第3章
夢小説設定
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冬の朝は、本部の廊下まで冷えている。
吐く息が、白い。
外套の中で肩をすくめながら歩いていると、少し先に見慣れた背中があった。
──リヴァイ兵士長。
歩幅を合わせるように近づいて、ふと気づく。
近い。
距離が近いわけじゃない。温度だ。
隣に立っただけで、空気が違う。
……体温、高そう。
理由はすぐ浮かぶ。
筋肉量。代謝。理屈は分かっている。分かっている、はずなのに。
寒さで指先が冷えて、思わず手を擦る。
ちら、と横を見る。
リヴァイ兵士長は、いつも通りの無表情で前を見ている。
……避けて、ない。
一歩だけ。ほんの少しだけ。
外套の端が、触れるか触れないかの距離。
止まられない。
もう一歩。
肩が、触れた。
瞬間、反射的に息を止める。
……何も言われない。
避けられない。咎められない。
心臓が、どく、と鳴る。
いいのかな。嫌じゃ、ないのかな。
顔色を窺うように、そっと見上げる。
ちょうど、視線が合った。一瞬。それだけ。
「……寒いのか。」
低い声。責める響きはない。
「……はい。」
正直に答える。
それだけで、距離を詰めた理由を説明した事になる気がした。
リヴァイ兵士長は、何も言わずに歩き続ける。
……避けない。
その事実が、胸の奥をじんわり温める。
私は小さく息を吐いて──ほんの少し、口元を緩めた。
「……良かった。」
独り言みたいな声。
多分、意味は伝わっていない。
でも──そのまま隣で歩ける事が、今は、それだけで十分だった。
冬の廊下を、2人分の足音が、並んで進んでいく。
───────────────
窓際。
書類を片付ける手を止めて、ふと外に目をやる。
冬の空気は澄んでいて、新しい本部の中庭がよく見える。
向こうの建物の窓。並んで座る、2つの影。
ひとつは、背筋の通った黒。もうひとつは、それより少し小さくて、近い。
距離は近いが、触れてはいない。
だが──寄っている。
ほんの少しずつ、確かめるように。
避けない方と、逃げない方。
その均衡が妙に静かで、穏やかだった。
……あぁ。
俺は、思わず小さく息を吐く。
「……微笑ましいな。」
誰に聞かせるでもない独り言。
戦場では見せない顔。命令書には書けない時間。
だが、確かに必要なものだ。人が、人でいるために。
窓から視線を外し、俺はまた机に向かう。
──今は、そっとしておくとしよう。
あれは、介入する類のものじゃない。
見守るものだ。
そういう瞬間が、あってもいい。