851年~
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「…こうもあからさまに敵意を向けられると、さすがに少し悲しいね。」
「あぁ、お前はそうだろうな。」
「あ、そうだ。みなさん紅茶はお好きですか?私もリヴァイも紅茶が好きで、いつも茶葉は多めに仕入れているんです。人数分のカップはさすがにないですけど、良ければ一緒に如何ですか?」
「…飲むわけないだろうが…!」
捕虜達と1日のうち数時間を共に過ごすようになってから、早数日。未だ誰一人として心を開く様子は、全く見られない。だがそれは想定済みなので、別にこちらとしても痛くも痒くもない。むしろリヴァイと椅子に座ってゆっくり過ごせて、私からしたらいい休憩時間だ。しかしそれは向こうも同じなはずだ。他の兵士達ではまたすぐに言い争いに発展して、気が休まる時がないだろうから。
「そうですか…残念。リヴァイは?そろそろ紅茶飲まない?」
「お前の淹れる紅茶なら、いつでも大歓迎だ。」
「ミカサもどう?この前買ってきたお茶菓子がまだ少し残ってるんだけど。」
「…はい、頂きます。」
「うん。あ、サシャには内緒ね。」
この時間のもう一人の見張りは、ミカサ。彼女とリヴァイならば私が少し席を外したところで何ら問題はないだろうと立ち上がり背を向けると、瞬間数名分の物音のあとに「おいおい…勝手な事をされちゃ困る」とリヴァイの冷静な声が続いた。見ると私の背後を襲おうと数名が立ち上がったが、リヴァイに返り討ちに遭い地面に押さえつけられたようだった。
「ほどほどにね。怪我をさせるのは本意じゃないから。」
「あぁ、承知した。」
よく見たらミカサも1名取り押さえていて、女性二人と小柄な男一人なので、おそらく一斉に襲いかかればいけると思われたのだろう。しかし私はまだしもリヴァイとミカサがいるのだから、そんなのは夢のまた夢…なんなら一番落とせないメンバーなのではないだろうか。
「さ、紅茶淹れたよ〜。」
テントに戻って、テーブルにトレーを置く。マーレの兵達はもう、完全に戦意喪失していた。こちらは争う気はないが、ここでリヴァイとミカサの強さを見せつけられたのは、大きい。
「ユニ!船が…!」
もう少しで交代の時間という頃、ハンジさんが興奮した様子で捕虜達のいるテントへと駆け込んできた。その手にはしっかり3人分の立体機動装置のケースが握られており、全員その場でそれを装備した。
「船は何隻ですか?」
「1隻だ。今回も前回同様、エレンにやってもらうよ。」
「なら、この人達も数名、連れていきましょう。交渉に使えるかもしれません。もちろん怪我はさせないように、パフォーマンスとして。」
「オーケー。じゃあ君と君、ついてきてもらうよ。見張りも交代だ。」
「はい。…ユニさん、気をつけてくださいね。」
「うん。…ふふ、立体機動装置を着けた私に、気をつけて、ね。」
「あっ、いや…。すみません!」
「全く…じゃれてないで、早く行くよ。」
若い子達は私を本当に偉い人のように扱うから、ついいつもからかってしまう。それにいつだってかわいい反応をくれるから。
灯りをつけずに海辺の方へと歩を進めると逆に海の上には灯りが点っており、ゆっくりとこちらへと進行しているようだった。こちらへ向かった船が帰ってこなくて、様子を見に送られてきたのだろう。タイミングは、エレンに合わせるしかない。岩場に身を隠して、ひっそりと息を殺した。
ドォォオン──
巨人化の轟音と共に、明かりの点った船がゆっくりと上昇していく。エレンが、船を持ち上げたのだ。そしてズシン、ズシン、と丁寧に陸地へと運ばれ、今度は壊れぬようそっと地面へと置かれた。
「マーレの皆さんこんにちは!パラディ島へようこそ!私はハンジ!遥々海を渡っていらしたお客様をお迎えする者です!」
「…何その設定…。リヴァイ、私はどうすればいいの?何か聞いてる?」
「いや、知らん。適当に合わせとけ。」
「ちなみにお一足お先にお越しのお連れのお客様とは、既に仲良しでーす!だよね〜ニコロくん。」
グ、と腕を拘束されたニコロの背に、リヴァイのブレードが押し付けられる。傷を付けるつもりはない。パフォーマンスとして、だ。
「隊長!私に構わず、この悪魔どもを撃ってください!」
「んなっ!何を言い出すんだニコロくん…!?」
「お前の三文芝居に付き合う気はねぇってよ。」
「良かった…。私も話を振られたらどうしようかと思ってた。」
「よく聞け悪魔ども!!マーレは穢れた血に貸す耳など持ち合わせていない!穢れた連中と豚の小便を啜るような真似はしない!!」
「あーあー!いいのかな〜!?そんな悪口言って!後ろの巨人が見えないのかな〜!?」
穏便な話し合いなどをできるとは思ってなかったが、まさかこんなに目も当てられない言い合いになるだなんて、思ってもみなかった。エルヴィンがいれば、多少はまともな話し合いができたのだろうか。
「おい、現実逃避してる場合か。」
「あぁ…ごめんごめん。」
「悪魔の力などに屈するものか!これがマーレの挨拶だ!」
「!危ないっ…!」
ドンッ!──
銃声が一発、辺りに響き渡る。私が押したのは、ニコロの背中。前に立つハンジさんが誰よりも先に岩場に向かって動き出したのを見て、それなら次に守るべきは彼だと、力いっぱい突き飛ばした。しかし私も私でものすごい力で背中を地面へと押し付けられ、ニコロの背中に覆い被さるように倒れ込んでいた。私の背を押したのは、言わずもがなリヴァイ。通りで、頭が揺れるような衝撃だったわけだ。
しかし…そんな事はどうでもいい。さっき確かに銃声がしたはずなのに、弾はこちらには撃ち込まれてなどいない。「え…?」というハンジさんの声に顔を上げるとその視線は船の方へと伸びており、その中では予想もしていなかった光景が繰り広げられていた。
「…え…?仲間割れ…?あ…ごめんね、ニコロ。怪我はない?」
「お前も、怪我はねぇか?…ニコロがクッションになったおかげで、無事だな。悪かったな。礼を言う。」
下敷きになっていたニコロも、この光景を見て驚愕の表情を浮かべていた。こちらの声掛けすらも耳に届いていないようで、ただ呆然と、この光景を眺めていた。
「…捕虜の人達には一度、テントに戻ってもらおう。あの人達は…私達と何か、話したい事があるみたいね…。ハンジさん。本部のテントに案内しても?」
「あ…、あぁ、頼むよ。」
こちらとしても、話ができる人がいるのなら話をしたい。戦わずに済むのなら、絶対にその方がいいのだ。リヴァイに捕虜を任せ、敵意がないのを証明しようと立体機動装置を外してその場に置き、両手を上げて船へと近づく。そうして、慎重に呼びかけた。
「初めまして。ユニ・クラインと申します。あなた達は私達と、会話をしてくれますか?」
「ユニさん…。もちろんです。本当に、お茶を出して頂けるんですか?」
「はい。私の淹れた、紅茶でよければ。」
なんだか得体の知れない雰囲気を発しているが、それでも話ができるならと、私も向こうに合わせた。
反乱を起こした首謀者と思われる人物は、とても背の高い女性であった。船の中の何も知らない乗組員達を引き連れてようやく下へと降りてきた時、その女性の背の高さに驚いた。だってどう見ても女性でスラッとした出で立ちなのに、エルヴィンよりもいくらか視線が高かったから。
「とても…背が高いのですね。…えぇと…。」
「名乗るのが遅れてすみません。イェレナ、と申します。あなたは小さくて、かわいらしいですね。」
「おっと、お触りは厳禁で頼むよ。この子は私達調査兵団の、大事な宝物なんでね。」
「ちょっとハンジさん、くっつきすぎです。それに、早くお客様をご案内してください。」
得体の知れない人を前に私を守ろうとしてくれているのだろうが、私の体ではハンジさんを支えられない。ぎゅっと後ろから抱きしめられて頬が触れるくらい顔が近くて、久しぶりにちょっと鬱陶しく思った。