845年~851年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「………リヴァイ…?」
久しぶりに外の情報が目から入ってきて、頭が回転を始めるまでボーッと白い壁を見つめた。やっと頭が回り始めると視界の端に黒い影がある事に気がつき、自然と目がそちらに向くと、見覚えのある横顔がそこにはあった。リヴァイだった。目を閉じて静かに椅子に座っていたが、私がその名前を呼ぶと静かに瞼を開け、グレーの瞳がこちらに向いた。
「ユニ…目が覚めたか。」
「……ん…。団長、は…。」
「生きてる。だが、まだ目を覚まさねぇ。面会謝絶だ。」
「……生きてるなら…よかった……。」
怪我の具合はどうだとか、目覚めない可能性はないのかだとか色々聞きたかったが、聞く気力はなかった。今はとにかく、生きているのが分かればいい。彼が生きてさえいてくれれば、私は生きていけるから。
「…飲め。」
コポコポという水音のあと、そう言って差し出される水。ベッドから起き上がろうとする私の体をリヴァイは何も言わず支え、ゆっくり時間をかけて私が飲み干したコップを受け取り、静かにサイドテーブルに置いた。
「……疲れた…。…お腹すいた…。」
「腹が空いてるなら、心配ねぇな。」
「うん。」
会話をする気力はないが、リヴァイがそばにいてくれて、嬉しい。それにとても安心する。
寝返りを打つと窓の外はよく晴れていて、綺麗な青空が広がっている。
「私の、立体機動装置は…。」
「あぁ…ボロボロだったからな。今、修理に出している。新品だと使い勝手が変わっちまうからな…俺の判断でそうした。」
「ん、…ありがと…。」
ありがたい。リヴァイは私の事を、よく分かっている。もう一度水を飲もうかとサイドテーブルに視線を移すと、シンプルな花瓶に花が活けられているのに気がついた。一体、誰が…そして、この花は…?こんな星型のような特徴的な白い花は、見た事がない。思わずジッと見つめていると、やがてリヴァイが口を開いた。
「アングレカム……というらしい。俺も、初めて見た。」
「……もしかして、リヴァイが?」
他の人が持ってきた花なら、そんな変わった名前、覚えていないだろう。それを忘れずにいるなんて、自分が選んだからなのではないか…と思ったのだが、リヴァイは、何も答えず視線を逸らした。
「…ふふ…嬉しい…。」
「おい。俺とは言ってねぇだろ。」
「うん。…でも、嬉しいの。…ふふ。」
あのリヴァイが、花を…。そんなの、嬉しいに決まってる。残念ながらこの世界には、花をそのまま保存できる技術は、現状、ない。だからこの珍しくて綺麗な花を目で見て楽しむ事ができるのは、今だけだ。
嬉しくて自然と笑顔が戻ってきて、ようやく少し、会話する気力が出てきた。
「私の怪我…どんな感じなの?」
「肋が2本、折れている。お前…落ちてくるエルヴィンを受け止めた上に落馬したらしいな。無茶しやがって。」
「あぁ…うん。団長を失うわけには、いかなかったからね。」
「…だが、お前が体を張ってがんばった事で、エルヴィンは生きている。…よくやった。」
「……本当…無茶したなぁ…。私も、エルヴィン団長も…。う…痛……。」
胸だけじゃなく、両腕も痛む。それも、ものすごく。それを伝えるとすぐさまお医者さんを呼んでくれて、その場で色々と検査を受けた。その結果伝えられたのは、肋2本の骨折に、全身筋肉痛。そして両腕はエルヴィン団長を受け止めた際にかなりの負荷がかかり、特に筋肉の損傷が激しく、完全に回復するまで1ヶ月ほどかかってしまうらしい。肋の骨折も同様に、1ヶ月程は痛みが続くと。
「少なくとも1ヶ月は…立体機動装置を使えないのね…。」
「どっちみち、お前の立体機動装置は修理に出してんだ。大人しく療養するんだな。」
そぉっと膝の上に置かれた、トレー。その上にはスープが入ったお皿と、スプーンが置かれている。
「…いただきます…、…ん、…ッく…!」
お腹も空いているし暖かいうちに…とスプーンを取ろうと腕を動かしたのだが、プルプルどころかブルブルと腕が震え、なかなかスプーンまで手が辿り着かない。左手で右手を抑えてもその左手も震えているので、結果は同じだった。
「…仕方ねぇな。」
仕方ない。そう言ってリヴァイはいとも容易く私の膝の上からトレーを奪いスプーンを掴み、スープを掬った。そして徐ろにこちらへと差し出して「食え」と。あのリヴァイが、あのリヴァイ兵士長が、食べさせてくれるなんて。
それだけでも意外だったのに、口を開くと食べやすいようスプーンを傾け、そして口から引き抜いた。次の一口のタイミングもちょうどよく、なんというか、人に食べさせるのが上手だ。
「早く治せ。その体じゃ、紅茶を淹れられねぇだろ。」
「ん…。ねぇ、リヴァイが淹れた紅茶が飲みたい。」
「…仕方ねぇな。…食い終わってからな。」
「ふふ、やった。嬉しい。」
リヴァイが、優しい。怪我人を相手にしているのだから当たり前かもしれないが、なんだか以前にも増して特に、雰囲気が丸くなった気がする。それはきっと、気のせいではない。
それから、リヴァイは毎日私のところへやってきた。彼も怪我をしていて、特にする事がないのだろう。彼は毎日1人でここへ来て、話をし、一緒に紅茶を飲み、私に食事を摂らせ、また話をし、帰っていく。その間誰も面会に来てくれないと思ったら、彼が面会謝絶だと言って誰も近づけさせていないのだと言う。正直、ありがたかった。部下達と話したり、他の分隊長達と仕事の話をする気には、まだなれないから。
そうしてあの日から1週間が過ぎた頃、私とリヴァイのいる病室に知らせが入った。エルヴィン団長が目覚めたと、私にとって何よりも待ち侘びた、知らせが。
「エルヴィン、団長ッ…!!」
「待て。無理に動くんじゃねぇ。おい、車椅子を。」
無理に動くと体が震えて、でも待っていられなくて無理やり体を動かすと、リヴァイに押さえつけられた。そしてすぐに運ばれてきた車椅子に乗せられ、エルヴィン団長のいる病室へと運ばれる。
体が何ともなければ、すぐにでも走って向かったのに。車椅子では遅すぎて、気持ちが逸る。痛みで震えるのとは違う、今度は不安からくる震えで手が震えて、ぎゅっと両手を合わせて握った。