1000打企画
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『今度メシでも行かねぇか?』
甥が幼稚園に通う事に慣れてきた頃、姉は無事に退院を果たした。またいつ入院になるかは分からないが、とりあえず私の幼稚園送迎の頻度はめっきり減り、必然的にリヴァイ先生と顔を合わせる事も減った。それを残念だなと思っている時に来たメッセージに、私は心臓を高鳴らせた。
「えっ、リヴァイさんと、食事…!?」
どこに、何を、誰と…!?
今日の分の仕事を片付け終えてソファでだらけていた頭も体も覚醒し、ソファの上で正座をし目の前のスマートフォンを眺める。何度見てもそこにはリヴァイさんからの食事のお誘いが記されており、そして突然、パッと消えた。
「えっ…!?」
『食事、行きたいです!』
まさか気が変わって撤回されてしまったのだろうかと焦り、慌てて送ったのがこれ。誤字がないのは良かったが、あまりにストレートに返答してしまいそれはそれで恥ずかしい。既に既読の二文字はついているし、消すにしたってもう遅い。それに消してしまったら、なかった事になってしまうかもしれない。
『そうか』
『悪い。迷惑かと思って消しちまった』
「そっ……!!」
そんな事、あるわけない。
もうこうなったからには認めるが、数週間もの間甥を通じて彼と関わってきて、また個人的なやり取りを通じて、自然と彼の人となりが分かってきた。彼は知れば知るほど魅力的な人で、まぁなんというか、気づけばあっという間に恋に落ちていた。彼はただ生まれ持って目付きが悪くて、少し口が悪いだけの、いい人だったからだ。なんなら、その辺の人間よりはよっぽど人が出来ている。
そんな魅力的な人からのお誘いを、みすみす逃すわけにはいかないだろう。
『全然迷惑なんかじゃないです!』
『むしろ嬉しいです』
30を目前に控えて恋愛経験ほぼ0の私にはこの答えが合っているのかは分からないが、言わずに後悔するよりは言って後悔する方がずっといい。
「ユニ。」
「あ、リヴァイさん。こ、こんばんは。」
「あぁ、待たせたか?」
「いえ、全然。」
本当は15分前に到着するつもりだったのに、出がけに色々あってリヴァイさんの到着の2分前、本当についさっきの到着になってしまった。だから全然待ってないし、そもそも今は集合時間の5分前なのだから、リヴァイさんが気にする事ではない。
「リヴァイさん、お仕事帰りですか?」
「まぁな。…店を予約してるんだ。ここから近いから、歩きながら話すぞ。」
「あ、はい。」
駅前での待ち合わせという事もあり、仕事終わりでこれから駅に向かう人、逆にこれから駅から家に向かう人が行き交っており、下手するとリヴァイさんと逸れてしまうかもしれない。万が一にもリヴァイさんを見失わぬよう小柄な背中に着いていくが、案の定無理やり私達の間を通り抜けようとする人がいて、危うく逸れかけた。
が、「あっ」と思った時にはリヴァイさんに手首を掴まれていて「会って早々逸れるんじゃねぇ」と、そのまま腕を引かれて人混みの中を突き進んだ。
リヴァイさんは小柄だが、意外と力が強いらしい。
「悪い。歩くのが速かったか?」
「いえ、助かりました。ありがとうございます。」
「そうか…なら、良かった。」
少し進んで人混みが解消された頃にその力強い手が離れていき、少しだけ寂しく思った。彼女でもないのに寂しく思うなんて、私はいつの間にそこまでリヴァイさんに好意を抱いていたんだろう。
「ここだ」と言うリヴァイさんの声に顔を上げると、意外にも大衆的な居酒屋。張り切ってオシャレしてきていたら浮いてしまっていただろう。無難な服を選んできて良かったと、内心ホッと胸を撫で下ろした。
「こういうところには、よく来るんですか?」
「あぁ、たまにな。」
「なんだか意外です。リヴァイさんはオシャレなバーにいそうなので。」
「なんだそりゃあ。俺は別に、美味い飯が食えりゃ場所と酒はなんだって良い。」
「へぇ…じゃあ、ここのご飯も期待していいんですね?」
「あぁ。特に魚料理が美味い。」
「わぁ…!私、海老が大好物なんです!」
「フッ…、…知ってる。」
案内された席に着くなり頬杖をつき笑顔を見せるリヴァイさんの、なんと綺麗な事か。ついつい見とれそうになりながら、私はリヴァイさんに海老が好きだなんて話しただろうかと考えた。が、思い返してみてもそんな話をした記憶はなかった。
「クシュッ…!」
「ッ…!!」
「…悪い。この席は冷房が直に当たるな。そっちは大丈夫か?」
リヴァイさんが、くしゃみをした。人間誰しも、くしゃみはする。しかしリヴァイさんのそれはたいへんかわいらしく、同時に脳内に、記憶にない映像がフラッシュバックした。
『リヴァイ兵長…人類最強なのに、くしゃみはとてもかわいらしいんですね。』
『あ?くしゃみにかわいいも何もねぇだろうが。』
『いや、今のはかわいかったですよ。』
「…ユニ?」
「リヴァイ…、兵長…。…兵長…?」
「…!!」
なぜだか分からないが、頬を温かい涙が伝う。そしてリヴァイさんの驚いたように開かれた目を見て、泣きそうな顔を見て、確信した。
私とリヴァイさんは、昔会った事があった。遠い、遠い昔に。
「っ、う……、…リヴァイ兵長…。リヴァイ兵長、ごめんなさいっ…!」
出会った時のリヴァイさんの言っていた意味が、今なら分かる。どういうわけかリヴァイさんはリヴァイ兵長だった時の記憶があって、私にはなかった。だから彼は悲しい顔をして、それでも私に関わってくれた。私の記憶がなくとも、関わろうとしてくれた。それが私は、何よりも嬉しい。
「泣くな、ユニ。俺は思い出してくれて、嬉しいぞ。」
「で、でも…、…リヴァイ兵長〜〜ッ…!」
「だから…泣くなと言ってるだろうが。全く、手のかかる奴だな。」
ポロポロ溢れる涙を、リヴァイさんは自身の服の袖で優しく拭った。彼の服から香る清潔な香りもリヴァイ兵長を思い起こさせて、余計に涙は溢れるばかり。
「どうして、教えてくださらなかったんですか…!」
「……あんな記憶は、忘れてるなら思い出さない方がいいだろうが。お前が幸せに生きてるなら、俺を思い出さなくても良かったんだ。だが……思い出してもらえると、嬉しいもんだな…。」
リヴァイ兵長の、いや、リヴァイさんのグレーの瞳から、涙が一粒、ポロ、と溢れた。私も胸が苦しいが、リヴァイさんはずっと前から、苦しかったに違いない。
「リヴァイ兵長…、…ちがう、リヴァイさん…好き。大好き…。大好きです…!」
「はは…、恥ずかしい奴だな…。だが…、あぁ、俺もだ。」
個室だと言うのに大きな声を出して、また個室なのをいい事に抱き合って泣いた。また会えた喜びを分かち合うように、ぴったりとくっついて。二度と離れない事を願って。
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