第3章
夢小説設定
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数日後。
新しい本部の廊下を歩いていると、前方から──
ドン! ガシャッ!
かなり大きな物音がした。
思わず、肩が跳ねる。
……今の、何?
音のした方向を見るとそこは──ハンジ分隊長の部屋だった。
扉は、ほんの少しだけ開いている。
嫌な予感がして、そっと覗いた。
──ぎょっとする。
引っ越したばかりのはずなのに、部屋の中はすでに惨状だった。
床一面に広がる資料。机の上は、どれが実験記録でどれがゴミなのか判別不能。壁際には、よく分からない器具が山積み。
……嵐が通った後、みたい。
その瞬間──
「……あ。」
視線が合った。
ハンジ分隊長が紙束を抱えたまま、にっと笑う。
「ユニ!いま、暇かなぁ?」
──来た。
全身が、反射的に強張る。
この流れは知っている。絶対に知っている。
手伝いを頼まれる。断れない。結果、数時間拘束される。
脳内で、そこまで一気に再生された。
そのとき──ふと、昔の記憶がよぎる。
まだ、調査兵団に馴染めていなかった頃。
あの時もハンジさんに片付けを頼まれて、途方に暮れていた時──リヴァイ兵士長が、低い声で言った。
「自分でやれと、断っていい。」
あのときは、意味が分からなかった。でも、今なら分かる。
これは、私の仕事じゃない。
私は、一歩後ろに下がった。
「……すみません。」
声が少しだけ震えたけれど、はっきりと言う。
「今日は、別の作業がありますので。」
ハンジ分隊長が、きょとんと瞬きをする。
「え?ちょっとだけでも──」
「モブリットさんに、頼んでください。」
きっぱり。
言ってから、自分でも少し驚いた。
断れた。
ちゃんと、断れた。
ハンジ分隊長は一瞬ぽかんとして──
それから、破顔した。
「ははっ!そっかぁ、成長したねぇ!」
その笑顔を背に、私はぺこりと一礼して、逃げるように廊下を進んだ。
……心臓、まだ速い。
でも胸の奥が、少しだけ軽い。
◇
リヴァイ兵士長の執務室へ向かう。
ノックをして中に入ると、机に向かっていた背中が、こちらを向いた。
「どうした。」
簡潔な問い。
私は、さっきの出来事を簡単に説明する。
「……ハンジさんに、片付けを頼まれそうになって……でも、断れました。」
一瞬の間。
リヴァイ兵士長はこちらを見て──
「……正解だ。」
短く、言った。
それだけ。
でも、それだけで十分だった。
「無駄に背負うな。必要な事と、そうじゃねぇ事は分けろ。」
私は、小さく頷く。
「……はい。」
リヴァイ兵士長はもう一度だけこちらを見てから、机に視線を戻した。
「報告、ご苦労。」
それだけ言われて、部屋を出る。
廊下に戻った瞬間、思わず、息を吐いた。
──ちゃんと、選べた。
誰かを助けたい気持ちも。自分の限界も。
それを分けて考えられるようになった。
それはきっと、調査兵団に来てここで過ごした時間の、積み重ねだ。
私は少しだけ背筋を伸ばして、次の目的地へ歩き出した。