845年~851年
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「…何だテメェら。見てんじゃねぇぞ。」
リヴァイのそんな不機嫌そうな声で目を開けた。どうやら、少し眠っていたらしい。目の前にはさっきまでミカサがいたはずだが、今はサシャが涎を垂らしながら眠っていた。
傾いていた体を起こして気づいたが、いつの間にか私はリヴァイの肩に寄りかかっていたらしい。「あ、ごめん」とリヴァイの方を見ると「起きたか」と僅かに口角を上げたので、気まずくて体を離した。
「おはよう、ユニ。最初は私に寄りかかってたんだけど、リヴァイに取られちゃってね。」
「わざわざ言わんでいい。クソメガネ。」
「…寝心地は悪かったはずなんだけど…元気になったかも。ありがとうリヴァイ。」
「…そうか、良かったな。」
未だ、荷馬車は走り続けている。到着までは、まだ少しかかるみたいだ。
「礼拝堂には、ケニー…ケニー・アッカーマンがいるだろう。過去に王都で憲兵を殺し回ってた、切り裂きケニーだ。」
「切り裂きケニー…。」
そういえば、リヴァイは彼と知り合いだと言っていた。その話をするのかと思ったが、彼が話したのは「俺は奴と…一緒に暮らしていた事がある」という事と、「脅威の度合いで言えば…俺がいると思え。いや…あの武器がある分、俺よりも厄介だ」という、絶望的な情報のみだった。
「…リヴァイと同等か、それ以上って…怪我をした私とリヴァイでようやく釣り合いが取れるかどうか…ってところね。」
「俺の戦い方は、奴の影響が大きい。全て読まれると思って良い。だが、幸いな事に俺にはお前がいる。ユニ。お前の視野の広さや冷静さに懸かっている。頼んだぞ。」
「…プレッシャーかけないでよ。私はそんな、大層な力は持ってないんだから。」
リヴァイみたいに驚異的な…人間の限界を越えたような戦いのセンスは、私にはない。私はただ、立体機動が大好きで、立体機動装置の扱いがずば抜けて上手いだけ。それも、センスなどではなく努力して得たものだ。努力が天才を上回るのは、言葉で言うほど簡単なものじゃない。増してや私は怪我をしているのだし…。…とはいえ、諦めるわけではないのだが。
「しかし…一緒に暮らしていてそれしか切り裂きケニーの情報が無いって、どういう事だよ、リヴァイ。」
「悪いな。奴のフルネームも知ったばかりだ。…ケニー・アッカーマンって名前らしいが、お前の親戚だったりしてな…。」
「……生前の両親の話では、父の姓アッカーマン家は、都市部で迫害を受けていたと聞きました。東洋人である母の一族は人種の違いからか街に居場所を失い、お互い壁の端の山奥に追い詰められたもの同士が出会って、夫婦となったのです。なぜアッカーマン家が迫害されていたのかは分かりません。母のような人種的差異が、父にあったようには見えませんでしたし…。」
「!」
みんな静かに、ミカサの話を聞いていた。そんな中突然リヴァイの手が私の手を掴むのでそちらを見たが、彼の目は変わらず、ミカサへと向けられていた。
「お前…ある時突然、力に目覚めたような感覚を経験した事があるか。」
リヴァイがミカサに尋ねたのは、そんな、よく分からない事。しかし聞かれたミカサは心当たりがあるのか、少し目を見開き「…あります」と答えた。
「……ケニー・アッカーマンにも、その瞬間があったそうだ。ある時ある瞬間に、突然バカみてぇな力が体中から湧いてきて、何をどうすればいいか分かるんだ…。…その瞬間が、俺にもあった。」
「…リヴァイは…、リヴァイも、そのアッカーマン一族かもしれない…って事?」
だから、リヴァイは地下で暮らす事に…?そもそも、アッカーマン一族とは何なのだろうか。レイス家の血筋の話も出たし、アッカーマン一族にもなにか、重大な秘密が隠されている気がしてならない。
「!あれだ…。みんな、礼拝堂に着いたぞ。」
思考は一旦、ここでおしまい。荷馬車が止まり次々と降りていく中、リヴァイは私の手を掴んだままで、ジッと私を見ていて…なにか、話したい事があるのだろう。
「…お前に、俺の過去の話をしたいんだが…今はそんな話をしている暇はないらしいな。」
「!うん、そうみたいだね。」
「だから、死ぬんじゃねぇ。ケニーに…やられるなよ。」
「…うん。エルヴィン団長とも、生きて再会するって約束したから。安心して。たとえ手足が無くなっても、ちゃんと生きて帰るよ。」
私の答えを聞いたリヴァイは、眉間に皺を寄せ私の手を指で撫でた。その触れ方はとても優しくて、思わずドキリとした。
「…手は残せ。じゃねぇとお前の淹れた紅茶が飲めなくなるだろうが。」
「!…本当にリヴァイは、紅茶が好きね。」
「バカか。お前の淹れた紅茶が好きなんだ。」
「…はいはい。」
「おーいお2人さん!それらしい物を見つけたよ!」
少し先から、ハンジさんが私達を呼ぶ。それに「はぁい。今行きます」と返してからようやく、リヴァイの手は離れていった。
今はまず、目の前の問題を解決しなければ。
「来たね。これを見てくれ。隠し扉だ。」
石造りの礼拝堂の床。絨毯を捲った先の、隠し扉。小さいが、ここを開けると地下に広い空間が広がっているというのが、ハンジさんの予想だ。
「私が予想した通りの地形だといいんだが…。」
「それを信じて行くしかないですよ。ついでに、エレンがまだ食べられていない事も信じましょう。」
「準備、整いました。」
「そうか…それでお前ら、手を汚す覚悟の方はどうだ?」
リヴァイはそう言って、視線を巡らせる。礼拝堂の中は途端に、鋭い空気で満ちていった。
「…良さそうだな。…お前も。」
「…うん。立体機動装置も完璧に整備したし、いつでも行ける。…行こう。」
グリップを持ち、超硬質ブレードを装填する。ガチン、と音を立てたそれは、本来は巨人を倒すべきもの。それで今から人を殺すなんて……つい数日前まで、そんな事になるなんて思ってもみなかった。しかし、そうなってしまったのだ。私も、リヴァイも、104期のみんなも。生きるために、殺さなくてはならない。
「よし…作戦開始だ。」