851年~
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「落ち着いたか?」
「うん…。…ありがとう、リヴァイ…。」
散々泣いたあと、私はリヴァイのテントへと招かれた。たくさん泣いたあとではハンジさんのいるテントへは戻りづらくて、またリヴァイに甘えさせてもらった。しかし本部から予備の寝袋を持ってきてもらって申し訳ないが…このままこのテントで眠るのは如何なものだろうかと、リヴァイの淹れた紅茶を飲みながら頭を悩ませた。
「?…どうした、寝ねぇのか?」
「…いや…、あっちのテントに戻った方がいいのかも…と思って…。」
「ハンジの事なら、問題ない。お前が神妙な顔でテントを出て行ったからそばにいてやってくれと言ったのは、他でもないハンジだ。」
「…そうなの?」
「状況によってはこっちで休ませると伝えてある。他の兵士達に対しては上手く対処すると言っていたし、お前は何も心配しなくていい。」
リヴァイも、ハンジさんも、揃いも揃って過保護すぎる。自分では何も決められない自分が嫌だ。エルヴィンもリヴァイもハンジさんも、よくこんな私を好きでい続けられるものだ。
「…ねぇ、リヴァイ。リヴァイに聞きたかったけど、どう聞いていいか分からなくて聞けなかった事があるの。でもそのままにするのも嫌だから、聞いてもいいかな?」
「あぁ…、何だ?」
散々泣いて情けないところも見られたわけだし、もうこの際に聞いてしまえ!と、深呼吸を数回。そして、リヴァイにまっすぐ向き合った。
「リヴァイは…今も私の事が好きなの?…その、恋愛対象として。」
言った。言ってしまった。なんて質問なんだとは思うが、他に言い方が分からなかった。ドッドッドッ、と心臓が大きく脈打つが、リヴァイはなんて事ない顔をして「そうだが」と一言。あまりにサラッとしすぎていて、思わず「そうなんだ」とこちらも軽く返してしまいそうになる。
「…そう、なんだ…。それって、私からの見返りを求めてたりは…。」
「あ?当たり前だろうが。俺は別に、無欲ってわけじゃねぇ。」
「…そうだよね…。」
「……おい、待て。見返りを求めてるってのには同意するが、何も"くれ"って言いてぇわけじゃねぇぞ。」
「…?」
「お前はエルヴィンに対して、見返りをくれと…そう思っていたのか?」
「!…ない…。一度も…。」
リヴァイの言葉は、とてもわかり易かった。
私は彼に対して、見返りを求めた事はなかった。自分が彼のためにやった事で感謝されたり、褒められたりするだけで幸せで、満足だった。
「それに見返りってのは、何も直接的なモンだけじゃねぇだろ。感謝の言葉だったり、信頼だったりな…。それで言えば俺はお前に、十分見返りを貰っている。それ以上をくれるってんなら、俺もお前のように、ありがたく受け取るが。」
「…それは…今は、分からない。…ごめん…。」
「謝る事じゃねぇよ。気になってたってのは、それだけか?終わったならそろそろ──」
「まっ、待って。もうひとつだけ、聞いてもいい?」
「…あぁ、何だ。」
「…その…、リヴァイから見たルーカスって、どんな存在なのかな、って…。」
「……それは、…そうだな…。いざ聞かれると……。」
リヴァイはまた即答しようとして、しかし続く言葉が分からず、視線を下げて考え込む。どんな存在かなんて別にわざわざ言葉にしなくとも良い言葉だが、私はどうしてもそれを知っておきたかった。だから長い沈黙も、ただ静かに待った。
「…守るべき存在…というのは当たり前だが、お前が聞きたいのはそういう答えじゃねぇんだろうな。」
「…うん。難しい事聞いてごめんね。」
「いや…。…ルーカスは、お前とエルヴィンの片割れだと思っている。大切な奴らの、一番大切なものだと。だが…俺は…、…ルーカスの父親の、代わりをやろうとしているのかもしれねぇ。」
「……。」
「俺は正直、父親なんてものはよく分からねぇが…エルヴィンの代わりに……、…いや…、よくよく考えれば、エルヴィンを死なせた俺に、務まるわけがねぇな…。」
彼の率直な想いを聞けて、またその内容が私にとってとても嬉しいもので胸がいっぱいになるかというところだったのに、突然の急展開で一気に話が変わってくる。リヴァイがエルヴィンを死なせただなんて事、私はこれっぽっちも思っていない。しかしリヴァイは、今までそう思っていたのだ。ずっと。
「!…そんな事、ないよ。あれは、リヴァイのせいじゃない。殺したのは、リヴァイじゃなく、獣の巨人なんだから。」
「いや…最後に、チャンスがあったんだ。確実にあいつを救える、チャンスが。それを棒に振ったのは、確かに俺だ。」
リヴァイがその事を、気にしていないわけがなかった。しかし何となく、それとこれとは別だと思っていた。恐らくそれはリヴァイ自身もそう思っていたはずで、その証拠にリヴァイは今、ショックを受けたように口元に手を当て、俯いている。
「それを言うなら、私だって同じだよ。そもそも私は、戦場に向かうエルヴィンを止める事もしなかった。エルヴィンの夢の事を思ったら、私に止める権利なんてないと、思ったから…。でも、絶対に死なせたくないのなら、止めるべきだった。他でもない、私が…!」
私を置いていかないでくれと、死ぬ事だけは許さないと、言えばよかった。私が泣いて縋りつけば、多少はエルヴィンだって考え直してくれたかもしれない。それを私は、彼の夢がもうすぐ叶うから、それさえ叶えられれば彼は幸せなのだと勝手に決めつけ、結果何も言えなかった。そもそも彼を戦場へと送り出した私だって、エルヴィンの死を止められなかった要因のひとつなのだ。
「だから…、だから…!っ、そんな事、言わないでよ…!!リヴァイだけが、責任を感じる事ない…っ!」
「!…ユニ…、悪かった、ユニ…。」
なんて情けない顔をしているのだろう。私も、リヴァイも。いい大人が情けなく涙を流して、慰め合うように抱き合った。
「リヴァイ…、私の、勝手なお願い…なんだけど…聞いてくれる…?」
「あぁ…なんだ…?」
「…私もね、普通のお母さんがどんななのか、分からないの…。だから…、リヴァイも一緒に、ルーカスを育てるのを手伝って欲しい…。」
「……良いのか?」
「…良いも何も…ひとりじゃ不安なの。他でもないリヴァイがいてくれたら…私も、すごく心強い。」
「俺じゃ…エルヴィンの代わりにはなれねぇぞ。」
「っそんなの、当たり前じゃない。エルヴィンの代わりになりえる人なんて、もうこの先現れないよ…。だから…リヴァイはリヴァイのままでいて。…私はそのままのリヴァイが、一番好きだよ。」
「っ…、…ユニ…、キスしてもいいか?」
「…っ、…ふふ…、頬に少しなら、いいよ。」
言ってしまってから、しまった、と思った。好きなんて言うつもりはなかったし、もちろんそういう意味で言ったわけではなかったなかったのだが、リヴァイもそれは分かっているだろう。分かっているから、「頬になら」と聞いても表情を変える事なく、素直に頬にキスを落とした。涙で濡れているそこに数度口付けて離れたリヴァイの顔は少し憑き物が落ちたような顔をしていて、なんだか愛おしくなってこちらからも一度、口付けた。もちろん、頬に。
「…クソ…お前には、情けないところばかり晒しちまう…。」
「私だって、そうだよ…。泣く時はいつも、リヴァイの前でだけだし…。」
「…そうか。…ならいい…。」
リヴァイの涙は、いつも綺麗だ。それがリヴァイの心の綺麗さを表しているようで、眩しい。