845年~851年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
…状況は、最悪だ。本当にウォールローゼ内に巨人はいた。それはミケさんからの知らせで事前に分かっていた事だったが、エレンと同じように、巨人になれる人間がいた。名は、ユミルというらしい。彼女も104期生で、どういうわけか敵ではない、らしい。同じく104期生のクリスタ・レンズ──本名はヒストリア・レイス─がそう主張しているだけだが、実際他の巨人から104期生達を守ったのは、事実らしいのだ。
「とりあえず、トロスト区まで運んでまともな医療を受けてもらわないとね。任せたよ。」
「了解です。」
「さて…我々は、穴を塞ぎに来たんだった…。」
穴を塞ぎに来た。ハンジさんの考えでは、女型の巨人のようにエレンの巨人も硬質化が可能ならば、その硬化の能力で壁に開いた穴を塞げるのでは…というものであった。それができるのなら、やった方がいい。今すぐにでも。しかし、私には気がかりな事があった。
「…ハンジさん。エレンに穴を塞いでもらうのは、私も賛成です。できる事ならすぐにでも、実行したい。しかし─」
「…君の言いたい事は分かるよ、ユニ。エレンを休ませろって言いたいんだろう?」
「……エレンは、つい最近まで巨人化するのも一苦労だったんです。ここで無茶しては、"彼ら"がエレンを奪おうと向かってきた時、後遺症のあるエレンでは巨人の力で対抗できません。」
硬化の能力は、少し練習したらできるとかそういうものではないのではないだろうか。それならアニは、硬化の訓練をほとんどしていなかった事になる。
「かと言って、やらないわけにもいかないだろう。私だって本当は、休ませてやりたいよ。」
「………。それは…、そうですよね…。」
悔しくて、奥歯を噛む。エレンは連日、巨人の力を使いすぎた。働きすぎだ。せめてメンタルの回復を…とエレンを探すと、同期達と話をしているようだった。
「エレン。あなた、寝ていないでしょう?疲れているだろうから、少し横になったら?横になるだけでも、疲れは取れるから。」
「いや…俺だけが休むわけには…。」
「何言ってるの。エレンにはまだまだ働いてもらわないと困るんだから。なんなら、膝枕してあげようか?」
「いっ、いや…!結構です…!」
冗談なのに。エレンも、ミカサも。
膝枕はしないが、マントを畳み壁の上─地面に敷いてやるとおずおずといった様子でそこに頭を乗せた。立体機動装置は一旦外して、すぐ側へ追いやった。
「エレンは、本当によくがんばってるね。重い期待を背負わせちゃって、ごめんね。」
ヨシヨシと頭を撫でると、エルヴィン団長やリヴァイの髪の毛とは違う触り心地で何というか…犬みたいだと思った。サラサラとしているがエルヴィン団長のより硬く、リヴァイのより潤いや艶が少ない。本当、犬みたいでかわいい。だからつい、犬をかわいがるみたいに頭を撫でた。
「いえ…。俺だって、誰かがこんな力を持っていたら期待しますよ。むしろ…何で俺なんでしょうか?俺はこの力を有効に使えているのか、自信がありません。」
「あははっ、そんなの、当たり前じゃない。前例がないんだから。正しい使い方なんて、誰も分からないよ。…あぁでも、もしかしたらエルヴィン団長なら、分かるかもね。」
「エルヴィン団長…。団長の頭の良さが、羨ましいです。俺もあの人の1割でも、考えられる頭があれば…。」
「エレンはエレンのままで、大丈夫だよ。完璧な人なんていないんだから。だから人は、助け合って生きていくの。」
「ユニさんのその考え方…素敵ですね…。」
エレンの瞼が閉じられたところで、そっと額に手を当てる。そうしている内に呼吸は段々と落ち着き、一定のリズムを刻むようになった。…相当疲れが溜まっていたのだろう。
「…エレンに触っちゃって、ごめんねミカサ。今度ミカサにもやり方を教えてあげるから、怒らないで。」
パッと手を上げてミカサを見ると、彼女はものすごい視線で私達を見ていた。その鋭い眼差しは、リヴァイそっくりだ。
「……怒ってません。」
こういうところも、リヴァイそっくり。
一体壁の中で、何が起こっているのか。確かに、ウォールローゼ内に巨人はいた。だというのに、駐屯兵団先遣隊からの報告によると、壁に穴なんて開いていなかったというのだ。いくら考えても分かりそうもない事実に、大して良くない頭が痛み出しそうだ。エルヴィン団長、助けてください。
「壁に穴がないのなら仕方ない。一旦、トロスト区で待機しよう。」
「…壁に穴がないのなら…仕方ないですね。」
すぐ側には、"彼ら"がいる。アルミンの見立てでは、"彼ら"が敵である可能性は高いとの事だ。上手く誘導して地下深くへ幽閉するなんて、口で言うのは簡単だがその上手く、が一番難しいのだ。リヴァイも団長もいない今、私とハンジさんがどうにかしなければならない。
「はぁーーー……」と些か長めのため息を吐いて、エレンを見る。それは何かが気になったからとかではなく、無意識だった。しかし結果的にその行動は、正しかった。
つい先ほど横になったばかりのエレンの体は、起こされていた。ライナー・ブラウンと、ベルトルト・フーバーの2人によって。ミカサもそれに気がつき、注視していた。いつ何が起こっても良いように、と。
「…、ハンジさ〜ん!」
なんでもないような風を装って、ハンジさんへと駆け寄って腰に腕を回す。私は普段、ハンジさん相手にこのような事はしない。だから彼女も何かを察したように「どうしたんだ?ユニ」と私に腕を回し体を近づけた。
「"彼ら"が、エレンに接触しています。何か、行動を起こそうとしているのかも…。」
「…ふむ…。なんだ、腹が減ったのか!携帯食糧で良ければ、私のをあげるよ。」
「良いんですか?助かります!」
エレンは、すぐそこにいる。ミカサだって。
エルヴィン団長もリヴァイもいないが、やらなければやらない。…最悪、人間の姿のまま、2人を殺さなければならない…かも、しれない。
そう思うと胃のあたりがズシッと重くなったような感覚がして、吐き気が込み上げてくる。私は、兵士だ。だが私が殺してきたのは、いつだって巨人だった。
「……。」
それでも、やらなければならない時が来れば、やらなくてはならない。やらなければ、やられるから。
「ライナー…やるんだな!?今…!ここで!」
「あぁ!勝負は今!ここで決める!!」
「…っ!!」
ミカサが、飛び出す。その手に握られたブレードが、ライナーを切りつけ、そしてベルトルトも。無駄のない動きだったが、どちらも一撃では仕留めきれず今まさに、ミカサがトドメを刺そうとベルトルトに跨った。
「エレン!逃げて!!」
総員、エレン目掛けて飛び出した。が、一歩及ばず、彼らは巨人へと姿を変えた。やはり、彼らは巨人だった。私達人類の、敵だった。
ゴォォォオオ!!と猛烈な風が、そばにいた人間達を全員吹き飛ばした。いとも簡単にユミルは奪われ、エレンも鎧の巨人の手中へ。しかし我々はここで2人を、奪われるわけにはいかない…!!
「総員、戦闘用意!!エレンとユミルを守れ!!奪い返す!!」
超大型巨人が、ユミルと1人の兵士を口の中へと放り込んだ。おそらくだが、食ったわけではないだろう。
壁上の固定砲を薙ぎ払った超大型巨人に、一斉に飛びかかる。もう捕らえるなんて、無理だ。仕留めるしかない。
「今だ!!全員で削り取れ!!」
数名の兵士が超大型巨人の項を狙い、ハンジさんの指示で切りかかろうとしたが…奴は体から熱を発し、近付くものを寄せ付けてはくれなかった。このまま近づけば、間違いなく焼け死ぬ。それも、項に到達する前に。
「一旦退け!!」
今は一旦、退くしかない。
「また消えるつもりか!?」
「いえ!様子が変です!以前なら一瞬で消えましたが、今は骨格を保ったまま…蝋燭のように熱を発し続けています。このままあの蒸気で身を守られたら…立体機動の攻撃ができません!ど、どうすれば…!」
「…どうもしない。待つんだ。…ユニ!こっちは君に任せてもいいかい?」
「はい。ハンジさんは、向こうを任せます。…3、4班は目標の背後で待機!2班はここで待機!いずれ中身は出てくる。もう、捕らえるなんて考えるな!中身が出てきたら殺せ!躊躇するな!」
偉そうに指示を出してはいるが、実のところ私自身に言い聞かせていた。まさか巨人を殺すためのこの立体機動装置で、人を殺さなければならない状況に陥るなんて…最悪の気分だ…!!