845年~851年
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団長であるエルヴィンを始め、団長補佐の私、次期団長候補のハンジさん、兵士長であるリヴァイが、正装であるコートに身を包み団長室へと集まった。先日はエルヴィンの正装姿を見られなくて残念だったが、今日はきちんとコートを身につけており、私の口角が自然に上を向く。これから、王都である。
「よくお似合いです、エルヴィン。」
「はは…今日も、コレを頼むよ。」
そう言って手渡されるのは、いつものループタイ。右腕を失ってからというもの、エルヴィンは一人でループタイを着けるのも困難になってしまった。普段はシャツを着てもわざわざループタイを着ける事は無いが、外へ行く時は別。そういう時は私が着けてあげるのが通例となっていて、例に漏れず今日も当たり前のように私にそれを手渡し、その大きな体を屈めた。
「君ら、隠さないと隠さないですっごいな。見ているこっちが恥ずかしいよ。」
「じゃあ見なければいいじゃないですか。」
「君らがところ構わずイチャつくから、嫌でも目に入るんだよ!それにしてもユニ。いつから団長呼びをやめたんだ?それに呼び方を変えたのに敬語のままって、どういう事?」
「はい、綺麗に着けられました。…どういう事って、別にいいじゃないですか。」
「分かってないな、ハンジ。ユニはこうだからかわいいんじゃないか。」
「ふ…、ふふ。そういうつもりは毛頭なかったんですが、エルヴィンがそう言ってくれるなら、変えないでおきます。さ、行きましょう。」
迎えの馬車は、もう到着しているはずだ。あまり待たせるのも申し訳ないと歩き出したのだがハンジさんの口が閉ざされる事はなく、「でもさぁ、好きな子とは対等に話をしたいじゃないか」と続けられた。そもそも、私は自分とエルヴィンが対等な立場だと思ってはいない。名前で呼ぶ事にはしたし、私から見た彼は所謂恋人というものではあるがやはりどうしても、神だとか教祖だとか、そういうものに近しいものに見えてしまう。これはもう変えられないものだし、私もそれで満足している。何も言わないという事は、彼だってそれで構わないと思っているという事だ。
私達がそれで構わないのだから、是非ともそれを尊重し、放っておいてほしいものだ。
「それで…瓶の中身は解明できそうなのか?」
調査兵団本部を出てここへ来るまで、いつものように和気あいあいとお喋りをしていたのだがダリス・ザックレー総統が入ってくるなり、全員気持ちをそういうモードへと切り替えた。今日はケニー・アッカーマンから託された、例の巨人になれるという注射器の行方についての集まりだ。
「それがどうも、我々の技術では、これ以上探る事ができないようです。エレンとヒストリアから聞いたように、人間の骨髄液由来の成分ではあるようなのですが。この液体は、空気に触れるとたちまち気化してしまい、分析は困難です。やはり我々の技術とは比較にならないほど、高度な代物です。レイス家が作ったのだとしたら、一体どうやって…。」
「ならば、下手に扱うよりも、当初の目的に使用する他なかろう。」
例の注射器の中身の解析は、何度か試みてみたものの不可能だったようだ。もしかするとレイス家が作ったというよりは…壁の外から来たのではないだろうかと頭を過ぎったが、それを口にするのはやめておいた。その考えに先に行き着いているであろうエルヴィンが、何も言わなかったからだ。
「すると誰に委ねる。エルヴィン、君か?」
ザックレー総統の言葉に、みなの視線はエルヴィンへと集まる。もちろん、私も。全員の視線を受けたエルヴィンは一度私を見下ろしてから、前へと視線を戻した。
「いえ…私は兵士としては手負いの身です。この箱は、最も生存確率の高い、優れた兵士に委ねるべきかと。リヴァイ、引き受けてくれるか?」
「…ユニじゃなく、俺にか?それに、任務なら命令すればいい。なぜそんな事を聞く。」
「これを使用する際は、どんな状況下か分からない。つまり現場の判断含めて、君に託す事になりそうだ。状況によっては誰に使用するべきか、君が決める事になる。…任せてもいいか。」
「……お前の夢ってのが叶ったら、その後はどうする。」
「それは…分からない。叶えてみない事にはな。」
リヴァイの質問は、いつだったか私も聞かれた事があった。その質問に対するエルヴィンの答えは私と同じようなもので、リヴァイの視線は私の方へと向けられた。
「そうか、分かった。了解だ。」
私から視線を逸らさずにそう言いきったリヴァイは丁寧に中央に置かれたケースの蓋を閉じ、ポケットの中へとしまい込んだ。彼らとの話し合いは、これで終わりだ。そろそろ解散しようという空気の中、ピクシス司令は思い出したかのように口を開いた。
「エルヴィン、ユニ。結婚式はいつじゃ?」
「結婚式?なんだお前ら、結婚するのか?」
「…ピクシス司令。ザックレー総統の前で揶揄うのはおやめください。結婚はしないと、何度も申し上げているじゃないですか。」
「我々が調査兵団でなければ、私もとうの昔に結婚の申し込みをしていたのですが。」
「えっ?え、エルヴィン団長…?」
「はは…。ほら、君はヒストリアと会う約束をしているんだろう?早く行きなさい。」
サラッと爆弾発言をしていないだろうか?絶対に私が去った後、ピクシス司令からもザックレー総統からも揶揄われるはずだが、それになんと返すのか、気になって仕方がない。が、私はこれからヒストリアに会って、良いお医者さんを紹介してもらわなくてはならない。女王であるヒストリアを待たせるわけにはいかないと、渋々部屋を出て、待ち合わせ場所へと向かった。それにしたって、結婚なんて…!調査兵団でなければそういう未来もあったのかと思うと、嬉しくもあり、少し切なくなった。
「えっ…!?ユニさんが、妊娠…、ですか…!?お、お相手は…!?」
「その可能性があるって話。お相手は…、えぇと…、…エルヴィン団長、だよ。…内緒にしててね。」
ヒストリアに会ってまず話したのは、妊娠しているかもしれないから信頼できるお医者さんを紹介して欲しいという事。それに対してはとても驚いていたが嬉しいという気持ちが声色や表情から読み取れて、私も思わず笑顔が零れた。そして続いた相手は誰なのかという問いには、ヒストリアならば良いかと正直にエルヴィンの名を出した。それすらも喜んでくれて、なんだか今までの悩んでいた気持ちも吹き飛んだ。まだ、決まった訳ではないのに。
「それなら、ここにはお医者様が常駐してますから、すぐに診てもらいましょう。」
そう言うヒストリアの提案に乗るとあれよあれよという間に一際清潔感のある部屋へと通され、白衣を着た人数名に取り囲まれて色々な検査を受け、あっさりと「妊娠している可能性が高いですね」との診断を受けた。あれ?気持ちの準備とか、そういうのを考える暇もなかった…。その診断を受けてボーッとしているとヒストリアが両手を握って「おめでとうございます…!」と涙を流して喜んでくれて、私も遅れて感情が涙とともに流れた。ただヒストリアに吊られただけなのか分からないが、私はこの時確かに、嬉しさを感じていた。ここから戻ったら、エルヴィンに伝えよう。私達の子供が、お腹にいるのだと。