第3章
夢小説設定
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とある冬の午後。
本部の廊下は外よりは暖かいはずなのに、どこか底冷えがする。
任務明けで少し気が緩んでいたせいか、声をかけられたのは、不意だった。
「ユニ。」
振り向くと、見覚えのある一般兵士が立っていた。
「この前さ、美味しい紅茶が飲める喫茶店を見つけたんだ。」
──紅茶。
その言葉に、ほんの少しだけ反応してしまう。
「……なんていうお店ですか。どこにあるんですか?」
自然に、そう聞いていた。
地図を描くみたいに場所を説明されるのを、ちゃんと聞く。
「今度、一緒に──」
そこまで言われて、私はにこりともせず、首を振った。
「ありがとうございます。今度、行ってみますね。」
それだけ言って、話を切り上げる。
相手が何か言いかけていたけれど、気づかないふりをして私はその場を離れた。
……悪気はない。ただ、必要ないだけだ。
廊下の先。壁際に寄りかかるように立っていた、
見慣れた姿が目に入る。
「リヴァイ兵士長。」
呼ぶと、ゆっくりとこちらを見る。
「何だ。」
いつも通りの声。
私はさっき聞いた店の名前と場所を、簡単に伝える。
「紅茶が美味しいそうです。ケーキも、種類があるみたいで。」
少し間。
「よろしければ、一緒に行きませんか。」
リヴァイ兵士長は、眉を僅かに動かして言った。
「……俺に言ってるのか。」
「はい。」
即答する。
冬の外出。寒さ。それでも──一緒に歩きたいと思った。
リヴァイ兵士長は一瞬だけ黙ってから、「……好きにしろ」と、短く言った。
否定じゃない。それは、もう分かる。
───────────────
外は、冷たい空気。吐く息が、白い。
自然と、歩幅が揃う。
……近い。
肩が、触れそうで触れない距離。
寒さのせいという言い訳が、ありがたかった。
私は、少しずつ距離を詰める。顔色を、窺いながら。
リヴァイ兵士長は、何も言わない。避けもしない。
……良かった。
胸の奥がフッと緩んで、思わず、小さく笑ってしまう。
喫茶店は、落ち着いた雰囲気だった。席に案内され、メニューを開く。
ケーキ。
ケーキ。
ケーキ。
「……多くないか。」
リヴァイ兵士長の声。
「大丈夫です。」
本当に。
ひとつ。ふたつ。みっつ。
紅茶も、二杯。
甘さが、身体に染みる。
「……よく食うな。」
「好きなので。」
隠す必要はない。
実際食べている時は、頭も身体も、ちゃんと休まる。
リヴァイ兵士長は紅茶を一口飲みながら、黙ってこちらを見ていた。
……少しだけ、引いている気がするけれど。
帰り道。
外は、もう薄暗い。
行きと同じように、自然と並んで歩く。
今度は、
最初から、距離が近い。
寒さを理由に、肩が触れる。
それでも、何も言われない。
「……また、行きましょうね。」
歩きながら、ぽつりと言う。
返事がないかと思っていたら「……あぁ」と、短い声。
それだけで、十分だった。
冬の空気は冷たいけれど、胸の奥は、静かに温かい。
また、来られる。
そう思える場所が、ひとつ増えただけ。
それだけなのに──それが、とても嬉しかった。