845年~851年
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コンコン、
「ハンジだ。入れ。」
まるでこの部屋の主かのように返事をする、リヴァイ。彼の言った通りハンジさんが扉を開け中へと入ってきたが、その後ろには、104期生の一人コニー・スプリンガーを伴っていた。
「今回の件の調査報告に参りました。彼は──」
そう話し出すハンジさんからの報告は、以前上がった仮説を裏付けるような話ばかりで耳を塞ぎたくなった。そして最後に、こう締めくくられた。
「今回出現した巨人の正体は、ラガコ村の住民である可能性が高いと思われます。」
「…つまり巨人の正体は、人間であると。」
ぎゅ、と握った拳は、上からリヴァイに押さえつけられた。でも、だって、そんなの信じたくない。辛すぎる。コニーの顔なんて、見るのが怖くて顔を上げられない。
ハンジさんは確証はないと言うが、そんなの、信じたくないだけだ。状況証拠が、揃いすぎている。
「じゃあ…何か?俺は必死こいて、人を殺して飛び回ってた…ってのか?」
聞けば聞くほどおぞましい話で、リヴァイの声色も一層暗いものへと変わる。思わず手の上に置かれたリヴァイの手を、ぎゅっと握り返した。
でも…待ってほしい。巨人は、壁の外からやってくる。南の方から。それは全ての巨人がそうだ。調査兵団の壁外調査で、それは昔から変わらない、事実だ。なら…壁の向こうから来る巨人も、元は人間だというのなら───
「…!!」
「なぁ…エルヴィン。…エルヴィ、……お前…何を…笑ってやがる。」
団長が、キラキラと子供のように目を輝かせている。それを見て思わず立ち上がりそうになるが、体が動かず、ただ大きな物音を立てただけだった。
「あぁ…なんでもないさ。」
「…気持ちの悪い奴め…。」
「…子供の頃から、よくそう言われたよ。」
団長の、子供の頃からの夢。人には言えない、巨人の謎を解明するという夢。そのひとつが、たった今、僅かにだが叶った。その瞬間に立ち会えた事が何よりも嬉しくて、上がりそうになる口角を隠そうと震える手で口元を隠した。
ごめんなさい、コニー。あなたの村の住民が巨人にされたというのは、本当に胸を痛めている。それは本当の本当。でも、エルヴィン団長の子供の頃からの夢が今、ひとつ叶った。それとこれとは、別。だから…それを喜ぶ事を、今は目を瞑っていてほしい。
「てめぇが…てめぇらが調査兵団やってる本当の理由はそれか?」
「…勘弁しろ、リヴァイ。腕を食われ、心身ともに疲れきっていて、かわいそうだと思わないのか?」
「は…、らしいな。」
もしかしたら、リヴァイは幻滅しただろうか。エルヴィン団長とともに私も喜んでいる事は、きっとリヴァイにはバレた事だろう。あの言いようだと、エルヴィン団長はリヴァイにも、夢の話はしていないみたいだ。
以降の真面目な話は、ほとんど頭に入ってはこなかった。覚えているのは、エレンがどこかの山奥で秘密裏に硬質化の実験をしているという事と、リヴァイが新しく班を組んだ事。新しい班といっても、104期生を集めた班だが。
「リヴァイ、ごめんね。」
「あ?」
カラカラと、車椅子の車輪が回る音が響く。自力で何もできない私が、エルヴィン団長の部屋に1人留まる事はできなかった。この車椅子すら、私は今、満足に進められない。
ガラ、と勢いよく開けられた扉の向こうは、私の病室。ここに来るまでのたった10mを、私は今、歩いて移動できない。
「…リヴァイや、みんなと、志が違くて。」
「……。」
「私はね、エルヴィン団長の夢を叶えるために、そばにいるの。何もなかった私を救ってくれた、エルヴィン団長のために生きる。それが、私が調査兵団にい続ける理由。」
「…別に、俺はお前が何を目指していようが、関係ねぇ。誰のために生きようがな。だが…お前がエルヴィンのために生きるように、俺もお前のために生きている。…せっかくの機会だからな。教えといてやるよ。」
車椅子からベッドへ移すため、リヴァイが私の体を抱き上げる。そしてギッと音を立てて、私の体はベッドへと収まった。
…初めて聞く話だった。リヴァイも…私と同じ?そんな、まさか、とは思ったが、今までの彼の行動を鑑みるに、十分に有り得そうな事ばかりだ。
彼はエルヴィン団長の指示ではなく、私の指示に従う。私がリヴァイと班が別れれば、エルヴィン団長に直談判しようとした。そしてエレン奪還作戦の時は、ひとり内地に置いていかれ、私が無事なのか分からず不安な時間を過ごした。だからこうして生きて帰ってきた私を、こんなにも献身的に労わってくれている。
「安心しろ。下心はねぇよ。…少なくとも、エルヴィンが生きている今はな。万が一アイツが死ぬ事になれば、どうなるか分からん。」
「…それは、エルヴィン団長がご存命の今、言うべきじゃないよ。」
「そうか。これからは気をつける。」
…気まずい。愛の告白に近しい言葉を告げられ、こんな状況だというのに変に意識してしまう。リヴァイとは、こういう空気になりたくないのに。
「お前の対人格闘訓練…とうとうできなかったな。」
「え?あぁ…そうだね。」
「お前は、万が一の時、ちゃんと人を殺せるのか?」
とんでもない話題転換。不自然なほどに切られた舵に、一瞬振り落とされそうになった。あんな話をした直後にする話ではないと思うが、相手がリヴァイなのでもう、諦めた方が良い。
「…エルヴィン団長が、それを望むのなら。今回の作戦で、これから人を殺さなきゃいけない事になるって、痛感したしね。…やらなきゃならないなら、やるよ。」
「…なら、良い。お前が死ねば、エルヴィンも悲しむ。エルヴィンを悲しませるのは、お前も本意じゃねぇだろ?」
「…確かに。リヴァイも悲しむしね。」
「あぁ…お前が死んだら、悲しみのあまりエルヴィンを殺すだろうな。」
「えっ!?なんで!?」
「…さぁな。いつか教えてやるよ。」
なんて怖い事を言うんだ!
いつもみたいに「…冗談だ」と言うと思ったのに、言わないって事は冗談じゃない、という事…!?顔を青ざめさせる私を見てリヴァイはなぜか楽しそうに口角を上げていて、今回ばかりは憎たらしいどころか、結構ムカついた。