第3章
夢小説設定
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朝。
執務室の扉が、控えめに叩かれた。
時間は早い。訓練前だ。
「入れ。」
扉が開いて、ユニが顔を出す。
……一目で分かる。
目の下。瞬きの遅さ。呼吸の浅さ。
「どうした。」
そう言う前に、答えが出ている。
「ハンジさんが……少し、執拗で。」
少し、だと。
手には、書類。ちゃんと仕事を持ってきているあたりが、余計に質が悪い。
「リヴァイ兵士長のところなら、安全かと思って。」
……なるほど。
「何があった。」
椅子に腰掛けさせながら、聞く。
「昨日、聞いてほしい話があると仰っていて……それで、つい……。」
視線が泳ぐ。
「それはもしや……巨人の生態について、か。」
一拍。
「……はい。気づいたら、深夜でした。」
そこで、理解が確定した。
俺は、立ち上がる。
「ここで待ってろ。」
「え、あの──」
言葉を遮る。
「動くな。」
短く、それだけ告げて、部屋を出た。
◇
ハンジの部屋。
扉を開ける前から、気配がうるさい。
「ハンジ。」
名を呼んだだけで、向こうは察したらしい。
「え、リヴァイ? どうしたの、こんな朝──」
「てめぇ、何時まで引き止めた。」
声は低い。抑えている。
「えー? だってさぁ、面白くて──」
「仕事のある兵士を、私情で潰すな。」
笑いが消える。
「……あ。」
ようやく、理解した顔。
「ユニは、俺の管理下だ。お前の研究欲を満たす道具じゃねぇ。」
一歩、近づく。
「次、同じことをしたら──俺がお前の"話し相手"になる。」
沈黙。
「……ごめん。」
小さな声。
それで十分だ。
俺は、踵を返した。
執務室に戻ると、ソファの端に、ユニが座ったまま眠っていた。
背中を丸め、膝の上に書類を抱えたまま。
……無茶をする。
膝の上にに置かれた仕事の束に目をやる。
急ぎじゃねぇ。今日じゃなくていい。
それを確認してから、俺は足音を殺して近づいた。
そのとき──
微かな音に反応したのか、ユニがもぞりと身じろぎをする。
閉じたままの瞼。意識は浅い。
ソファに座ったままじゃ、そのうち首をやる。
「……。」
声はかけない。
俺が立てる物音で、ユニはゆっくり横になった。
最初は、ただ体を倒しただけ。
だが──
しばらくして、無意識に膝を引き寄せる。
小さく。さらに小さく。
……そうやって寝るのか。
戦場でも、執務室でも、あいつはいつも背筋を伸ばしてる。
だが、眠るときだけは違う。
守るみたいに、自分を抱えている。
俺はソファの脇に立ったまま、少しだけ迷ってから──
そっと、手を伸ばした。
触れたのは、頭。
乱れているわけでもない髪を、撫でるほどじゃない。
ただ、そこに置いただけだ。
するとユニの肩が、ほんの僅かに緩む。
眉間の皺が消えて、呼吸が深くなる。
……分かりやすい。
俺は、そのまま手を離す。それ以上はしねぇ。
ブランケットを取り、音を立てないようにかける。
包む、というより──境界を作るみたいに。
「全く……。」
小さく吐き捨てる。
守るだけなら、簡単だ。距離を取るのも、得意だ。
だが、こうして、そばで眠られると──判断が鈍る。
俺は視線を逸らし、椅子に戻った。
椅子に腰を下ろし、背もたれにもたれない。
いつもの姿勢。
ただ視界の端に、丸くなったユニがいる。
それだけで、今夜はこれ以上、考えなくて済みそうだった。