845年~851年
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夜のうちに拠点を出て、現在、森の中。ハンジさんに「エルヴィンにこの事を伝えなきゃならないんだが、君が行くか?」と聞かれたがNOと答えた。彼に会いたいのは山々だが、それではこうしてここまで来た意味がない。私とエルヴィン団長はお互いを信じ、共に険しい道を進む選択をしたのだから。
「街で憲兵が、こんなものを。」
「……おい、ユニ。」
リヴァイがアルミンから受け取ったのは、新聞。差し出されたそれを覗き込むと、『調査兵団が民間人を殺害・逃亡』という見出しと共に、全く似ていない私とリヴァイの肖像画が描かれていた。
「……っ、エルヴィン団長…。」
きっと、団長はまた、憲兵に連行されてしまったのだろう。前回と違い、今回は殺人容疑。何をされるか分かったものじゃない。思わず、手が震える。
「これが事実なら、調査兵団は解散状態です。午後には山狩りが行なわれるというし、加えて主要な街道には検問が張られ、通行証がないと通り抜けは不可能です。兵長…どうしたら…。」
「早くしないとエレンが…!」
「落ち着け。」
リヴァイの「落ち着け」という声は、アルミンやミカサだけでなく、私にも向けられていた。その証拠に、背中にはリヴァイの手が添えられていた。
「奴らは馬車を使ってる。レイス卿領地まで、あと1日はかかるはずだ。その間に何とか…策を講じるしかねぇ。」
「!…兵長、足音です。こっちに向かってきます…!」
聴覚がずば抜けているというサシャがいち早く、何者かの足音に気がつく。耳を澄ませてみてもそんなものは聞こえないが、ミカサ曰く、サシャの聴覚の良さは本物らしい。ミケさんの嗅覚と似たようなもの、だ。
「ユニ。お前は下がれ。一番後ろだ。」
「え…、あぁ、うん。」
新聞を丁寧に畳んで、ポケットへとしまう。頭の回転が遅い今は、リヴァイの指示に従おう。いつもとは逆の立場だが、リヴァイの頼もしい姿を見て、なんだか誇らしく思った。私がエルヴィン団長を見て学んだように、リヴァイも私を見て学んでいたのだと。
足音の正体は、憲兵団の団員2名。新兵だったので、比較的簡単に拘束できた。リヴァイの考えでは、2人の制服を拝借して検問を越えるという事らしいが…果たして、上手くいくだろうか?
「さて…ストヘス区憲兵支部所属、マルロ・フロイデンベルク二等兵。同じく、ヒッチ・ドリス二等兵。お前らの処遇だが…。」
「ッ…、…あなた達のせいで、ストヘス区の人民が100人以上死にました…!」
「あ?」
「おい…!」
「あなた達は…自分が正義の味方のつもりなのかもしれませんが…被害者やその家族は突然地獄に落とされたんですよ?」
「あぁ…知ってる。」
ジャリ、
腰を上げ、彼らの元へと近寄る。2人とも拘束され、且つリヴァイが目を光らせている今、それを咎める者はいなかった。
「っあんた達、南方訓練兵団出身なんだってね。アニ・レオンハートと同じ…。仲良かったの?いや…友達なんかいなかったでしょ。あいつ暗くて愛想悪いし、人と関わるの怖がってるような子だったし…。あいつの事まだ何も知らなかったのに…あの日以来見つかってないのは……巨人にグチャグチャにされて見分けつかなくなったからでしょ!?」
「いいや。潜伏してた巨人の正体が、アニ・レオンハートだったからだ。」
「ッ!?」
「…あなた…、ヒッチ…だったっけ?いいね。」
「え…、は…?」
「おい、ユニ。こんな非常時にナンパしてんじゃねぇぞ。」
「少しくらいいいじゃない。かわいい子とお話するくらい。ねぇ、私、言いたい事言える女の子好きなんだ。殺されるかもしれない状況でリヴァイ相手に、よく言ったね。拘束されて震えながらも啖呵切って…かっこよかったよ。」
彼女の姿を見て、自分と重ねた。エルヴィン団長が褒めてくれた、自分の姿と。なんだか、彼女を見たら少し、気力が湧いてきた。
「はぁ…。お前達は、俺らの出発と同時に解放する。」
「……っ、リヴァイ兵士長!俺に協力させてください!俺にはあなた達が間違っているとは思えません!この世界の不正を正す事ができるのなら、俺はなんだってやります!!」
「…わお。」
「…何だ、お前は。」
これはこれは…近年稀に見る真面目な青年だ。真っ直ぐで清くて、かなり珍しい人種。これは演技などではなく、本気で言っている顔だ。
「お願いします!リヴァイ兵士長!!」
「…ダメだ。お前に体制を敵に回す覚悟があるかなんて、俺には計れない。」
「…ねぇ、リヴァイ。この子きっと、覚悟あるよ。」
「…何?」
「覚悟があればいいのなら、この子はあるよ。だって…苦しそうだから。自分のやっている事が正しいのか、葛藤してる。…と、思う。」
「…!」
全員の視線が、マルロへと集まる。
「ヒッチだって、ただ友人であるアニの心配をしている、何も知らない哀れな女の子だよ。2人とも新兵だから、まだ綺麗なんだろうね。」
「……分かった、信じよう。…おいお前ら、ユニに感謝するんだな。」
「あっ、えっ…!?…っはい!!」
「あ…ありがとうございます…。」
あまりにあっさりリヴァイが手のひらを返すものだから、2人ともどういう事かと戸惑いの表情を浮かべている。調査兵団内ではよくある光景だが、憲兵の彼らには意味の分からない茶番のように映った事だろう。
「…俺は…入る兵団を間違えました…。」
「そうだね…。憲兵団なんて、クソみたいな奴らしかいないよ。君みたいな真っ直ぐな子は、向いてない。」
「お前のは完全な私怨じゃねぇか。師団長に向かって"無能"呼ばわりだもんな。」
「クソ…、それに、無能…。」
「おっと、口が悪かったね。リヴァイのが移っちゃった。」
「そうか。それは良かった。」
「あ…この先です。」
2人の案内で、比較的警備の手薄な検問所までやってきた。確かに、憲兵が数名いるがみな、呑気な顔をしている。
「よし…あとは俺達でやる。お前達は怪しまれないうちに隊に戻れ。」
「はい…。」
「…マルロ、ヒッチ。…助かった。」
「!」
「ありがと、2人とも。元気でね。」
2人とも、リヴァイに敬礼をし、去っていった。
「おい…この手は何だ。」
「…ごめん、成長したなと思って…。」
思わずリヴァイの頭をヨシヨシと撫でていて、慌てて手を離した。今のは、手が勝手に。
「……、…行くぞ。今度はこっちから仕掛ける!」
何か言いたげだったが、リヴァイはそれを飲み込んだ。仕掛けるなんて大層な物言いだが、こっちはただ、馬車で突っ込むだけだ。
「うおぉぉぉおお!!!」
雄叫びを上げる104期生のみんな。勢いがあって、若さを感じる。
「…私も、対人格闘技ができたらなぁ…。」
「…今さら何だ。エルヴィンに泣きついてまで、逃げただろうが。」
「リヴァイとの訓練の話じゃないよ…!…ただ、守られるだけは性にあわないなって。」
「…お前1人守るくらい、なんて事ない。が、自分の身は自分で守れた方が良いのは確かだ。…丁度いい。力を使わずに相手を倒すやり方を教えてやるよ。」
「え…?私、一応まだ怪我人なんだけど…。」
「違ぇよ。コイツがいるだろ。」
コイツ、とは、先ほどの検問所で捕らえた、中央憲兵所属の兵士。これから尋問すると言っていたから、その時に何かをするのだろう。
「そういう事なら…。よろしくね、リヴァイ。」
もうすぐ、日が落ちる。エルヴィン団長は今どこにいるだろうかと考えながら、ガタガタと揺れる荷馬車の中から沈んでいく夕日を眺めた。