845年~851年
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バンッ!
扉を開け放ち、樽を3つ、向こうへと押し出した。超硬質ブレードの反射で確認するとちゃんと3つとも全て、下まで転がったようだ。
「行け!」
その合図で、全員一遍に飛び出した。決められた役割に従い、それぞれがそれぞれの持ち場へと。
ドォォオオン!
バシュゥゥウ──
よくできた作戦だ。ハンジさんとアルミンの考えた策で、こちらは比較的安全に戦う事が可能。
「敵数35!!手前の柱辺りに固まっている!!作戦続行!全ての敵を、ここで叩く!!」
「!総員散開!!複数で1人ずつ囲め!!」
「了解。」
「ぐっ…!!」
下から忍び寄り、まず1人。1人やったら、また煙の中に紛れる。これを繰り返せば、着実に人数を減らせるはずだ。
「!…コニー!」
少し先で、銃口を向けられるコニー。殺す事に躊躇したのか、しくじったようだった。咄嗟に敵に向かって飛ばしたアンカーに加えてアルミンやサシャの援護もあり何とかなったようだが、少しばかりヒヤッとした。
小さいコニーの体を抱きとめて、下の煙へと潜った。
「…っ、…コニー。あなたは小回りの効く立体機動が得意。殺すのが怖いなら、それは私達に任せて。弾を避けながら、囮になってくれればいいから。」
「っユニさん、怪我が…!…ッすみません!やります!!」
「なら、すぐ行こう…!」
「ユニ!敵が後退している!進め!!」
「了解!!」
リヴァイからの指示は、前方から。この先は、煙が一旦途切れる。より注意して、進まなければ。
ブレードの血を払って、アンカーを飛ばした。
ヒュッ、ガンッ、
ちょうど飛び出した先にいた敵相手に着地するように足を出すと、相手はすぐ後ろの壁に打ち付けられ、足の裏から骨の折れる感触が伝わってくる。その気持ち悪さに思わず、鳥肌が立った。
「ユニ!こっちだ!!」
「リヴァイ!…っ!」
パンッ!パンッ!
「ユニッ!!」
間一髪…直前で背後へアンカーを飛ばした事で、銃弾2発の直撃は免れた。いよいよ、お出ましらしい。
「よぉリヴァイ。本当はお前なんぞに構っている暇はないんだが…ここを突破されちゃ元も子もないんでな…。仕方ねぇ…遊んでやるよ。っ、おっと!」
ブンッと奴の視界外から放り投げたブレードの刃は、ヒョイ、と軽々避けられた。しかし奴がリヴァイから視線を外した事で、リヴァイは姿を隠す事に成功した。
「なんだぁリヴァイ。まさかお前ェの女か?俺にも紹介してくれや。」
やはりリヴァイの言う通り、動きが只者ではない。奴の動き一つ一つが無駄なものなどなく、人を殺すための動きなのだと遠目からでも分かった。私だけでは、敵うわけもない。
「…ッ!」
ガキッ!パンッ!
リヴァイのブレードを、片手で防いだ。それも、立体機動装置で。撃たれた弾は軌道が逸れ、私の横を通っていった。
対人立体機動装置の弱点のひとつは、アンカー射出機と散弾の射線が同じ方向を向いている事。
そして何よりの弱点は、2発撃たせてしまえば次の装填まで時間がかかる事──
1つめの弱点に関しては、こちらが臨機応変に動くしかない。問題は、2つめ。装填に時間がかかるとはいえ、ケニー・アッカーマンは実質的にリヴァイそのもの。弾の装填だって、一瞬で済ませてしまうかもしれない。いや、そうだと仮定した方が良い。
なら、装填する替えの銃弾を、奪ってしまえば…!
リヴァイを視界に捉え視線が交わる一瞬、トントン、と太腿を示す。ケニー・アッカーマンの太腿には、替えの銃弾が巻かれている。人体の構造上、頭や首を守るのと違って下半身は腕で守るのには一瞬動きが遅れる。そこをついて、敵の武器を奪う…!
ボヒュ、ドンッ、ドンッ!
煙から飛び出したところを撃たれるのは、分かっていた。だからアンカーを2本別々の場所に刺し、軌道から外れた。
続けざまにリヴァイが飛び出したが、やはりケニー・アッカーマンの装填時間は一瞬で、2発ともすぐに発射された。
…このまま弾切れを狙うのも有りだが、奥の様子が分からない以上、倒せるのなら倒してしまいたい。
「おいおいおいおい…何だこの嬢ちゃん。立体機動が上手すぎやしねぇか…?」
ガキン!
リヴァイの超硬質ブレードが、再び止められる。そこに合わせて飛び出し、太腿のホルスターをひとつ、切り落とした。
ガチャ、キン──!
私の方へと向けられた銃口。それをリヴァイがブレードで阻止し───
ドッ──!
ケニー・アッカーマンに胸を蹴り飛ばされ、私の体は、勢いよく後ろへと吹き飛んだ。
「…ッ、ユニ!!」
「ッ私の事はいい!!早く倒して!」
落ちながらもアンカーを射出し、柱へと張り付く。が、胸の痛みに頭がクラッと揺れる。
「はぁッ…、っは…!」
蹴られる直前、私は後ろに飛び退いた。だから、これで済んだ。くっつきかけていた肋の骨はまた離れ離れになってしまったかもしれないが…少し休めばまだ、動ける。
しばしの休息ののち、再びアンカーを飛ばしリヴァイの元へと向かった。
「リヴァ─、…っハンジさん!!」
リヴァイを再び視界に捉えるのとほぼ同時。視界の端で、ハンジさんが柱に体を打ち付けられるのが見えた。
「…アルミン!!ハンジさんの手当てを!!」
「任せたぞ!残りの者で敵を追う!!」
ハンジさんは、きっと生きてる。打ち付けられて地面に落ちる際、受け身を取ろうとしていた。ただ今は、体が動かないだけだ。だから私達はハンジさんが生きていると信じて、前進するしかない!!
「!…これは…。」
向こうへと続く道には、これ見よがしに網が張られている。あれを外そうと顔を覗かせれば、袋叩きにされるのは必至。単純だが、足止めにはうってつけの罠だ。
「爆薬を残しとくんだったな…。おい、体の傷は。」
「うん…何とか。ケニー・アッカーマンは?」
「手負いだが…致命傷は与えられなかった。」
カッ───
「!」
洞窟の奥の方、おそらくエレン達のいるであろう方から、眩いほどの光。それは誰かが、巨人化した時の光。それを意味していた。
「っ兵長!穴が!」
「!…アルミン、モブリット!お前達はハンジを外へ連れ出せ!」
リヴァイが先に天井に開いた穴へ飛び込み、中を確認する。少しして「こっちだ!」とGOサインがあったので、どうやら奥へと続いているらしかった。
ものすごい暴風だ。一体、誰が。エレンだったなら、いい。しかしレイス家の誰かだったなら、まずい。非常にまずい。
一際広い空間に出ると、今まさに巨人の体が形作られているところで、そのあまりの大きさに目を見開いた。
「エレン!!」
「!」
ミカサの声にハッとすると、エレンとヒストリアが高台にいるのが視界に映った。まだ、生きていた…!!
「エレン!ヒストリア!」
すぐ側に行き、辺りを見渡した。2人が無事という事は、あの巨人はレイス卿…なのだろうか。ものすごく大きくて、おそらく超大型巨人よりも巨大。そんな巨人の体が完成してしまえば、この洞窟は…綺麗にあの巨体に埋め尽くされてしまうだろう。
「急げコニー。…いや、ユニに代われ。」
「えっ、私!?分かった!」
コニーでは焦って鍵を取りこぼしかねないと判断したのだろう。暴風の中エレンの元へ行くとリヴァイがその背を支えてくれた。きっと、私では簡単に吹き飛ばされそうだからだ。自身もエレンの腹に片腕を回して、まずは足の鍵を開けた。そしてリヴァイとジャンに支えられながら、両腕の鍵も。
「避けろ!」
天井が、崩れる。避けるのを手助けしたのはやはりリヴァイで、暴風も相まって彼の胸に背中から飛び込む形となった。
「おい、吹き飛ばされるなよ。」
「…っ、でも、これ……。」
「逃げ道がねぇぞ!」
そう、逃げ道がない。今しがた通ってきた抜け道も、既に崩壊。下には降りられない。巨人の項を切ろうにも、熱を発し続けていて近寄れない。絶体絶命、というやつだ。その絶望的状況を前に思わず体を反転させて、ギュッと目の前のリヴァイを抱きしめた。
「!…おい、ユニよ…。」
「ごめん…!でも、私こんなところで、こんな死に方…!」
嫌だ。エルヴィン団長の夢だってまだ叶えていないし、生きて帰ると約束した。それに殺されるかもしれないという覚悟を持って人を殺したのに、死ぬのが洞窟の崩壊に巻き込まれて…だなんて、せっかくの覚悟が無駄になってしまう。
絶望感に呑まれ、次第に瞳には涙が滲んだ。
「…死なせねぇよ。勝手に死ぬな。」
「…!?」
ポロ、と零れた涙を、リヴァイの唇が拭いとった。多分。おかげで涙は止まったし絶望感も消し飛んだが、……え…!?
「冷静になったか、ユニ。」
「冷静、で…いられるわけ…!!」
「ごめん…みんな…。俺は、役たたずだったんだ…。」
つい先ほどの私よりも悲観的なセリフは、エレンから発されたもの。見ると、両目からボロボロと涙を流している。エレンは、調査兵団の希望だ。今この状況で希望を見出すのだとしたら、エレンの巨人の力しかない。
スル、とリヴァイの腕から抜け出して、エレンの隣へと膝をついた。
「…ごめん、エレン。私達は、エレンに期待しすぎてたね。みんなの期待は、重かったでしょう。でもね、私達にはエレンが必要なの。今だって、私達にできる事は何もなくて……また、エレンに期待してるの。…みんな。」
「…ユニ、さん…。でも、俺…!…、鎧…。」
鎧?とエレンの視線の先を見ると"ヨロイ"と書かれた瓶が転がっている。なぜこんなところに?と不思議に思ったが、レイス卿の物だろうか?
「…鎧の巨人の力が使える…とか?」
ポソ、ととても小さい声で呟いたつもりだった。だがエレンの耳にはしっかりと届いたようで、その怪しげな瓶に手を伸ばしていた。
「毎度、お前にばかりすまなく思うが…エレン。好きな方を選べ。」
「…リヴァイも私も、エレンの事を信じるよ。」
「…ッ、……うぁぁぁああああ!!!」
「っエレン!!」
走り出す、エレン。その手には、ヨロイと書かれた瓶。その瓶を歯で噛み砕いて──エレンは、巨人化した。