第3章
夢小説設定
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冬の空気は、容赦がない。
本部の窓際は特に冷える。石壁が昼の熱を溜め込まないせいで、夜になると骨に響く。
書類を片付け終え、椅子に深く腰を下ろしたところで──
横にいる気配が、少しだけ近づいた。
気づかないふりをしていたが、距離の詰め方が、いつもより慎重だ。
一歩。半歩。
……分かりやすい。
「……眠いのか。」
声を落として言うと、隣で、小さく息を吸う気配がした。
「はい……少し……。」
否定しない。珍しい。
「お前は、いつも眠そうだな。」
からかうほどの余裕はないが、事実でもある。
「そんな事はありません。」
即答。だが、語尾が弱い。
「寝る子は育つんじゃねぇのか?」
自分で言って、内心で舌打ちする。
何を言ってる。
それでも、返ってきたのは、少し間の抜けた声だった。
「……それは、子供の話です。」
そう言いながらユニは──ほんの、僅かに。本当に、僅かに。
こちらへ体重を預けてきた。
肩に、重さ。
最初は、触れただけだ。布越しに、温度が伝わる程度。
……寒いからだ。
そういう理由が、はっきり見える。
だから、避けなかった。避ける理由が、ない。
数秒。いや、もっと短かったかもしれない。
次の瞬間にはそのまま、こくりと頭が落ちた。
──来た。
肩に、柔らかい感触。呼吸が、揃う。
……おい。
動けねぇ。
声をかければ起きる。肩をずらせば離れる。
それだけのことだ。それだけ、なのに。
肩に乗った重みが、思った以上に──安心しきっている。
力が入っていない。警戒も、遠慮もない。完全に「ここにいていい」と思っている重さだ。
……厄介だ。
俺は片手を膝に置いたまま、もう一方の腕を動かさないようにする。
寒さで寄ってきた。眠気で落ちただけ。それ以上でも、それ以下でもない。……はずだ。
だが──肩に伝わる体温が、じわじわと広がっていく。
暖かい。
筋肉のせいじゃねぇ。これは──人の熱だ。
ユニの呼吸は、もう完全に寝ている。
規則的で、浅くて、無防備。
「……まったく。」
小さく、呟く。誰に向けた言葉でもない。
俺は背もたれに体を預けたまま、天井を見た。
動かない。決めない。耐える。
──そう決めたのは、俺自身だ。
だから今は──この重さがなくなるまで、ただ、ここにいる。
……動けない兵士長なんて、笑えねぇな。
それでも、肩に乗った温もりを、振り払う気はなかった。
……冬は、嫌いじゃない。
少なくとも、今夜に限っては。