短編
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来ない。
それだけのこと。それだけのはずだった。
野営の夜は静かで、いつもなら、もう一つの気配が加わる頃だ。
……遅い。
警戒のために視線を巡らせる。
いない。
仕方なく立ち上がった時点で、自分が何をしているのかは考えない。
天幕の影、焚き火の名残。低い声が聞こえた。
「……だから、自分のベッドで寝てくれ。」
エルヴィンの声だ。
なんだ、まだ起きていたのか。それだけ思って、引き返そうとする。
……待て。
なんで俺が、探しに来てる。
踵を返しかけた瞬間、少し間延びした声が返った。
「え〜……エルヴィンの上、寝心地よかったのに……。」
空気が一段、重くなる。
「間違えたのは許そう。しかし、それとこれとは──」
その先は、聞く必要がなかった。
胸の奥に、説明のつかない不快が残る。
理由を探すのは後だ。
女の首根っこを掴む。
「エルヴィンを困らせるんじゃねぇ。寝ろ。」
「わっ……!」
抵抗はない。そのまま引き剥がす。
「助かるよ、リヴァイ。」
「……お前が寝不足にでもなったら、明日の調査に支障が出るだろうが。」
それだけ言って、背を向ける。
女はその辺に放って、自分のスペースに戻る。
いつもの場所。いつもの夜だ。
……何も、変わらない。
そういうことにして、横になった。女を放ったまま。
しばらくして、布の擦れる音が戻ってきた。
足音は忍ばせているつもりだろうが、俺には分かる。
近い。
何も言わない。言う必要もない。
ためらいが一拍。
それから、いつもの重さ。
胸元に、頭。呼吸が触れる。
……来たか。
起こせば起きる。どかせば離れる。
だが、しない。
今夜も、選ぶ理由がない。
「……。」
女は何も言わない。言い訳も、冗談もない。ただ、静かに落ち着いていく。
規則正しい呼吸。体温。
さっきまでの不快は、理由のないまま、薄れていった。
エルヴィンの天幕は遠い。
ここは、いつもの場所だ。
俺は視線を天幕の外へ戻す。
警戒は解かない。だが、動かない。
今夜も、枕にされたまま。