必要な事はきちんとやる。余計な事は言わない。距離感も、どこか一線を引いている感じだった。
それが──最近は違う。
声をかけられた時、ほんの一瞬、口元が緩む。誰かに礼を言う時、目元が柔らかくなる。
「気のせいじゃないよな。」
「あぁ。」
そう答えながら、俺の視線は無意識にある方向を追っていた。
──リヴァイ兵士長。
あの人類最強で、近寄りがたいほど鋭い空気を纏った男。
その、すぐ隣。
ユニが、ごく自然に立っている。
距離が近い。
近すぎるわけじゃない。触れているわけでもない。
でも──"そこが定位置"みたいな立ち方をしている。
兵長の方も、何も言わない。追い払わない。位置を変えさせもしない。
「……前から、あんなだったか?」
同僚が、ぽつりと呟く。
「いや。」
即答だった。
前は、あくまで「部下と上官」だった。
今は──説明しづらい。
「なぁ……、」
少し声を潜めて、同僚が続ける。
「もしかして、あれ……男女の仲、とかじゃないよな?」
一瞬、周囲の音が遠のいた気がした。
「……さすがに、それは。」
否定しようとして、言葉に詰まる。
決定的なものは、何もない。触れているところを見たわけでもない。私的な会話を聞いたわけでもない。でも──
「……でもさ、」
別の兵士が、いつの間にか会話に混ざっていた。
「ユニが笑ってる時って、だいたい──」
視線が、揃って動く。
そこには、相変わらず無表情のリヴァイ兵士長。
……だが。
ユニの隣に立つ時だけ、その空気がほんの少しだけ違う。
柔らかい、とは言えない。優しい、と言うのも違う。それでも──"拒絶がない"。
それが、何より異質だった。
「……噂になるよな、そりゃ。」
誰かが、そう呟いた。
誰も、否定しなかった。
断定はしない。確証もない。ただ皆が同じものを見て、同じ違和感を抱いている。
──それだけで、噂は十分すぎるほど、芽を出していた。
───────────────
正直に言おう。
気づかない方が、どうかしてる。
朝の食堂。訓練後の廊下。資料室の隅。
どこにでもある光景のはずなのに、最近、やけに空気が柔らかい。
「……あれ?」と、最初に思ったのは、ユニの顔だった。
前から無表情気味ではあったけど、今は違う。
口角が、ほんの少しだけ上がっていることが増えた。笑顔、というほど大きくはない。でも──
あ、これ"安心してる顔"だ、ってやつ。
しかも、その頻度が増えてる。
理由?
分かりやすいほど、近くにいる。
「リヴァイ兵士長、そこ、空いてますよ。」
そんなふうに自然に声をかけて、リヴァイの隣に立つ。その距離が、近い。
以前なら"上官と部下"としてギリギリの線だったのが、今は──線、引き直してない?
周囲も、さすがに気づき始めてる。
「最近さ…… ユニ、よく笑わない?」
ひそひそ声。
「兵長の近くにいる時、特に。」
あー出た出た。噂ってやつ。
でもそれを一番早く察してたのは──私だよ。
だってさ……リヴァイが、変なんだもの。本人は「変じゃねぇ」とか言うだろうけど。
無駄に周囲を牽制する。ユニの体調に異様に詳しい。話しかけられる前に、立ち位置を調整する。
これ全部──"気にしてます"のテンプレ行動だから。
極めつけは、昨日。
「兵長、ユニと最近仲いいですよね?」
──なんて、命知らずな兵士が聞いた時。
「……は?」って返した、その顔。
あれは、"否定"じゃない。
"自覚してない奴が突かれた顔"。
最高。
私は思わず笑いそうになるのを堪えながら、内心で拍手してた。
(あー……これはもう……、)
──手遅れだな。
恋とか、そういう言葉を使う前に、もう生活圏が重なってる。
守る、とか、責任、とか、そういう建前を全部すり抜けて、「当たり前の存在」になりつつある。
で、ユニはというと。
無自覚。本当に、恐ろしいほど無自覚。
「?」って首傾げて、「どうしました?」なんて聞くもんだから、周囲が一斉に沈黙する。
……破壊力。
いや、ほんと。あれは武器だよ。
私は遠くからその様子を眺めて、ひとりごちる。
「ユニって、かわいいよね。」
誰に言うでもなく。
……まぁ。
一番刺さる相手には、とっくに届いてるけどね。
あとは──本人が認めるかどうか。それだけ。
(時間の問題だなぁ……。)
そんなことを考えながら、私は今日もちょっとだけ楽しくなった調査兵団の空気を、面白がって眺めていた。
──さて。
次に爆発するのは、どっちかな?
ユニ?それとも──リヴァイ?
……どっちでも、美味しいな。