845年~851年
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「たまたま生き残っているだけにしては、君の班は君以外が入れ替わっている。壁外調査の際、無意識にでも何か心掛けている事があるのでは?」
偶然通りがかった彼が、興味深そうにそう割り込んできたのが出会い。のちに私の運命を変える人との出会いだった。
「心掛けている事といえば…立体機動装置を誰よりも繊細に扱う事と……常に、冷静でいる事、それと……時に非情になる事…でしょうか?」
「ふむ…。繊細に扱う、とは具体的にどんな風に?」
「えっと…、まず私の立体機動装置は、トリガー部分を分解して、細かく調整しています。技術班の方に相談したら、もっと繊細に調整できると教えて頂いて…。」
「なるほど…。…続けてくれ。」
その辺りで、エルヴィン分隊長は私の向かい側の席に腰掛けた。こんなに自身に興味を持ってもらえるとは思っていなかったため少し口篭ってしまったが、それでもエルヴィン分隊長は、私からの続きの言葉を待った。分隊長を待たせるわけにはいかないと、もう一度頭の中で質問を反芻してから口を開いた。
「立体機動装置のカスタム以外には、ガスの節約と巨人にワイヤーを掴まれるのを防ぐため、アンカーを飛ばす距離も刺している間の時間もなるべく短く、を意識しています。それと巻き取る際もただ速いだけではなく、緩やかに巻き取ったり緩急をつける事で巨人の手から逃れています…。」
「……君は、立体機動が好きなんだな。」
「え?…あぁ、そう、ですね…好きです。」
「もっと君の話が聞きたいんだが、構わないだろうか?」
私の話なんて聞いて、面白いだろうか?しかしこちらに選択権は無い。特にやるべき事も、やりたい事もない私なんて、特に。
エルヴィン分隊長からの質問に答えて、また次の質問…それを繰り返して30分ほど経った頃、自身がエルヴィン分隊長とのこのやり取りを楽しんでいる事に気がついた。久しぶりに、自身の口角が上がっていた事に気がついたのだ。
「君さえ良ければ、私の班に入ってもらえないだろうか?他の班からも声がかかっていると思うが、私自身の目で、君の戦術を確かめたい。」
確かに、いま私の所属している班はルイ班長から声をかけて頂いて入った。だが、それはただ、一番最初に声をかけられたから。私は別に、誰でもよかった。どこでもよかった。だけど、私はそれを今、後悔している。たった30分話しただけで、それも自分の話をしただけだというのに、彼からの引き抜きの言葉は私の胸に沁み、彼に認めてもらえたのだと感じたからだ。
「でも私…今の班にルイ班長からお声がけ頂いて入って…。」
「それに関しては問題ない。君が私の班に入ってくれるというのなら、私から彼に頭を下げよう。それくらい、私は君の事が気に入った。…どうだろうか?」
私のどこに、そんなに気に入るところがあったのだろう。他にお声がけ頂いた班長達はみな「立体機動装置の扱いが上手いから」だとか「訓練兵時代にトップの成績だったから」だとかそういう理由を並べていたが、エルヴィン分隊長はそういうのとは違う。私に、戦闘面での期待をしていない。私はそれがどうしようもなく嬉しくて、エルヴィン分隊長に頭を下げた。
「こちらこそ…私もエルヴィン分隊長の班に入りたいです。…よろしくお願いいたします。」
「そうか…こちらこそよろしく。君が入ってくれて、心強いよ。」
こうして、私は晴れてエルヴィン分隊長の班へと配置換えされた。彼の宣言通り元いた班の班長には頭を下げてくれ、私も一緒になって謝罪した。ルイ班長は怒ってはいなかったが「ユニを死なせんじゃねーぞ、エルヴィン」とエルヴィン分隊長に釘を刺した。エルヴィン分隊長は「もちろんだ」と笑っていたが、もし死んだとしたらそれは私の責任なのに、申し訳ないなと思った。
「ユニ。あと付けで申し訳ないが、私の班に入ったからには、いくつか守ってほしいルールがある。」
「ルールですか?」
「ひとつ目は、常に冷静に周りを見る事。これは、既に君はできている事だろうから、問題ない。ふたつ目は、無理な戦闘は避ける事。巨人を前にしたらまず一度距離を取り他にも巨人がいないか確認し、不利な状況なら仲間の加勢を待つ事。」
エルヴィン分隊長から提示されたのは、現調査兵団の戦い方とは全く異なるもの。目的地までの道中、巨人と遭遇したらまず倒す。これが調査兵団のやり方のはずだ。
「…倒そうとしなくて、良いんですか?」
「君ならできるかもしれないが、無茶した先に待っているのは、死だ。こと壁外調査においてはな。君もそろそろ、分かってきた頃だろう。」
「…分かりました。心に刻みます。」
「そしてみっつ目だが、死ぬな。これだけだ。至極シンプルだが、これが1番難しい。」
「…そうですね。」
「…しかし、これも君には容易い事かもしれないな。」
「え?」
それは一体、どういう事だろうか。私はまだ、エルヴィン分隊長の前で戦った事はない。なんせ彼の班に入ったのは、つい先程の事なのだから。だというのになぜ、そんな事が言えるのだろう。
「まぁ、今に分かるさ。」
そう言って私の頭を撫でるエルヴィン分隊長。男の人に頭を撫でられるのなんて初めてで、思わず頬に火がついたかのように熱くなった。その様子を間近で見たエルヴィン分隊長が「…すまない」と手を離すので、また申し訳なく思った。