余談
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「ユニ。少し相談したい事が…、…ユニ?」
季節は巡り巡って、私は19歳からまもなく20歳になろうかという、人生の節目に差し掛かっていた。丁寧に伸ばしてきた髪の毛は艶を保ったまま背中の真ん中ほどまで伸び、訓練や壁外調査の際はお団子ヘアで出陣するのが定番となってきた頃。先の壁外調査で、私の最後の同期が、とうとう巨人に食われた。別に特別仲が良かったというわけではない。ただ5年間の厳しい訓練を同じ建物の中で受け、寝食を共にした。たったそれだけだが、他の団員に比べると少しばかり特別な人ではあった…と思う。だって何となく、心の隅で寂しさを感じているのだから。
「…!はい。どうかされましたか?」
「いや…。どうかしたのは君だろう。…すまない。配慮が足りなかったな。」
「…いえ、大丈夫ですよ。少し、なんというか…寂しいような、そんな気がしますが…。」
「…私の用事は、あとで…いや、明日でいい。とにかく、君の部屋へ行こう。」
優しく掴まれた手を引かれても、いつもみたいにドキドキしたり、ふわふわ浮かれたりはしなかった。ただ何となく心の隙間に温かいものが注がれたみたいで、優しく涙腺を刺激した。
「悲しいだとか、そこまでの想いは正直、ないんです。ただ何となく、寂しいような気がして…。」
あまり心配をかけぬようそう口にしたのだが、逆にエルヴィン分隊長は気の毒そうに眉を下げて、ヨシヨシと私の頭を撫でた。それもいつもは嬉しくて仕方がないはずなのにどうしても素直に喜べなくて、苦しい。
しかし私は悲しみに暮れているだとか喪失感を感じているだとかそういうのではなく、ただ、元気がないのだ。
「…エルヴィン分隊長…。」
「…あぁ、どうした?」
「この寂しさを…埋めては頂けないでしょうか…?」
「!」
「…今なら、分かる気がするんです。…分かりそうな気が…。私もまもなく20になりますし……ダメ、でしょうか…?」
いつか見た、壁外調査後の男女の交わり。あれはもしかしたら、心の穴を埋めようとしてしているのではないかと考えた。そしてそれは、ただ抱き合うよりもずっとずっとその人を近くに感じられ、寂しさを忘れさせてくれるのではないか、とも。
もしこれで断られたなら、もうこんな話をするのは金輪際やめようと、きゅ、と分隊長のジャケットの裾を握ると、反対側の手で優しく包まれた。そしてその手は彼の頬まで引っ張られて、必然的に私の視線はそれを追いかけ、彼の綺麗な瞳と視線がかち合った。
「ユニ…。君の言っている行為は、本来は心を通わせた男女がするもので、寂しさを埋めるためだけにするような行為ではない。」
「はい…。」
「それに、君はまだそういう経験がないんだろう?当たり前だが、初めては一度きりだ。君はまだ若いのだから、後悔のないよう、相手は慎重に選ぶべきだ。」
「私は…、初めてのお相手がエルヴィン分隊長なら、後悔はしません。絶対に。だって、私が初めてついて行きたいと思ったお方ですよ?あなたの言う事やする事、そのすべてを信じているんです。だから…今さら私に確認なんて、必要ありません。エルヴィン分隊長が嫌でなければ、お願いいたします。もしもエルヴィン分隊長がどうしても嫌で、できないと言うのなら…もう、今後このような事は口にはしません。」
「……。」
とうとう、エルヴィン分隊長は閉口する。怒っているのでも悲しんでいるのでもなく、ただ私には読めない表情で、じっと私を見下ろした。数秒そうして見つめ合ってから、彼はようやく、諦めたように口を開いた。
「君は年々美人になって…未だ魅力は衰えない。いわば、いつも今が一番綺麗な時期だ。そんな時に私とそんな事をして、いいのか?」
「…はい、もちろんです。」
「そうか…。本当に君は好奇心旺盛で、見かけによらず、頑固で強情だな。」
ス、と分隊長の顔が近づいてきて、反射的に目を瞑るとすぐに、唇が塞がれた。それは前にした時よりも隙間を埋めるようにぴったりとくっついて、あっという間に息が苦しくなってしまって。だけどエルヴィン分隊長は鼻で息をしていたから、私もそれに倣った。
「…ん…、エルヴィン、分隊長…。」
大人みたいなキスは初めてで、はじめは何とかついて行こうと思っていたのにどんどんと頭は蕩けて、よく分からぬうちに手足が痺れて分隊長の体にしがみついた。こんなのは、未だかつて経験した事なんかない。もしも経験した事がある何かで例えるとするなら…高熱に浮かされて、頭がふわふわしている時…といえばいいだろうか?
「…寝室に行こう、ユニ。」