845年~851年
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上にいる我々は、ただ待つしかできない。超大型巨人を警戒しながら下にいるエレンの様子を眺める事しか、現状できる事はない。
やがてアルミンの指示に従い壁際へ寄ってきたエレンの巨人にハンジさんが何か耳打ちする様子を見ていたら、エレンの巨人が了解の意を示すために静かに首を縦に振ったのだが……あれ?…ちょっとかわいいかも…。
獰猛な動物が懐いてくれるのに近いだろうか?それか、私は無意識にリヴァイを重ねてしまったのかもしれない。いつも傍若無人に振る舞う彼が、私にだけは懐いて言う事を聞いてくれるような…それに似ている。ハンジさんも「おぉ…」と嬉しさを隠しきれないような表情を浮かべているが、アレとは違う。ハンジさんは巨人と意思の疎通が叶った事に、喜んでいるだけだ。
「エレン…がんばれ…。」
それも相まって、エレンを応援したくなった。
やはり巨人同士の戦いには、非力な人間は参加できない。巨人になれるエレンに頼るしか、私たちに選択肢はない。
固唾を飲んで見守っていると、突然鎧の巨人の膝裏の鎧部分がパリパリと剥がれ落ち、猛スピードで突進してきた。そのスピードは今までのものと比べ物にならないほど速く、その分、衝撃も大きい。
上手く躱してはいたが、このままでは長期戦になる。そして長期戦になれば、エレンの方が不利になってしまうだろう。
「クソッ!なんで急にあんな速く動ける!俺らじゃ何もできねぇのか!!」
「いいや…本当に全身が石像のように硬いのなら、あんな風には動けないはずだ…。昔の戦争で使っていた鎧にも、人体の構造上鉄で覆えない部分がある。脇やまだの部分と…あとは──膝の裏側だ。」
ハンジさんの言葉とほぼ同時に、エレンの絞め技が決まる。相当強く締めているのか、鎧の巨人の体からはピシ、ピキ、とダメージの入る音がここまで届いてくる。
「エレン…!…っエレン!!がんばって!!耐えて!!」
膝の裏の筋肉は、今しがたミカサが断ち切った。こうなってしまえば、エレンの方が有利だ。
「エレーーンっ!!」
バキ、バキ、と、私達の声援に比例して鎧が壊れていく音も大きくなってくる。鎧の巨人は最後の抵抗とてもいうようにエレンの巨人の体を奥へと追いやったが、やがて、それもやめた。
オオオオオオオオ!!
「……っ、これは…、……っ!?待って…、超大型巨人が…!!総員!直ちに退避しろ!!巻き込まれるぞ!!」
聞こえてくるバキバキという音は、今度は鎧の巨人ではなく、超大型巨人から発されていた。視線を超大型巨人へと戻すと未だ高熱を発し続けてはいたが、その細くなった体は重さに耐えきれず崩れ始め、そしてとうとうバキッと音を立てて傾いた。そのまま徐々に重力に倣って壁から落下していく。その、落下地点には───
「ッエレン!!」
落ちていく超大型巨人を追いかけ飛び降りたが、その落ちていく速さに追いつけるわけもなく──
ドォォォオオン!という激しい落下音と共に、体は宙に吹き飛ばされた。
作戦は、失敗した。本当に最悪な日だ…!
落下地点にいたエレンはその衝撃で負傷。唯一耐えられた鎧の巨人に齧り取られ、まんまと逃げられた。私は…何もできなかった。
「馬が無い今、何もできない…!エルヴィン団長の到着まで、今できる事をしよう…!負傷者をここに集め、早急に治療を!!動ける者も、今のうちに休め!!」
やはり私では、役不足だ。これではエルヴィン団長に顔向けできない。私も吹き飛ばされた際に多少の怪我を負ったが、下にいたハンジさんの怪我に比べればとても軽いものだった。ハンジさんはしばらく、体を動かす事はできないだろう。
「ユニ…君も休むんだ…。…それと、エレンを奪われたのは、君のせいじゃない…。」
「…ハンジさん…。…ハンジさんこそ、ちゃんと休んでください。その体を引き摺って、どこに行こうとしているんですか?」
ズリ、ズリ、と這って移動するハンジさん。その姿はまさにナメクジそのもので、そうまでして何かをしようとしているのは想像に容易かった。
「今すぐ…確認に行かなくては…。コニーの村へ…。」
「ダメです。…が、理由くらいは聞きましょう。」
「…動けない巨人…、やっぱり、気になるんだよ…。あの村の住民…死体もなければ、逃げた形跡もないだろ…?もし…、もしもだ…。もし、あの巨人の正体が…元は人間、だったとしたら……。」
「!」
まさか…そんな、事が…。しかし、ありえない事ではない。なんなら、それならあの自立困難な巨人の説明もつく。…ついてしまう。考えたくもない事だが…その仮説を聞いてしまった今、確認に向かわなければならないだろう。とはいえ、全身傷だらけのハンジさんを馬に乗せるわけにはいかない。
「……それなら、モブリットを向かわせますから。これを飲んでいただけなかったら、私は団長代理としての威厳を失ってしまいます…。」
「……はは……、そんなにかわいく言われたら…飲まざるを得ないなぁ…。ねぇユニ。膝枕をしてくれないか…?」
「……仕方ないですね。少しだけ、ですよ?」
諦めたように動きをとめたハンジさんは、私に膝枕を所望した。空気が読めない発言ではあるが、何だかんだいつもハンジさんのこれには助けられている。私の膝に頭を乗せたハンジさんは、ゆっくりと深呼吸した。
「あぁ…君の膝、とても寝心地がいいな…。エルヴィンやリヴァイにも、やってやるのか…?」
「は、…え…?…した事はありませんが…。突然、なんですか?」
「はは…、まさか君、隠しているつもりなのか…?特にエルヴィンと君は、そういう関係だろ?」
隠している、つもりだった。だって普段人のいるところでは、交際していると確信できるような行動はしていないはずだ。そもそもリヴァイとは、そういう関係ではないが。
「君がエルヴィンに向ける好意はみんなも周知しているが、エルヴィンから君への好意だって、なかなかのものだよ。アイツはいつもはぐらかすんだが、君を見る目が優しいったらなんのって。最近は特に、もう隠す気ないんじゃないか?ってレベルだよ。」
「そう……ですか…。」
「それにさ、リヴァイもリヴァイだよ。君に近づこうとするといつも睨みつけてくるんだ。私だけじゃなく、エレンや他の新兵にも。君のそばにはいつもあの2人がいるから、君と話したくても話せないんだよね…。」
「…ハンジさん、私と話したい事なんてあるんですか?」
意外だった。私は分隊長になった時から、ハンジさんとは適切な距離を保って接してきた。私とは波長が合わないのではないかと思ったからだ。一体私と何を話したかったというのだろうか。
「そりゃああるよ!君ってかわいいからさ、どんな事が好きで、暇な時間は何をしてるのかとか、好きなタイプは、とか、色々と興味がある。あの2人が君のどんなところに惹かれたのか…とかね。」
「えぇと…、ありがとうございます…?…ハンジさん、人間にも興味があるんですね。」
「はは…酷いなぁ、ユニ。」
そっと、ハンジさんのゴーグルを外す。これがあっては寝られないと思ったからだ。
「そういうとこだよ。君って本当、気遣いの塊だよなぁ…。あ〜羨ましいなぁ!エルヴィンには勿体ない。私のところに嫁に来てくれないか?」
「……ハンジさんと一緒にいたら疲れそうなので、遠慮いたします。」
「うわ…振られた…。」
「…ふ、…ふふ。」
昔感じた思いはどこへやら。綺麗さっぱり吹き飛んだ。ハンジさんとは面白いと感じるポイントがズレているのだと思っていたが、こうして一対一で話してみると、全然話しやすい。思わず笑みが零れると、それを見たハンジさんも優しく微笑み返してくれる。
「…やっぱりかわいいなぁ、ユニ。」
「ありがとうございます。これから仲良くなりましょう、ハンジさん。」
思えば今まで、同性の友人はいなかった。いや…いたとしても志の違いから自然と疎遠になったり、死という別れが来たりと、長続きした事はなかった。しかしハンジさんとは、これから仲良くなれる気がしてきた。仲良くなるのに、早いも遅いもきっとない。
「…おやすみなさい、ハンジさん。」