1000打企画
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▽保育士リヴァイ
───────────────
「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
現在入院中の姉に代わり、姉の子供──甥の幼稚園を見つけるため見学へとやってきた。普通母親自ら見学して見極めるものなんじゃないか?とは思ったが、今回の入院は長引きそうだし父親もいないし、姉も「あんたが決めたとこなら大丈夫でしょ」とかなりの信頼を置いてくれているのでこうしてここまでやってきたが……私自身、母親になった事もないので何を見れば良いのか全然分からない。が、これからの事を考えると幼稚園には入れてあげたいというのも本音だ。
しかし勇気を出して甥を伴いここまでやってきたというのに、出てきた園長先生は無愛想で目つきも悪く、眉間に皺まで刻まれている。その表情に一体どういう感情が含まれているのかは知らないが、怖すぎる。
「…お前…、クラインと聞いてまさかとは思ったが……どういう事だ。」
お前…?もしかして知り合い?と思ったが、こんな目付きが悪くて口も悪い知り合いなんていた事はない。全くの初対面だ。初めて会う人にお前呼ばわりされる筋合いはない。
イラついて反射的に笑顔を浮かべると園長先生は目を見開いて「お前…まさか記憶が…」とまたしてもわけのわからない事を口にした。
記憶?私は未だかつて記憶喪失になった事なんてない。物心ついてからの記憶はちゃんとある。その上でこの人の事など知らないと、そう結論づいている。
だからこの人が悲しそうな表情を浮かべたのを見て胸が痛んだ理由は、私にも分からない。
「すまない、おかしな事を言った。…一応、見学はしていってくれ。」
「…はい。お願いします。」
せっかくここまで来たのだから、見学くらいはしてもいいだろう。幼稚園の見学はここが初めてなので、ここを基準に他のところを見て決めればいい。態度が悪かろうがなんだろうが、甥が気に入って甥のためになるのであればここにしてもいいだろうし、ピンと来なければ違うところにすればいい。
「まず…見学の記録を取らなきゃならねぇから、これの記入を頼む。書いてる間は職員が一緒に遊んでいるから、座って書いてくれ。」
渡されたバインダーとボールペンを受け取り、甥を見る。少し緊張した様子だったが、子供達が楽しそうに遊んでいる輪が気になるようでジッとそちらを見つめていた。
「今はみんなお絵描きをしたり粘土遊びをしたりしているの。一緒に見に行こうか?」
「……うん。」
「行っておいで。ここにいるからね。」
「うん!」
パタパタと駆けていく甥の背中を見送り、用意された椅子に腰かけ書類に視線を移す。児童名、保護者名、住所など、ここは姉の名前を記入するべきだろうか?など、普通は気にしなくていい事が気になり、園長先生に尋ねた。
「あの、私はあの子の叔母なんですが、ここには母親の名前を記入すれば良いでしょうか?」
「!…あ、あぁ。そういう事なら、ここには実母の名前を書いて、枠外にお前の名前も記入してくれ。…そうか、そういう事か…。」
「…そういう事…?」
「いや、こっちの話だ。…差し支えなければ、親の代わりにお前が幼稚園を探しているワケを聞いてもいいか?事情によっては特別な支援を受けられるかもしれねぇし、ウチも何か力になれるかもしれん。」
「…そうなんですか?」
幼稚園の先生はみんな、見学に来た親子に対してこんなに親身になってくれるのだろうか。もしかしたら、この人が特別なだけかもしれない。まぁ、契約をしなければ今後関わる事はない人なのだし、話してみてもいいか…と、私がいま置かれている状況を話すため、口を開いた。
「実は、甥が産まれてしばらく経ってから姉に病気が見つかって…たびたび、入院しているんです。あの子が産まれる時に離婚していますし、母ももう若くないですし…今は私が姉の代わりに世話をしています。幸い私の仕事は自宅でできるので不自由はしていないですが、あの子が小学校に上がる前に色々とできるようになれば…と姉は考えているので、入院中の姉に代わって幼稚園を探そうと。」
「なるほどな…。…ちょっと待ってろ。」
「?はい。」
待ってろと言い残し一度姿を消した園長先生は、私が書類に記入をし終わる頃に戻ってきて何枚か書類を手渡してきた。記入済の用紙と交換した書類の束の入ったファイルを見ると幼稚園のパンフレットの他に公的機関の案内や受けられる助成制度についてなど、多種多様な資料が揃っていた。
「これ…。」
「仕事をしながらだと、こういうのを探すのも一苦労だろ。特に必要そうな箇所にはマーカーを引いたから、そこを重点的に見てみるといい。」
「あ…、ありがとうございます…。」
この人…実はいい人?
書類の1番上に挟まった名刺を見て、そういえば名前を聞いていなかったと思い出した。
「リヴァイ…、アッカーマン先生…。」
「!…あぁ、よろしく頼む。」
リヴァイ先生の笑顔を見て、不意にドキリと心臓が音を立てた。
一見無愛想に見えるのに、なんて優しく笑うのだろうと思ったからだ。まさか一目惚れだとかそういうのではない。断じてない。
「…こんにちは。先日はありがとうございました。」
「あぁ、よく来たな。…こっちだ。」
1週間も経たぬうちに、私は再びリヴァイ幼稚園へと足を運んでいた。あの翌日、翌々日もいくつかの幼稚園の見学に行ったが、教育方針が姉にハマったのはもちろんの事、やはり園長先生の印象がとても良かったため私もここをお勧めした。最初はどうなる事かと思われたが、話してみたら親身になってくれるし、なにより子供達に慕われているのが良かった。
「これが、契約書だ。2部あるから、保護者に記入してもらってまた後日持ってきてくれ。」
「はい、分かりました。」
応接室には、紅茶の香りが充満していた。こういう時に出てくる飲み物といえば緑茶だと思うのだが、どうやら園長先生の好みらしい。私も緑茶やコーヒーよりは紅茶の方を好むので、有難く戴いた。
「…その、なんだ…。…この前は変な事を口走っちまって、悪かった。」
「変な事…?…あぁ…、いえ、お気になさらないでください。」
「………。」
「…あの、何か…?」
契約書類も受け取り、もう用事は済んだはずだが、リヴァイ先生は何か言いたげにたっぷりと間を作った。この前の様子も変だったし、一体どうしたのだろうか。
「いや……、……、…個人的な質問をしてもいいか?」
「…はぁ…。」
「…お前は今…、…交際している奴はいるのか?」
「え…?…いませんけど…。」
「クソ…、結局、おかしな事を言っているな…。…悪い、忘れてくれ…。」
「……あの、私が覚えていないだけで、前にどこかでお会いした事がありますか…?」
「いや…、……ねぇよ。」
本当、だろうか…?私としては会った事がなくて間違いないのだが、でもこの人の反応はどう見たって元々私の事を知っていて、私の反応を窺っているようにしか見えない。それに……ふとした瞬間に彼を見ると寂しいような切ないような、優しさを孕んだ視線を向けられていて、戸惑う。その瞳を見ると私の中にもそのような感情が湧き上がるから、私が忘れてしまっているのではないかと思ってしまうのだ。
「あの…、連絡先を交換する、とかは……ご迷惑でしょうか?」
「は……?」
「あぁ、いえ、ごめんなさい。個人的に繋がるのは、良くないですよね…。」
「いや、待て。……別にお前は、利用者の保護者じゃない。だから、問題はない…はずだ。…いや、問題ない。断言する。」
「……では、良いですか…?」
別にやましい事は何もない。ただ、このリヴァイ・アッカーマンという人の事が…気になっただけだ。
お互いスマートフォンを出して連絡先を交換して彼を見ると、画面を見て僅かに口角を上げていたが、こちらに視線を向けた時にはもう、すました顔に戻っていた。まるで、今のは見間違いかと疑うほどに。
「じゃあ…今日はありがとうございました。来月から、よろしくお願いします。」
「…あぁ。こちらこそ、よろしく頼む。」
この初めて感じている感覚は、なんというのだろう。彼と同じ空間にいると妙に安心感を感じたり、切なさを覚えたり。まるで前から知っているようだが、彼自身がそれを否定する。
おかしな感覚を覚えるから、気になっているだけ。別に、恋とかじゃそういうんじゃない。
だから連絡先を交換したのだって、彼と関わっていけばこの感情がなんなのか、いずれ分かるかもしれないからだ。
「…リヴァイ・アッカーマン、さん…。」
スマートフォンに表示された名前を口にすると、やっぱり妙にしっくりきた。
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「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」
現在入院中の姉に代わり、姉の子供──甥の幼稚園を見つけるため見学へとやってきた。普通母親自ら見学して見極めるものなんじゃないか?とは思ったが、今回の入院は長引きそうだし父親もいないし、姉も「あんたが決めたとこなら大丈夫でしょ」とかなりの信頼を置いてくれているのでこうしてここまでやってきたが……私自身、母親になった事もないので何を見れば良いのか全然分からない。が、これからの事を考えると幼稚園には入れてあげたいというのも本音だ。
しかし勇気を出して甥を伴いここまでやってきたというのに、出てきた園長先生は無愛想で目つきも悪く、眉間に皺まで刻まれている。その表情に一体どういう感情が含まれているのかは知らないが、怖すぎる。
「…お前…、クラインと聞いてまさかとは思ったが……どういう事だ。」
お前…?もしかして知り合い?と思ったが、こんな目付きが悪くて口も悪い知り合いなんていた事はない。全くの初対面だ。初めて会う人にお前呼ばわりされる筋合いはない。
イラついて反射的に笑顔を浮かべると園長先生は目を見開いて「お前…まさか記憶が…」とまたしてもわけのわからない事を口にした。
記憶?私は未だかつて記憶喪失になった事なんてない。物心ついてからの記憶はちゃんとある。その上でこの人の事など知らないと、そう結論づいている。
だからこの人が悲しそうな表情を浮かべたのを見て胸が痛んだ理由は、私にも分からない。
「すまない、おかしな事を言った。…一応、見学はしていってくれ。」
「…はい。お願いします。」
せっかくここまで来たのだから、見学くらいはしてもいいだろう。幼稚園の見学はここが初めてなので、ここを基準に他のところを見て決めればいい。態度が悪かろうがなんだろうが、甥が気に入って甥のためになるのであればここにしてもいいだろうし、ピンと来なければ違うところにすればいい。
「まず…見学の記録を取らなきゃならねぇから、これの記入を頼む。書いてる間は職員が一緒に遊んでいるから、座って書いてくれ。」
渡されたバインダーとボールペンを受け取り、甥を見る。少し緊張した様子だったが、子供達が楽しそうに遊んでいる輪が気になるようでジッとそちらを見つめていた。
「今はみんなお絵描きをしたり粘土遊びをしたりしているの。一緒に見に行こうか?」
「……うん。」
「行っておいで。ここにいるからね。」
「うん!」
パタパタと駆けていく甥の背中を見送り、用意された椅子に腰かけ書類に視線を移す。児童名、保護者名、住所など、ここは姉の名前を記入するべきだろうか?など、普通は気にしなくていい事が気になり、園長先生に尋ねた。
「あの、私はあの子の叔母なんですが、ここには母親の名前を記入すれば良いでしょうか?」
「!…あ、あぁ。そういう事なら、ここには実母の名前を書いて、枠外にお前の名前も記入してくれ。…そうか、そういう事か…。」
「…そういう事…?」
「いや、こっちの話だ。…差し支えなければ、親の代わりにお前が幼稚園を探しているワケを聞いてもいいか?事情によっては特別な支援を受けられるかもしれねぇし、ウチも何か力になれるかもしれん。」
「…そうなんですか?」
幼稚園の先生はみんな、見学に来た親子に対してこんなに親身になってくれるのだろうか。もしかしたら、この人が特別なだけかもしれない。まぁ、契約をしなければ今後関わる事はない人なのだし、話してみてもいいか…と、私がいま置かれている状況を話すため、口を開いた。
「実は、甥が産まれてしばらく経ってから姉に病気が見つかって…たびたび、入院しているんです。あの子が産まれる時に離婚していますし、母ももう若くないですし…今は私が姉の代わりに世話をしています。幸い私の仕事は自宅でできるので不自由はしていないですが、あの子が小学校に上がる前に色々とできるようになれば…と姉は考えているので、入院中の姉に代わって幼稚園を探そうと。」
「なるほどな…。…ちょっと待ってろ。」
「?はい。」
待ってろと言い残し一度姿を消した園長先生は、私が書類に記入をし終わる頃に戻ってきて何枚か書類を手渡してきた。記入済の用紙と交換した書類の束の入ったファイルを見ると幼稚園のパンフレットの他に公的機関の案内や受けられる助成制度についてなど、多種多様な資料が揃っていた。
「これ…。」
「仕事をしながらだと、こういうのを探すのも一苦労だろ。特に必要そうな箇所にはマーカーを引いたから、そこを重点的に見てみるといい。」
「あ…、ありがとうございます…。」
この人…実はいい人?
書類の1番上に挟まった名刺を見て、そういえば名前を聞いていなかったと思い出した。
「リヴァイ…、アッカーマン先生…。」
「!…あぁ、よろしく頼む。」
リヴァイ先生の笑顔を見て、不意にドキリと心臓が音を立てた。
一見無愛想に見えるのに、なんて優しく笑うのだろうと思ったからだ。まさか一目惚れだとかそういうのではない。断じてない。
「…こんにちは。先日はありがとうございました。」
「あぁ、よく来たな。…こっちだ。」
1週間も経たぬうちに、私は再びリヴァイ幼稚園へと足を運んでいた。あの翌日、翌々日もいくつかの幼稚園の見学に行ったが、教育方針が姉にハマったのはもちろんの事、やはり園長先生の印象がとても良かったため私もここをお勧めした。最初はどうなる事かと思われたが、話してみたら親身になってくれるし、なにより子供達に慕われているのが良かった。
「これが、契約書だ。2部あるから、保護者に記入してもらってまた後日持ってきてくれ。」
「はい、分かりました。」
応接室には、紅茶の香りが充満していた。こういう時に出てくる飲み物といえば緑茶だと思うのだが、どうやら園長先生の好みらしい。私も緑茶やコーヒーよりは紅茶の方を好むので、有難く戴いた。
「…その、なんだ…。…この前は変な事を口走っちまって、悪かった。」
「変な事…?…あぁ…、いえ、お気になさらないでください。」
「………。」
「…あの、何か…?」
契約書類も受け取り、もう用事は済んだはずだが、リヴァイ先生は何か言いたげにたっぷりと間を作った。この前の様子も変だったし、一体どうしたのだろうか。
「いや……、……、…個人的な質問をしてもいいか?」
「…はぁ…。」
「…お前は今…、…交際している奴はいるのか?」
「え…?…いませんけど…。」
「クソ…、結局、おかしな事を言っているな…。…悪い、忘れてくれ…。」
「……あの、私が覚えていないだけで、前にどこかでお会いした事がありますか…?」
「いや…、……ねぇよ。」
本当、だろうか…?私としては会った事がなくて間違いないのだが、でもこの人の反応はどう見たって元々私の事を知っていて、私の反応を窺っているようにしか見えない。それに……ふとした瞬間に彼を見ると寂しいような切ないような、優しさを孕んだ視線を向けられていて、戸惑う。その瞳を見ると私の中にもそのような感情が湧き上がるから、私が忘れてしまっているのではないかと思ってしまうのだ。
「あの…、連絡先を交換する、とかは……ご迷惑でしょうか?」
「は……?」
「あぁ、いえ、ごめんなさい。個人的に繋がるのは、良くないですよね…。」
「いや、待て。……別にお前は、利用者の保護者じゃない。だから、問題はない…はずだ。…いや、問題ない。断言する。」
「……では、良いですか…?」
別にやましい事は何もない。ただ、このリヴァイ・アッカーマンという人の事が…気になっただけだ。
お互いスマートフォンを出して連絡先を交換して彼を見ると、画面を見て僅かに口角を上げていたが、こちらに視線を向けた時にはもう、すました顔に戻っていた。まるで、今のは見間違いかと疑うほどに。
「じゃあ…今日はありがとうございました。来月から、よろしくお願いします。」
「…あぁ。こちらこそ、よろしく頼む。」
この初めて感じている感覚は、なんというのだろう。彼と同じ空間にいると妙に安心感を感じたり、切なさを覚えたり。まるで前から知っているようだが、彼自身がそれを否定する。
おかしな感覚を覚えるから、気になっているだけ。別に、恋とかじゃそういうんじゃない。
だから連絡先を交換したのだって、彼と関わっていけばこの感情がなんなのか、いずれ分かるかもしれないからだ。
「…リヴァイ・アッカーマン、さん…。」
スマートフォンに表示された名前を口にすると、やっぱり妙にしっくりきた。