845年~851年
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「ユニさん…!」
「あぁ、アルミン。それにミカサにエレンも。久しぶりだね。ただいま。」
久しぶりの調査兵団本部を散歩中、まっさきに私を見つけ声を掛けてきたのはアルミンで、いつものようにミカサとエレンも一緒に伴っていた。久方ぶりの再会で挨拶もそこそこに、彼らの視線は私から我が子ルーカスへと向けられた。
「ご出産おめでとうございます。一時は危険な状態だったと聞きました。ご無事で何よりです。…小さくてかわいい赤ちゃんですね。」
「…なぜ、兵長が?」
ミカサの疑問はご尤もで、我が子を抱いているのは私ではなく、リヴァイだった。ここに来る前は抱っこするのを怖がっていたというのに、自分が触れても問題ないと分かると途端に抱っこしたがった。リヴァイもルーカスがかわいいと感じている…と思ってもいいのだろうか?
「あらゆる危険から守るには、俺が適任だろうが。おいお前ら。コイツに触る前に確認だが、手はしっかり洗ったんだろうな?」
「は、はい!もちろんです!」
なるほど。物理的な危険から守るというのはもちろん、あらゆる菌からも守るというのならリヴァイが適任というのは確かだ。言葉通りこの世界で誰よりも、あらゆる危険から守ってくれるだろう。
「わ…!ふにゃふにゃだ…!」
「かわいい…。この金髪は、エルヴィン団長にそっくり。」
「あはは。みんなに言われる。実は瞳の色も同じなの。そのうち見られると思うよ。エレン、良かったら抱っこする?」
「いや…。俺は、良いです。」
フイ、と視線を逸らすエレン。エレンはあの日、女王陛下から勲章を貰った時から、様子がおかしくなった。それまでの犬みたいなやんちゃな笑顔は見なくなったし、その代わりにいつも、どこか遠くを見ているような目をするようになった。今だって、まともに目も合わせようとはしなかった。私が気づくのだから、ミカサやアルミンも気づいている事だろう。
…だから、エレンの事は幼馴染二人に任せよう。
「そう?じゃあ、ミカサは?」
「わ、私は…うっかり、潰してしまいそうなので…。」
「リヴァイと同じ事言ってる…。…アルミンは、抱っこしてくれるよね?こんなにかわいいんだもの。」
「えっ、あ…、…がんばります。」
「よし、いいか?首に注意しろ。想像の何倍も柔らけぇからな…。」
「う…、わ…!」
「…なんか、アルミンの弟みたい…。」
よくよく考えてみれば、アルミンは髪の色も瞳の色もエルヴィンとほぼ同じ。その顔は、似ても似つかないが。しかし今のルーカスは、そういう意味ではアルミンに似ていた。
「私に似れば、アルミンにも似てきそうね…。」
「あぁ、アルミンはかわいい面をしてるからな。」
「そ、それは…あまり、嬉しくないですね…。」
「あぁ…。」
そういえばアルミンは、かわいらしい顔をしているせいで嫌な思いをした事があるのだと思い出した。作戦成功のためと我慢をしたらしいが、もうアルミンには、そんな思いはしてほしくない。
「アルミンは、私が守るよ。」
「えっ?」
「わぁ!ユニさんじゃないですか!それに赤ちゃんも!」
「待て、サシャ。お前らも、まずは手を洗ってこい。いや、そもそもお前らは訓練終わりだろうが。俺達は講堂にいるから、着替えてから来い。」
「はっ、はい!すぐに!」
さすがはルーカス専属警備兵。サシャの伸ばした腕を難なく受け流し、その手が触れる事はなかった。今まで常々彼の事を過保護だと思ってはいたが、まさか今までを上回るなんて誰が予想できただろうか。
しかし、この変わりようをそのまま受け入れて良いものかどうか、私は決めかねている。だってリヴァイは─今はどうかは分からないが、少なくとも以前は、私の事を好きだと言っていた。これが私への恋慕の情からくるものなのだとしたら、簡単に受け入れてはいけないような気がする。だがリヴァイは私だけではなくエルヴィンの事も信頼していたのだし、その二人の子供だから大事にしたいという思いからきているのかもしれないと思うと…必要ないと突き放すのは気が引ける。つまりはリヴァイ次第なのだが…そんな事、本人に直接聞く勇気は……まぁ、ないわけで。だからさっきの抱擁で様子を見ようと思っていたのだが、それよりもリヴァイの無神経さの方に意識が向いてしまって、なにも得るものはなかった、というわけだ。
「ルーカスが無事に産まれて、リヴァイはエルヴィンの事を、心から祝福しているでしょうか?どう思います?ハンジさん。」
「さぁ…知らないよ、そんな事。それよりルーカスは?」
「リヴァイが、お風呂に入れてくれるって。」
「本当に?まるでベビーシッターみたいじゃないか。」
「リヴァイに殺されますよ。というか、"そんな事"って何ですか?ハンジさんにとっては"そんな事"かもしれませんが、私にとっては大事な事なんです!」
「あぁごめんよユニ。訂正する。知らないよ。」
「変わらないじゃないですか!」
本題の、この先どうしたいかの話はあまりにあっさりと受け入れられ、ついでとばかりに聞いたリヴァイの話は、今度はあっさりと跳ね除けられた。ハンジさんに聞いたのが間違いだった。まぁハンジさんは人間には然程興味がないと分かっていたので彼女に聞いたのがそもそもの間違いだったのだが、それにしたって答えが適当すぎる!
「そんなに怒らないでくれよ。でもさぁ、それって結局、実際のところはリヴァイにしか分からないだろ?それに私よりも君の方がリヴァイの事をよく知っているじゃないか。君が分からないなら、私にも分からないよ。だから知らない。」
「…そんな…、…正論を突き付けないでくださいよ…。」
ハンジさんの言う事は、正論そのものだった。いつもここぞという時は頭の良さそうな事を口にするのを忘れていたわけではないが…、もう少し寄り添ってくれるかと思っていた。私とハンジさんの付き合いはそこそこ長いとはいえ、今みたいに二人で話すようになったのは最近の事なので私の彼女への理解が足りなかったという事だ。今となっては私の一番の理解者はリヴァイ、という事になるが……対するリヴァイの理解者は、私かハンジさんか、果たしてどちらだろうか。
「…でも、エルヴィンなら…分かったんだろうなぁ…。」
「あぁ…そうかもね。でも残念ながら、頼れるエルヴィンはいないんだ。君が自分で決めるしかないよ。…なにも今すぐ結論を出さなきゃいけないわけじゃない。焦らなくても大丈夫だよ。」
「ん…、そうですね…。」
調査兵団でこれからもやっていくと決めたのだから、リヴァイと話す機会は、これからいくらでもある。