845年~851年
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「…エルヴィン分隊長は、なんのために公に心臓を捧げ、調査兵団に…?」
かなりデリケートな事を聞いてしまっただろうか。エルヴィン分隊長は沈黙し、そしてチラリとこちらを見てそれからようやく、口を開いた。
「私は…巨人とは何なのか。どこから来て何をしようとしているのか。壁の外はどうなっていて、本当に他に人類がいないのか。…私はそれが、どうしても知りたい。それと…昔父が話していた、巨人に関するとある仮説を証明したい。」
今度は、私が口を閉ざす番だった。数秒間そうしてエルヴィン分隊長の言葉を頭の中で反芻してから、口を開いた。
「…少し、意外でした。心臓を捧げる、というので、てっきり調査兵団の方々はみんな、人類を救うために入団したのかと。」
「残念ながら、みんながみんなそうではない。…幻滅したか?」
「幻滅…?何故ですか?」
もうすぐ、森が途切れる。森が途切れる前に、エルヴィン分隊長にこれだけは伝えておきたい。
「私は、何か目標や目的があるみなさんが、羨ましいんです。エルヴィン分隊長だって、巨人の謎の解明という、明確な目的があります。だから、羨ましいです。私には、それがない。ただ、のうのうと生きているだけ。そんなの、死んでいるのと同じです。だから私には、生きている意味がないんです。」
森を抜けた。陽のよく当たる森の外はよく晴れていて、気持ちがいい。幸い、近くに巨人の姿は確認できなかった。その代わりに、調査兵団の制服の集団がこちらへ向かってくるのが視界に映った。
「エルヴィン!ユニ!無事だったか!!」
私達の無事を案ずる声に、手を振って答える。何事もなく隊に戻れた事に、ようやく安堵した。
「…君に何か目的ができれば、それが君の生きる意味になるのか?」
「え?…まぁ、そうですね。」
長く口を閉ざしていたので、さっきの話はもう終わったのだと思っていた。しかし、その間彼は、長考をしていたらしい。
「なら、私の夢を叶える、手助けをしてくれないか?私は既に、君を信頼している。君になら、もし私が志半ばで死んだとしても、私の夢の続きを託せる。いや、託したい。…私の…一方的な願い、だが。」
「……えと…、なんというか、熱烈な愛の告白…みたいですね。」
「あぁ、そうだ。なんせ、あまり人に言えない夢を君に託そうとしているんだからな。」
人に言えない?よく分からないが、言葉を濁した部分が関係しているのだろうか?それか、本質は違うところにあるのかもしれない。私が今ここで頷いたら、いつか彼の口からそれが語られる時が来るのだろうか?
「だからユニ。これからは、私の夢のために生きてくれないか。」
「…っ……!!」
ザァッ──
タイミングよく、爽やかな風が体を撫でた。
ドッドッドッ、と心臓の鼓動が速まり、頭の中が沸騰する感覚。それは久しぶりに感じた、生きている感覚だった。手足が痺れ、指先が震えた。
「…それで…返事は?」
「っ、は、はいっ…!!」
「返事?返事って何?エルヴィン。…ハッ!もしかしてもしかして〜、一夜を共にして愛が芽生えちゃったり〜?」
感動の瞬間を邪魔したのは、ハンジさん。私よりも先輩の、調査兵団の兵士だ。空気を読まずに会話に入ってくるところが、私は苦手だった。今だって、私とエルヴィン分隊長の感動シーンだったのに…!!
「そういうんじゃない。あまり私の部下を、からかわないでくれ。すまないな、ユニ。」
───────────────
そう…、そうだ。私はあの時、エルヴィン団長のために生きると誓った。
無茶はするなというのはエルヴィン団長の教えだが、無茶をしなければ、得られないものもある。そう、例えば、今みたいな…!!
「エルヴィン団長…私は…あなたのために、もう少し生きていたい…。あなたの夢が叶うまで…、それまでは…。」
「…ユニ?」
グググ…と痛む体に鞭を打ち、立ち上がる。立ち上がるとむしろ少し呼吸が楽になり、ゆっくりと深呼吸する。トリガーを握るとプシュ、とガスの音。立体機動装置も、壊れてはいないようだ。
「あの時私に…生きる理由を与えてくれて、ありがとうございます…。…好きです。お慕いしています。」
「…!…ユニ、待て…!!」
アンカーを飛ばし、ワイヤーを巻き取る。
「っ、ユニ!!」
すぐ側の木を経由して巨人の背後に回り込み、巨人の項を落とす。そして次の巨人の足の間を通り脚の筋肉を落としてから、項を削ぎ落とした。
少し先にいる自身の馬を呼ぶとしっかりと駆け寄ってきてくれた。さっきは転倒した衝撃で動けなかっただけで、骨が折れたりはしていないようだ。それは、エルヴィン団長の馬も同様だった。
「あなたは団長を乗せてきて。もう少ししたら、動けると思うから。」
顔をヨシヨシと撫でてそうお願いすると、ブルル、と返事をするように戦慄いて団長の元へとかけていった。エルヴィン団長に似て、賢い子だ。
「…アルミン!ジャン!!」
すぐ側にいた2人。どちらも馬をやられ、ジャンに至っては頭を打ち気を失っている。ジャンを庇う、アルミン。そのアルミンに向かっていく巨人の項を削ぎ、続いてやってきた巨人も、こちらに伸ばした手を刻み頭の上を通り項に到達した。
そうして付近の巨人を1体ずつ処理していくと、やがてエレンの姿を見つけた。彼は装備も何もなしにミカサの前に立ち、巨人に立ち向かおうとしていた。
「エレンッ!!」
「あああああぁぁぁ!!!」
雄叫びを上げて、拳を叩きつけるエレン。無駄な攻撃。そう思われたが、なぜか一斉に、周囲の巨人の様子が変わった。エレンの対峙している巨人に向かって、他の巨人が一斉に向かい始めたのだ。そして、その巨人を食べ始めた。
それを目の当たりにした途端、ドサ、と膝から崩れ落ちる。体に、限界が来た。いや、とっくに限界を超えていた体を無理やり動かしていたのだ。今度はいくら立とうとしても体が震えて、自身の馬も困ったように私の体に顔を擦り付けた。もう指の一本すら、動かせる気がしない。
「はッ…、は…っ…、は……!」
息が上がって、視界がぼやける。呼吸しているつもりが、酸素は頭まで到達していないようだった。
「来るんじゃねぇ!てめぇら!クソ!!ぶっ殺してやる!!」
「この機を逃すな!!撤退せよ!!」
団長…、エルヴィン団長…!!
視界はぼやけるが、聴覚はしっかりとしている。死ぬ気で腕を動かして、手探りで馬の鞍を探しズルズルと這うように体を乗せた。が、このまま馬で帰れるとは、到底思えない。
「ユニ!」
「っは……、団長…?」
「もう少し耐えるんだ。どういうわけか、巨人が全て、鎧の巨人の方へと向かっていく。しばらく経ってもこのままなら、私の馬に移りなさい。」
「団長…、エルヴィン…団長…。」
エルヴィン団長だって、私よりもひどい怪我をしているのに。しかし私は私で今にも気を失いそうだし、そうなれば間違いなく、落馬してしまうだろう。
「全員、少し待て。ユニが限界だ。私の馬に乗り替える。他にも乗り替えるものがいれば、今のうちに。すぐに出発する。」
意識が途切れ途切れになっているうちに団長の背に固定され、再度走り出したところで、完全に意識を失った。
「団長!?聞こえますか団長!?」
馬から降ろされたところで、おそらく目が覚めた。ボーッとしていたら団員の切羽詰まったように団長を呼ぶ声が聞こえて、そこでようやく頭が覚醒した。
「まずいぞ、意識が…!」
「…っ、だ…!!」
ダッと走り出した。はずだった。だけど私の体は限界を超えてボロボロでまともに動かせなくて、団長の元に辿り着く前に地面に倒れた。
「ユニさん…!」
「エルヴィン、団長…っ、団長の、おそばに…!」
泣きながらズリズリと地面を這う姿は、とてもひどいものだっただろう。エルヴィン団長の元へ連れて行ってもらい震える手で彼の手を握ると温かく、胸に触れるとしっかりと、心臓は鼓動していた。
「エルヴィン団長……とても…素敵でした…。リヴァイにも、見せたかったな……。」
瞼が、重い。
しかし、今はもう、抗う理由はない。
とりあえずの脅威は、退けたのだから。
この状況を見たリヴァイは、一体なんと言うだろうかと考えたところで、再び意識は途切れた。今はしばらく、体も頭も休めたい。