~844年
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「そうか…ついに決断したか。今日はエルヴィンに、美味いモンでも食わせてもらえ。栄養をつけんと、治るもんも治らんしな。」
どうやら私は、キース団長の事を誤解していたらしい。
怖い見た目とは裏腹に、意外と気さくな方だった。エルヴィン分隊長の補佐の仕事もすんなりとOKを貰えて、その上エルヴィン分隊長と食事ができるなんて…今日は案外、いい日なのかもしれない。…エルヴィン分隊長の部屋に行くまでは、あんなにどんよりとした気分だったというのに。
エルヴィン分隊長のヤキモチ発言は……一旦聞かなかった事にした。今の関係が壊れてしまうのが怖くて、嫌だったから。エルヴィン分隊長もそれを察してか、あれ以降その話題に触れる事はなく数日が過ぎた。その間にエルヴィン分隊長の手のひらの傷は、塞がりつつあった。
「少し、訓練の見学に行ってきます。」
「あぁ。くれぐれも、気をつけるように。」
私の肩の傷は、まだ少し痛む。ちょっとした動作で無意識に動いてしまう肩の傷は塞がりにくいという事だ。だから壁外調査から帰ってきてから、私は一度も立体機動装置を身につけていない。こんなに長い事立体機動装置を着けていないのは、訓練兵だった頃を含めても初めての事だった。
「!リヴァイ、お疲れ様。」
「ユニか…。どうだ、隊員集めは順調か?」
「う…、まだ、見定めてるところ。」
実際のところ、その通りだ。その人の事をよく知らぬまま隊を組んでは、不測の事態に陥った際に連携が上手くいかず命を落とす事になる。そうならないために、隊員は慎重に選んでいるのだ。…未だ、0人だが。しかしわざわざ毎日時間を取ってこうやって訓練場へと足を運んでいるのは、勧誘したい人材がいないかと見定めるためでもあった。こういうのはきっと慎重に決めなければ、後々後悔する事になる。
「でもね、声を掛けようかと思ってる子は見つけたの。」
「……てめぇ…。」
「え、何?」
てっきり「ほぅ…どいつだ」と興味を示してくれるかと思っていたのに、不機嫌さを隠そうともしない表情を浮かべるリヴァイ。いい加減、無言のアピールはやめて欲しい。一体今のどこに、そんな顔を浮かべる要因があったというのか。
「…てめぇ、ユニよ。なぜ俺を誘わねぇ。」
「え…、…はぁ…?」
何を言うかと思えば、そんな事。なぜって、そんなの、分かりきっているじゃないか。
「リヴァイは、エルヴィン分隊長の預かりでしょ?他の隊の人間ならまだしも、エルヴィン分隊長のとこから人は引き抜けないよ。エルヴィン分隊長も、慎重に選んでいたから。」
以前私がエルヴィン分隊長の隊にいた時…エルヴィン分隊長自ら私を選んで声を掛けてくれて、かなり舞い上がったのを覚えている。それも、真っ先に声を掛けてくれたのだ。……あれ?
「…もしかして、一番に声を掛けられなくて、拗ねてる?」
まさかね、という気持ちで軽く問うたのだが、まさかのまさか、リヴァイはスッと目を細めて、一層眼光を鋭く光らせた。「んなわけねぇだろ。クソが」と言われるかと思っていたのに、まさかそんな事を思っていたなんて想像すらできなかった。
「エルヴィンからは、了承を得ている。ユニであれば、俺を任せられると。…俺も正直に言えば、隊に入らなきゃなんねぇなら、てめぇの隊以外はナシ、論外だ。」
「え、リヴァイ、私の事そんなに信頼してくれてたの?」
本音が漏れる。一体私の何が彼の気に入るポイントになったのだろう。嫌われてはいないと思ってはいたが、彼の気に入るポイントが、全く分からない。
「…てめぇが、変わらなかったからだ。」
「?えぇと、もう少し具体的に言える?」
「……俺達に対する態度が、他の奴らに対する態度と、変わらなかったからだ。最初から、ずっとな。」
そんな事で、とは言えなかった。私にとってはそんな事でも、リヴァイにとっては何よりも大事な事だろうから。
「…リヴァイは、…イザベルもファーランも、たまたま地下で生まれて、生きただけ。生まれたところが違うからって態度を変えるのは、理解できない。…エルヴィン分隊長だって、そういう考えだと思うけどな。」
「てめぇは…口を開けばエルヴィンエルヴィンと、うるせぇ奴だな。」
「あはは、ありがと。」
そうか…エルヴィン分隊長も、リヴァイの処遇を私に委ねてくれたのなら…エルヴィン分隊長の期待に応えるためにも、リヴァイのためにも、
「じゃあリヴァイ、うちの隊に来なよ。歓迎するよ。」
リヴァイを受け入れ、何が何でも生き残り続けてやる。
「…もちろんだ。よろしく頼む。」
リヴァイと一緒なら、手に届く範囲の人は全て救える気がしてくる。
リヴァイは調査兵団の象徴である、自由の翼そのものだから。
「巨人の捕縛を手伝ってほしい?」
私の隊にリヴァイが入った事で嬉しくなり、元々声を掛けようかと思っていたエルド・ジンにも勢いで声を掛けると彼もあっさりと私の隊への加入を了承してくれたのでそのままエルヴィン分隊長に報告に向かった。そうしたら安心したような表情を浮かべたあと大層喜んでくれ、抱きしめてもらった上にヨシヨシとめいっぱい頭を撫でてもらい思う存分甘えさせてもらった。もしも私が犬でしっぽが生えていたら、ちぎれんばかりに振っていただろう。
しかし、それがなぜ上記のセリフを吐く事になったのか。
それは、その後の事である。
「ユニ、この書類をハンジへ届けてきてくれないか?ついでに隊員が入ったと、報告もしてくれば良い。戻りはいつでも構わない。」
「はい!行ってきます!」
そうして、ハンジ分隊長の部屋へ向かった。そして報告を済ませたあと「ユニに、リヴァイに、エルド…。このメンツなら、いけるかもな…」とブツブツ呟いたかと思えば「ユニ、君の隊にお願いがある。巨人の捕縛を、手伝ってはくれないだろうか?」と突拍子もない事を言い出したのだ。だから、あのセリフ。
何を言っているんだと思ったら、どうやら既にほとんどの他の分隊長達には断られたらしい。たまたま、私の順番だっただけだ。しかし、どうしたものか…。
一度エルヴィン分隊長へ相談…、と思ったが、すぐに思い直した。私はもう、自分の隊を持つ分隊長だ。自分の隊の事は私が、自分で、決めなくてはならない。
「危険を感じた時は、倒してしまっても問題ないですか?」
「それはもちろん。成功するまで何度でも、挑戦するけれど。」
「…この作戦に携わる人の名簿、どんな事態が想定されるか、また、その対応策、それと成功時に調査兵団が得られる利益、成功確率とその根拠、具体的な作戦内容をまとめた書類の提出をお願いします。参加するかしないかの検討は、それからです。」
「!分かったよ、ユニ!さすがはエルヴィンの部下だ。しっかりしている。」
「…ずいぶん嬉しそうですね。」
「話を真剣に聞いてくれたのは、君が初めてだからね!ありがとう、ユニ!」
「そうですか…それは良かったです。じゃあ、お願いしますね。」
ハンジ分隊長は変な人だが、リヴァイに似て表裏がなくて好き。その表現の仕方は、全く違うのだが。