845年~851年
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「この人は…。」
「リーブス商会の会長、ディモ・リーブスだ。」
部屋の隅で、手足を縛られ猿轡を着けられた小太りの男。彼が、リーブス商会の会長。聞くと中央第一憲兵に雇われ、エレンとクリスタを連れ去ろうとしたのだという。
「リーブス商会はこれから…全財産没収、俺やあのバカ息子はもちろん部下達まで、何らかの事故に遭って死ぬだろう。」
「…でしょうね。」
中央憲兵が使う、いつもの手だ。このままだと、彼らも同じ最期を迎える事になるだろう。
「黙って殺されても良いのか?」
「?」
「破綻寸前のトロスト区が何とか持ってるのは、リーブス商会が人と仕事を結びつけているのが大きい。だが、商会がなくなったら一体、何人が冬を越せるだろうな。」
「……まさか、アンタらにつけと?」
「俺達はどうしても、エレン達の行く先を知りたい。憲兵御用達のあんた達なら、できる事もあるだろ。」
「それで街と俺達が餓死するのを、止められるってのか?」
「…保証はしない。ただ、そのために動く事だけは信用してもらっていい。」
リヴァイの、交渉だ。彼のストレートな物言いは、刺さる人には刺さる。リーブス商会の会長、ディモ・リーブスにはどうだろうか?
「安心して。うちのリヴァイは、こう見えて約束は守る奴なの。私が育てました。」
「テメェに育てられた覚えはねぇ。…殺されてぇのか。」
「女の子相手に胸倉を掴むのはどうかと思うでしょう?でも大丈夫。軽く引っ張ってるだけなの。優しいでしょ?」
「……はぁ…、どっちみち、俺達はこのままだと死ぬ。…良いだろう。お前達に協力しよう。」
リーブス会長は、いとも簡単に首を縦に振った。まぁこのままだと死ぬ、は間違いじゃない。我々に協力しなければ、待っているのは確実な死。なら、助かるかもしれないこちら側に着くのは、賢い選択だ。
「ありがとう。我々は、リーブス商会の方々を歓迎します。みんな、拘束を解いてあげて。」
「えっ…良いんですか、リヴァイ兵長…?」
「ユニが良いと言っている。早くやれ。」
「は、はい…!」
本当、かわいい部下だ。とはいえ、みんなは私の班ではなくリヴァイ班の子達だ。こういうのは今度から私じゃなく、リヴァイから言った方がいいだろうに。
「…ユニ、ちょっといいか。」
「ん、いいよ。」
「おい、お前ら。俺達は今から、少し外で話してくる。憲兵の奴らが彷徨いてねぇか、ちゃんと交代して見張れ。いいな?」
「はい!」
リヴァイが部下に指示を飛ばすところなんて、ほとんど初めて見る。的確に今やるべき事を指示していて、彼も成長したのだと、まるで母親のような気持ちになってしまう。
彼の背中に着いていき外へ出ると、辺りには人の気配はなく、とても静かだった。
「…で、お前がここに来るなんて、俺は聞いてねぇぞ。エルヴィンの野郎が許したのか?」
「えぇ…、またその話?」
さっきも同じ事を聞かれ、リヴァイに会いたかったから、と返したのに。どうもそれでは納得していなかったらしい。
「さっきのは感情論だろうが。今度は論理的な答えを聞かねぇとな。」
「…んー…、リヴァイは、覚えてる?エルヴィン団長が、1週間ぶりに目を覚ました時の会話。」
「…あぁ、何となくな。」
「あの時私、たとえ行き先が地獄だろうと、エルヴィン団長に着いていく、って言ってたじゃない?だからだよ。…私を、置いて行こうとするから…。…だからね、それを伝えたの。私の気持ち、全部。そしたらエルヴィン団長が"降参だ"って。」
「…情けねぇな。」
リヴァイの眉間に、皺が寄る。リヴァイだって、私がここに来るのは反対だっただろう。
…リヴァイは、私が人を殺すのを覚悟しているとは、知らなかったのだから。
「エルヴィン団長の邪魔をする奴は、殺す。その覚悟が、この前から決まってたの。リヴァイは……ショックかもしれない。けど、私は本当に、エルヴィン団長となら地獄にでも行くよ。…ごめんねリヴァイ、ありがとう。」
私はもう、リヴァイの求める甘くて優しい、綺麗な人間じゃない。だから、ごめん。
私にそんな血腥い事をさせまいとその役を買ってでてくれて、ありがとう。
それを、最後の一言に込めた。
「!」
何も言わず、リヴァイは片腕で私を抱きしめた。それがどういう意味かは、分からない。が、私も抱きしめ返したいと思った。
「えぇと…これは、私も抱きしめ返してもいいの?」
「……知らん。お前の好きにしろ。」
リヴァイに聞いても、結局分からなかった。なら、リヴァイの言葉通り好きにしよう。
「リヴァイ、ごめん。ありがとう。」
ぎゅっと抱きしめて、もう一度、謝罪と感謝を伝えた。
「あぁ…。…お前は、変わらねぇよ。たとえその手が、血に塗れてもな…。」
「本当?リヴァイ、失望してない?」
「うるせぇな。しつけぇぞ。」
「だって…リヴァイに失望されたらと思うと、怖くて…。」
「……どういう意味だ、そりゃあ…。」
徐ろに、リヴァイは私から、体を離した。そしてどういう意味だ、と。どういう意味も何も、そのままの意味なのだが。
「…リヴァイ。私はリヴァイが思ってるより、リヴァイの事、頼りにしてる。自分に自信が持てなくなった時…そんな時はいつも、リヴァイの姿が頭に浮かぶの。リヴァイがいるから、私はがんばれる。リヴァイが失望するような人間には、なりたくないから。」
「……おい。今すぐ、キスしていいか?」
「え…、は、はぁ!?だっ、ダメに決まってるでしょ!?」
こっちは真剣な話をしているのに、突然何を言い出すんだ。こちらの必死な様子を見てリヴァイは「チッ」と舌打ちをひとつ。いや、逆ギレ…!?
「前に、下心はねぇと言ったな。やっぱり、アレはナシだ。」
「はぁ!?なにそれ何で…!」
「テメェ…!自分で言った言葉の意味をよく考えろ。そんな事を言われて落ちねぇ奴は、男じゃねぇ。」
「そ、そんなつもりじゃ…!!」
「そんなつもりじゃねぇなら、ベタベタ触れるな。次にベタベタしてきやがったら、今度こそするからな。覚えておけ。」
えぇ…今のは、リヴァイからしてきたのに…?
上司と部下だからと安心していたのに、これからは、どうやら違うらしい。
調査兵団に入ってからというもの、仲間の死を嘆くたび団員と抱き合って泣いたり肩を組んで思い出話をしたりしてきて、人との距離感がおかしくなっていたのかもしれない。
これはいい機会だ。リヴァイを練習台にして、正しい人との距離感を思い出していこう。
「分かったら、さっさと寝ろ。あいにくフカフカのベッドなんて、贅沢品はねぇぞ。」
「うん…。リヴァイは、最近眠れてるの?」
話は終わり、中へと戻る道中。眠れているのか、という問いに対する答えは、沈黙。無言は肯定と言うが、この場合は逆だ。
「リヴァイも、横になって。私も隣で横になるから。」
「………助かる。」
ボソ、と聞こえたのは、感謝の言葉。あのリヴァイが、この状況で…それも私がいない状況で、ゆっくり眠れているわけがない。この日、硬い床の上だというのにリヴァイは、6時間も睡眠を取れた。翌朝「体が痛ぇ…」とご機嫌ななめだったが、バキバキと体を鳴らすと十分に疲れは取れたようで、目の下のクマは薄まり瞳に輝きが戻った。…と、アルミンが言っていた。