845年~851年
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「エルヴィン団長…眠れていないのではないですか?」
「あぁ…そうだな。」
昨日憲兵に連れていかれてから今まで、寝かせてもらえなかったに違いない。その確信の元尋ねるとやはりその通りで、少し肩が強ばる。
「なら…ソファに横になってください。…憲兵の奴ら…、団長はまだ完治していないのに…。」
「唇を噛むんじゃない。…そうだ、膝枕をしてくれるか?そうすれば、体を休められそうだ。」
エルヴィン団長の、かわいらしい頼みならば、喜んで。ソファに腰掛けるとゆっくりとエルヴィン団長の頭の重みがのしかかる。ハンジさんのものよりも重みのあるそれには、きっととんでもない量の情報が詰まっていて、そしてそれをぐるぐると回転させながら日々を過ごしているのだろう。
グッ、と上から肩を押さえつけると、さらに重みが増した。
エルヴィン団長の重みと暖かさで、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
「力を抜いてください。それじゃ、意味がないじゃないですか。」
「はは、バレてしまったか。」
「……それで、エルヴィン団長はなぜ、中央憲兵に?そして、何を話してきたんですか?」
私が一番聞きたいのは、それだ。私は何よりもエルヴィン団長が大事なので、外の状況だとか調査兵団が置かれている状況だとかは、あとだ。
「中央憲兵が、エレンとクリスタを引き渡せと。…もちろん、断固拒否してきたが。」
「…それは…ニック司祭が殺された事と、関係があるんですか?」
「あぁ。ニック司祭は、我々にどこまで話したか問い質そうとして…拷問の末、殺されたんだろう。」
「拒否、して…、団長は、大丈夫なんですか…?」
中央憲兵からの命に背くなんて…そんな事をしたら、団長だって、お父様のように……そう思ったら、胃のあたりが重くなった。
「…どうにかしたいと考えているだろうが、今すぐにとはいかないだろう。向こうがそうして策を考えている間に、どうにかするさ。」
「どうにか、って…、どうなさるおつもりですか?その内容によっては、私は……。」
「…変な事を考えるんじゃない。私は…君にはいつも、…いつまでも、笑っていてほしいんだ。」
「!!…それは…、……エルヴィン、団長…。」
彼はもしかして、私をこのまま調査兵団から遠ざけようとしているのだろうか。だから、私に何も言わなかったのか。…そんなの……そんなの…、許さない。たとえエルヴィン団長であろうと。
「エルヴィン団長。私、言いましたよね。私は、たとえ行き先が地獄だろうと、着いていくって。私、勝手に着いていきますからね。私から逃げられると、思わないでください。」
「君は……私の命に、背くのか?」
「エルヴィン団長だって同じ事をなさっているじゃないですか。私はエルヴィン団長のおそばで色々と学んできましたので、参考にさせて頂いたまでです。」
「……参ったな…。君の想いの強さを、見誤ってしまった…。誤算だったよ……。」
「エルヴィン団長のためなら、人を殺める覚悟もできています。それがエルヴィン団長の目指す未来のために…必要不可欠だというなら、やります。」
エレン奪還作戦の際、覚悟は完全にできていた。実際その場面にはまだ直面していないが、やれというならやる。いざそうなれば躊躇うかもしれない。が、その前に体を動かせば良い。私は今までの自分を超え、非情にならなくてはならない。
「しかし、君はまだ、傷が完治していないだろう。」
「腕と足が動けば、問題ありません。ふふ…私の立体機動の腕前は、団長が一番分かっているじゃないですか。」
じっと私の膝の上で私を見上げるエルヴィン団長は、やがて諦めたように目を閉じ、左手を上げた。
「参った…、降参だ。こんなに手も足も出ないとは…私をここまで負かしたのは、君が初めてかもしれないな。」
「!…光栄です。これは勲章ものですね。」
私はただ、自分の気持ちを押し通しただけなのだが。それでも、勝ちは勝ち。エルヴィン団長は私に甘いから、ハンデがある気がしないでもない。
「君の立体機動装置は、既に修理から返ってきている。技術班総出で修理にあたってくれたそうだ。有事の際に、すぐに出せるようにな。」
「なら、今がその時ですね。」
「…私も、覚悟が決まったよ。君にも、全て話そう。」
そうして話し出したのは、一度に聞くには多すぎる、そして大きすぎる情報の数々だった。
今回中央憲兵は、エレンとクリスタの身柄の引き渡しを要求してきた。それはニック司祭が殺された事と関連があるのは明らかで、ニック司祭の言っていた"壁の秘密を公にする権利"を持つクリスタを、王政、そして中央憲兵は死に物狂いで奪いにくるだろうと。
そしてさらに、ひとつの仮説──ほぼ真実であろう説を話した。
「今から107年前…当時の人類は、王によって記憶を改竄されたのではないか。昔、父がそう言っていたんだ。そして、エレンの叫びの能力は…君も目にしただろう?」
「…まさかエレンに、記憶を改竄させるような…、そのような力が…?」
「その辺りの事は、今はまだ分からない。だが、そういう力がある事は事実だ。そしてそれは巨人だけでなく人間相手にも通用する可能性がある。巨人は、元は人間のようだからな。」
「だからヒストリアだけでなく、エレンの身柄も…。全て…繋がっていたんですね。」
「……ピクシス司令にも協力を仰いだんだが、断られてしまったよ。無理もない。己の独断で、大勢の部下を巻き込むわけにはいかないだろうからな。」
「エルヴィン団長を、少しは見習ってほしいものです。」
「ははっ。……ユニ。今回の任務は、巨人が相手じゃない分難しいかもしれないが…、…死ぬなよ。」
「エルヴィン団長が、そう仰るなら。体がボロボロでも、手足を失っても、意地でも帰ってきます。」
「頼もしい限りだな。…では、そろそろ…。」
団長が体を起こしてから、私もゆっくりと立ち上がる。
エルヴィン団長が徐ろに隣の部屋へと行ったと思ったら、アタッシュケースを抱えて戻ってきた。立体機動装置の入っているケースだ。
「君のだ。」
私の…立体機動装置。修理がいつ終わったのかは分からないが、まだ私には渡せないと判断し、部屋に保管していたようだ。それが、こうして目の前に差し出された。
床に置いてカチャ、とケースを開けると、あの時ボロボロに壊れてしまったそれは傷だらけではあるが形は戻り、ところどころパーツの交換がされていた。ベルトを着けるのでさえずいぶんと久しぶりだが、感傷に浸っている場合ではない。
丁寧に、自身の立体機動装置を装備する。
ガチャ、と最後にグリップを所定の位置に取り付けて、団長を見た。
「やはり君は、その姿が一番似合う。…くれぐれも、気をつけろよ。」
「はい。」
久しぶりの立体機動。それも、ところどころパーツが交換されたものだ。
プシュ、プシュ、と数度ガスを吹かしてから振り返り敬礼をし、そうしてから空へと飛び立った。