845年~851年
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気持ちを切り替え、いつもより多めにガスを吹かして急ぎ東へ向かっていると、やがて戦いの様子が見えてきた。遠目で見ても、女型の巨人もエレンも、ボロボロになりながら戦っているのが分かった。
そしてエレンが女型の巨人の項を剥がしたところでようやく、彼らとの合流を果たした。
「エレン!」
私がエレンの巨人の項からエレンを回収したところで、事態は一応、収拾したらしい。私は、ここに来るのが遅れた。もう少し早く来られれば被害を抑えられた…なんて言うつもりはないが、やはりもう少し早く、加勢したかった。
しかし…街の被害は酷いものだが、女型の巨人の本体の捕獲は成功。ただし、敵はどういうわけか硬い水晶体で覆われ、話をするのは不可能、という事だ。それでも、敵を捕える事には成功…したのだ。
「エルヴィン。今作戦について、いくつか疑問がある。」
ストヘス区内の、憲兵団支部。そこで今回の騒動に関する、会議が執り行われた。招集された件については、ひとまず保留。今はその件とは別で、今回の作戦が調査兵団の独断で行われた事に対する、是非を問うものであった。
手錠をされたままだったエルヴィン団長を見て私がひと暴れしたおかげか、会議が始まる前にその手錠は外され団長は晴れて自由の身になった。調査兵団団長に手錠を掛けたナイルはエルヴィン団長の親友だというが…この恨みは、いつか必ず晴らす。こればかりは、団長がなんと言おうとも、だ。
腕を後ろ手で組みながら、会議に参加するナイル・ドークを静かに睨みつけた。
「目標の目星がついていたのなら、なぜ憲兵団に協力を依頼しなかった。」
「それは女型の仲間が、どこに潜んでいるか分からないからです。この最重要任務を遂行するにあたっては、潔白を証明できる者のみで行う必要がありました。」
「壁内に潜伏していた女型の巨人…アニ・レオンハートを特定した事は評価する。」
思わず、ピクリ、と反応してしまう。そして視線をナイル・ドークから、今発言した男へと移動させた。"評価する"?今この男は、"評価する"と言ったのか?エルヴィン団長に向かって?評価とは、上の者が下の者を見定めるために使う言葉だ。なぜコイツは当たり前のようにエルヴィン団長を下に見ているんだ…!と、フツフツと心の中で怒りが湧いてきた。が、口を挟むのは得策ではない。いま私が口を挟めば、エルヴィン団長に迷惑がかかってしまう。ただでさえこの会議の前に騒ぎを起こしたのだし…。チラリとエルヴィン団長の横顔を見て怒りの感情を押し殺し、静かに拳を握った。
「しかし…それによって区が受けた被害についてはどうお考えか?」
「被害は出さぬよう挑みましたが、住民の財産や尊い命を失わせる結果になってしまいました。我々の実力が至らなかったためです。深く…陳謝します。その一方で…奴らを逃がし壁が破壊されれば、被害はこれだけでは済まなかった…。そういう天秤を踏まえて実行に移したのも、事実です。」
「人類の終焉を阻止できたとの確証はあるのか?アニ・レオンハートからは、何も聞き出せてはいないのだろう?」
「…彼女は現在、地下深くに収容されています。全身を強固な水晶体で覆われているため、情報を引き出す事は不可能です。」
「つまり…無駄骨なのか?」
コイツは…頭が悪いのか?エルヴィン団長に責任を負わせる事ばかりに思考を使っているのか、ただ単純に頭が悪いのか。考えるのはエルヴィン団長。やるのは調査兵団。失敗すれば責任は団長へと押し付けるし、成功しても啖呵をきったのだから、当たり前。
…本当、嫌になる。エルヴィン団長の置かれている、全ての状況が。この意味のない会議の最初から現在に至るまで、全てが私を苛立たせる。
「奴らの1人を拘束しただけでも、価値があると思います。そう…奴らは必ずいるのです。1人残らず追い詰めましょう。壁の中に潜む敵を、すべて…。」
シン、と部屋の中が静まり返ったところで、話は終わり。こちらの「…もう宜しいですか?」という問いかけに返事もないので、終わりで良いだろう。
「団長、帰りましょう。…お怪我はされていませんか?」
「あぁ…問題ない。」
「!…赤くなっているじゃないですか…。帰ったら、すぐ手当てしましょう。…では、失礼します。」
こんな部屋、一刻も早く出なくては。一応丁寧にドアは閉め、先を歩くエルヴィン団長へと駆け寄った。
「エルヴィン団長…とても…とても素敵でしたが…ヒヤヒヤしました…。本当に、死んでも良いとお考えで…?」
「…そうだな。しかし、あれはそもそも、君に焚き付けられたんだ。私からしてみれば、君の行動の方が見ていて肝を冷やしたよ。銃を持った相手に真正面から立ち向かうなんてな。君こそ、死んでもいいと思ってたのか?」
「エルヴィン団長を…守れるのなら。…でも…本当に危険だったら、リヴァイが止めてくれると信じてました。彼なら、怪我をしていようともあの場を制圧できると…。」
「はは、違いない。」
リヴァイを信じたのは、確かだ。しかし…リヴァイなしであの場面に陥ったとしても、私はきっと、同じ行動を取っただろう。自身が撃たれる事になるかもしれないが、あのまま黙って従うわけにはいかなかった。そう思ったら無意識に、手が昔の古傷に伸びた。
「しかし…、憲兵に向かって"無能"とはな。…っはは…!」
「!!だ、だって、話が通じないから…!…でも確かに、少々口が悪かったですね。それに、エルヴィン団長のご友人に…。…すみません。以後、気をつけます。」
「いや、君の新しい一面が見られて嬉しいよ。それにスカッとした。リヴァイの影響か?また機会があれば、見たいものだ。」
「…やめてください…エルヴィン団長の前であんなの…。…お恥ずかしい限りです…。」
エルヴィン団長は楽しそうに笑っているが、あんな姿、もう二度とエルヴィン団長には見られたくない…!いやでも、エルヴィン団長のこの笑顔が見られるのなら…!?い、いや…やっぱ無理!!
調査兵団本部へ戻ったら戻ったでリヴァイに「よう…"無能"達との話し合いは終わったか?」と掘り返され、いたたまれなくなってしまった。私はただ、団長を守りたかっただけなのに…!
なぜ、こんな事に。
先ほどまでの和やかな雰囲気などお構いなしに、我々が調査兵団本部へ戻ってきてからまもなく、早馬が最悪の状況を伝えにやってきた。
我々が王都へ招集されると共に監視下に置かれた、104期生。彼らが滞在していた建物から南より、突如として巨人の群れが襲来。おそらく現在は、104期生達は装備も着けぬまま近隣の村の住人の避難誘導にあたっているとの事。つまりは、ウォールローゼが突破された…という事だ。
「ユニ、兵を出せ。すぐに向かうぞ。リヴァイ、お前も来い。」
「…了解した。」
壁を破壊できる超大型巨人と鎧の巨人は、104期生の中にいるはずではなかっただろうか?エルヴィン団長は彼らの中に仲間がいると、そう確信したから隔離したはず。なら、何かエルヴィン団長も予想できなかった、不測の事態が起こっているという事だ。
「総員、出兵準備を!!女型の巨人捕獲作戦が終わったばかりで申し訳ないが、ウォールローゼ内に巨人が出現した!!準備が整い次第、すぐに出発する!!」
私達の安寧を邪魔するのは、いつだって巨人だ。座って紅茶を飲む暇すら与えてくれない巨人が、憎らしく思った。
「ユニ。私は行かなければならないところがある。私の代わりに兵を出してくれ。」
「…それは…。」
「そうだ。団長代理として、現場の指揮を頼む。」
「…、承知しました。」
団長代理として動くのなんて、ずいぶん久しぶりだ。前に団長代理として動いた時は、5年前。初めて壁を破られた時以来だ。エレンが初めて巨人になり駐屯兵団に詰められた時も名乗りはしたが、あれは独断でやったもの。正式に団長代理として動くのなんて久しぶりで……肩に力が入る。
「みんな聞いて!今回は、団長の代わりに私が指揮を取る。ウォールローゼの状況が分からない以上、安全といえるのはエルミハ区まで。そこで、エルヴィン団長の到着までの、時間を稼ぐ。」
「時間を稼ぐって…、エルヴィン団長は、どちらに…?」
「兵を集めに、ちょっとね。とにかく、我々はエルミハ区まで向かう。その先の事は、着いてから考えよう。…行こう!」
エルヴィン団長から、詳細は聞いていない。が、団長自ら兵を募りに行くというのなら、きっと駐屯兵団や憲兵団辺りに向かったのだろう。駐屯兵団はともかく憲兵団に行っても無意味かと思われそうだが…そこはエルヴィン団長の話術に懸かっている。いや、エルヴィン団長なら、案外簡単に了承を得られるかもしれない。彼の言葉には、人を動かす力があるから。