845年~851年
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「……良いだろう。ユニ。今日から、立体機動装置の使用を許可する。」
「!!…ありがとうございます!」
エルヴィン団長にそう言われたのが、数分前。あまりに嬉しくてそのまますぐに立体機動装置を装備し、外へと飛び出してきた。外はよく晴れていて、立体機動訓練にはうってつけだったからだ。
「リヴァイ〜!!」
「ユニ。…!ようやく完治したのか。」
「そう!ねぇ、今から訓練付き合ってよ。お願い!」
「あぁ、構わん。お前ら、少し休憩だ。」
「は…、はい!!」
ちょうどよく訓練場にいたリヴァイを捕まえて、復帰の報告がてら訓練のお誘い。ちょうどリヴァイが新兵達に立体機動の訓練をしていたようで、リヴァイ以外は文字通り疲れ切っており地面に伏していた。怪我が完治するまで立体機動訓練を禁止されていた私の代わりにリヴァイが抜擢されたのだと言っていたが……やはりというかなんというか、かなりスパルタだったようだ。可哀想に。
「ユニさん…リヴァイ兵士長に着いていけるんですか…?」
満身創痍の新兵の口から飛び出たそれは、嫌味でもなんでもなく、むしろ私を心配してのものだろう。しかしリヴァイはそう受け取らなかったらしく、瞬時にそれに噛み付いた。
「あ?何言ってる。ユニは全兵団の中で一番立体機動装置の扱いに長けている。舐めた口きいてんじゃねぇぞ。」
「リヴァイ!新兵に喧嘩売らない!それに一番は言い過ぎだから。リヴァイには敵わないよ。」
「バカ言え。俺はお前の真似をして、学んだだけだ。」
「え、そうなの?それは少し…、いや、結構嬉しいかも。」
「そうか。それは何よりだ。お前らも、そこで見てろ。団長補佐が書類仕事ばかりしてるただのお飾りなのか、れっきとした兵士なのか…自分の目で確かめるんだな。」
「?」
「行くぞ。」
よく分からないが、今の口ぶりからして新兵達にの私の評判はあまり良くないもの…なのかもしれない。まぁ、先の戦いで負傷した傷の治りが遅く新兵達には本部内を走り回っている姿しか見せていないし、仕方のない事なのかもしれない。リヴァイはそれに気がついていて、腹を立てているのだと思うと…やはり嬉しい。
それよりも…、それよりも、だ。
「やっぱり立体機動たのしーー!!」
「ハッ…そいつは良かったな。」
「リヴァイみっけ。あ。」
鬼ごっこのつもりで手を伸ばすとヒラリと躱され、私の手は空を切った。すぐに体を反転させリヴァイを追うが、やはりブランクがあるため、リヴァイに追いつくのは至難の業であった。そうして10分程飛び回って、リヴァイが木に着地した瞬間に体ごと彼に飛び込んで、鬼ごっこは無事終わりを迎えた。
「リヴァイ、捕まえた…!」
「悪いな、ガス切れだ。それにしてもずいぶん熱烈だな。」
熱烈?と自身の体勢を思い返すと思いきりリヴァイを抱きしてめいる形で、慌ててその体を離した。久しぶりの立体機動訓練が楽しすぎて、そしてリヴァイを捕まえる事に集中しすぎてしまった。そういえばこの男は私の事を好き…なんだった。無駄に期待させてしまわぬよう、適切な距離感を保たなければならないというのに…。彼と過ごす時間が楽しくて心地よくて、つい、今みたいに…。改めて、リヴァイとの適切な距離感を意識しようと思い直した。
私のガス管を1本リヴァイのに付け替えて入口へ戻るとリヴァイは「どうだ?」と新兵達に問うた。何が?と思ったが、私の立体機動の実力はどうだったかを聞いているのだと分かり口を閉ざした。しかし誰も口を開かず、ただリヴァイは「これからは、ユニから学べ。解散だ」とだけ告げて去っていってしまった。残された私と新兵達の間には気まずい雰囲気が流れたが、私が立ち去らなければ彼らは動けないだろうと気づき「じゃあ…明日からよろしくね?」とだけ告げ、リヴァイの後を追った。私はただ楽しくリヴァイと鬼ごっこをしただけだが、どうやらそれで威厳は保てたらしい。彼らをここに留まらせてくれた、リヴァイに感謝だ。
あの日リヴァイとヒストリアと共に話し合った例の孤児院の設立・運営についての政策は無事に通ったと王政から知らせが届いた。それもこれも、リヴァイの真摯な姿勢とヒストリアの持つ純真さの賜物だ。リヴァイは「お前のおかげだ」と感謝の言葉を述べてくれたが、それも含めてリヴァイの力だ。
政策も無事通り、立体機動装置の使用が許可された。今のところ、全てが順調である。
やっと一区切りついたかと思えたが、立体機動装置の使用の許可が降りたという事は、あの件でハンジさんがそろそろやってくるはずだ。
「ユニ〜!立体機動装置が使えるようになったんだって?」
ほら、来た。
「ハンジさん。情報が早いですね。」
「さっき立体機動訓練に顔を出したんだろ?新兵に聞いたんだ。ねぇユニ、前に言ってた対鎧の巨人用武器が完成したんだ。忘れてないよね?」
「ふふ、もちろんですよ。明日にでもやりましょう。」
「オーケー!準備しておくよ。」
私の怪我の経過を近くで見ながら、ハンジさんがソワソワしていたのは最近感じていた。きっと今か今かと待ち望んでいた事だろう。私としても鎧の巨人を倒す事ができるのなら、試してみたいと思っていた。そして次の作戦の要になるであろう事も。
翌日、技術班とハンジ班、そしてリヴァイを伴って訪れた森の奥で、ようやくその武器を目の当たりにした。それはブレードよりも長く、先には紐のような長いワイヤーが繋がっていて、その形状からはどのように戦えばいいのか全く想像がつかない見た目をしていた。
「この尖っている方を敵に向けて突き刺す。そしてこっちの細いワイヤーを引くと起爆する。要は細長い爆弾、ってとこかな。起爆するまでは1~3秒あるが、鎧の巨人に対抗するために威力は最大で作っているから、残念ながら安全性は低いんだ。下手したら爆発した衝撃で、破片が飛んでくる。雷が落ちたような威力だから、我々は雷槍と呼んでいるよ。」
「鎧の巨人を絶対に仕留めるという、殺意を感じますね…。…分かりました。やってみましょう。」
頭の中で、イメージはできた。
雷槍用の装備を腕に着けて、発射装置をカチカチと空打ちする。このスイッチを押すと前に射出していき、起爆用のワイヤーは腕を引き、ピンを引き抜けば良いらしい。
「…十分に気をつけろよ、ユニ。」
「了解。」
みんなと十分に距離を取り、一人で森の端まで行き、引き返す。そうしてみんなの視界に入る木を目掛けて、雷槍を打ち込んだ。
カチッ、ドッ、ピン──
ドォォォオン!
「!…本当に、すごい威力…。」
先ほど雷槍を打ち込んだ木はそこから真っ二つに折れ、モロに爆発を受けた箇所は煙が上がり、いくらか粉々になっているようだった。これならば、落ち着いて項に突き刺す事さえできれば確実に鎧を剥せるだろう。運が良ければ、そのまま項ごと吹き飛ばせるかもしれない。
「どうだい!ユニ!威力は十分だろう!?」
「あはは、威力は確かにそうですね。でもこれ、私やリヴァイ以外に扱えるんですか?ビビれば腕が吹き飛びますよ。」
これを作ったハンジさん、そしてミカサであれば扱えるかもしれない。が、鎧の巨人と対峙する時にこのメンツが都合よくいる確証はない。つまりは、誰もがこのレベルで扱えるようにならなくてはならないという事で…。
「それは君らに任せる!大丈夫、君ならやれるよ!」
君ならやれるって…私が扱えるのは前提として、その技術を上手く人に教えられる、と言いたいのだろうか。なんて無責任で、人任せなのだろうか。
場合によっては、使う人間はこちらで選ぶ事にもなりそうだ。
「……では、立体機動訓練に組み込みますので、起爆しない模型をいくつかご用意お願いします。それが届き次第、団員に教えこみます。」
「オーケー!任せてよ!」
全く…返事だけは一丁前なんだから。
「リヴァイ。リヴァイも何本か試し打ちして感覚を覚えておいて。私がいない時はリヴァイにも任せるから。」
「あぁ。了解した。」
やはりリヴァイも当たり前のように雷槍を使いこなし、何発か轟音を轟かせたのち、危なげなく試し打ちを終了した。リヴァイが雷槍を扱うのを見ると、簡単にできそうに見えて少し怖い。
「ユニ。少し休みなさい。」
立体機動装置の使用許可が降り、雷槍を用いた訓練を何度か行いそろそろ新兵にも実弾を持たせてみようかと考え始めていた頃、エルヴィン団長からそんな言葉をかけられた。久しぶりの、命令口調だった。
「君は傷が治ったばかりで、私の補佐をしながら新兵達の立体機動訓練も受け持っている。おまけにリヴァイのサポートまで、最後までやり遂げた。このタイミングで休まなければ、もう休める暇はないかもしれないぞ。」
「でも…エルヴィン団長だって、お休みになられていないじゃないですか。」
「私は大丈夫だ。君ほど動き回ってはいないからな。」
「…団長命令、ですか?」
「そうだ。…それを聞いてなお、君は抵抗するか?」
「いえ、そんな事は…。」
「なら、休みなさい。…抵抗はしないが、不満げだな。」
「すみません…。ただ、1人ではどう過ごしていいか分からないんです。それに…エルヴィン団長が今の地位に着いてから、一度も揃ってお休みを取れていないな…と。」
「!」
つまりは、休みを取るなら一緒にゆっくりしたい。今まで言う事ができずに胸にしまっていた、私のささやかな我儘。今度の作戦は、エレン奪還作戦同様に命の保証はできない。前回だってエルヴィン団長は巨人に腕を食われている。その時に負ったハンデが、多少なりとも今回の作戦に響くのは明らか。敵にとってエルヴィン団長の存在はとても厄介だろうし、狙われてもおかしくない。実際彼を失えば、調査兵団が壊滅するかもしれない。エルヴィン団長も、そして彼を守りたい私も、どちらかが死んでもおかしくないのだ。だからとうとう、そのささやかな我儘を口に出した。
「はぁ…、本当に、君は……。」
団長がぎゅっと抱きしめるのを受け入れて、私も抱きしめ返す。彼は片腕だけだというのに、少し苦しい。だが、その苦しさが今は幸せだった。
「…そうだな。1日くらい、ハンジに任せてみても問題は無いだろう。」
「!…ハンジさん、ですか?」
「あぁ。次期調査兵団団長はハンジだと、本人に告げている。私が処刑される前にな。」
「そうなんですね…。だからハンジさん、急にあんなに真面目に…。」
近頃のハンジさんは、以前の彼女と比べて何事にも真剣に取り組むようになった。調査兵団全体を見ていると言えばいいだろうか。エルヴィン団長に任されたというプレッシャーは相当なものだろう。となれば近々、ハンジさんのメンタルケアに赴いた方がいいかもしれない。
「…ハンジは、なぜ君じゃなく自分なのかと、悩んでいるはずだ。」
「私ですか?ふふ、無理ですね。」
色んな意味で。
私は人の上に立てるような器じゃない。エルヴィン団長の下でたまに団長代理をするのが精々で、とてもじゃないが組織を動かすのはごめん蒙りたい。
「私も、1日休暇を取ろう。一緒に過ごしてくれるか?」
「もちろんです。むしろこちらからも、よろしくお願いします。」
やっぱり、エルヴィン団長は私に甘すぎる。こんな事ならもっと早く、この我儘を口にしていれば良かったと、後悔した。