845年~851年
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「…お尻が痛い…。王都へ向かう馬車だというからもう少し快適だと思っていたんだけど…馬に乗ってた方が、よっぽど快適ね。」
「…あぁ…全く、同感だ。」
ガラガラという走行音に、時おりガタン、と大きく揺れる馬車。馬車というものは長い時間乗るには向いていない乗り物なのだと、初めて知った。
「エルヴィン団長はご無事ですか?団長は背が高いので、私よりも窮屈なのでは…。」
「いや…大丈夫だ。ナイル。何か彼女の下に、敷くものを。」
「…そんなものはない。」
「そうか…。では、これで何とか…。」
「だ、団長のジャケットに座るなんて、できません!!我慢します!」
「そうか…。」
完全な彼の厚意なのだろうが、それで私が「ありがとうございます!」と言うと思ったのだろうか?少し残念そうにしているが、まさか、ね…。
「…うるせぇ。」
「うるっ…、リヴァイは、よくこの狭さで脚を組もうと思えるね?」
「あぁ、まぁな。」
リヴァイはリヴァイで、ふてぶてしい。ふてぶてしすぎる。先に団長と私が向かい合って座ったためリヴァイはドカッと私の隣に腰掛けたのだが、着席してすぐ脚を組んで、こうして一番偉そうにしている。向かいに座るエルヴィン団長のご友人、ナイルさんが可哀想だ。
「お前らには、緊張感というものが無いのか?それにせっかく勝ち取ったエレン・イェーガーを引き渡すんだぞ?もっと悲壮感を漂わせているものかと思ったが…。」
「悲壮感…?悲壮感を漂わせていたら、エレンは調査兵団預かりのままにしてくれるんですか?」
「いや…、そういうわけではないが。」
「なら、必要ないと思います。我々は取り返すつもりでいますし。憲兵団がエレンをきちんと管理できるとは到底思えませんから。」
「っ、…なんだと?」
「フッ…、あぁ、すまない。ユニ…君、言う時は言うんだな。」
楽しそうに笑う、エルヴィン団長。私は言いたい事を言っただけなのだが、それを聞いた団長はなぜだか楽しそうだ。
「感情が含む話をする時は、声に出して話す事で冷静になれますから。それに、言わずに後悔するより言って後悔する方がマシだと、最近気づきました。」
「なるほど…私も、参考にしよう。」
「えっ、あの…!団長という立場ですし、あまり無闇矢鱈に言いたい事を言うのは…!」
それを言うなら私も団長補佐という立場なのだが、私にはエルヴィン団長がついているからできているだけで…!
「君は今日も、可憐でかわいらしいな。その服装も、とても似合っている。」
「あっ…、えっ…!?あ…、あああああのっ!!」
なぜ、今、こんなところで。私の隣にはリヴァイがいるし、斜め向かいには団長のご友人だっている。そんな状況でこんなにストレートに褒められては、どんな顔をしていいのか反応に困る!
「えぇと…、ありがとう、ございます…。団長も、いつも通りとても素敵です。」
「はは、ありがとう。」
もう…好き…。…それしかない。
「…この狭い空間で、いちゃついてんじゃねぇよ。気色悪い…。」
「気色悪いまで言わなくても…!…あ。リヴァイも…そのスーツ、よく似合ってるよ。いつもより知的な雰囲気で、いいじゃない。」
「あ?てめぇ、殺すぞ。」
「なんで?」
リヴァイも褒められたいのかと思ってそうしたのに。殺す、はさすがに酷くないか?
「…お喋りはここまでのようだな。ここから、中央憲兵の馬車に乗り換えてもらう。」
緩やかに止まる馬車。久しぶりに地面に足を着けられる…と体が歓喜した。曲がった腰を伸ばしている間に先に降りたエルヴィン団長が、スッと左手を差し出してきて、私には彼が王子様に見えた。だがしかし、馬車から降りる度にこれをやられていては心臓が持たない。次からは団長よりも先に降りよう…と心に誓った。
「次の馬車に乗るまで、休憩させてくれませんか?10分…いや、5分で良い。」
「お前らは…招集されている身なんだぞ?緊張感を持て。」
ドォォォォオオン──
「!?何だ…!?」
「この音は、巨人化の…。それにあの蒸気は…。」
「あぁ。巨人から出る蒸気だな。」
エレンが突然巨人化するわけがないので、どうやら女型の巨人が出現したらしい。地下通路に誘導するという作戦は、とりあえず失敗したようだ。こうなれば、次の作戦に移行するしかない。
「ナイル…すぐに全兵を派兵しろ。巨人が出現したと考えるべきだ。」
「な…何を言ってる!ここはウォールシーナだぞ!!巨人なんかが現れるわけない!!」
「…憲兵団の方々は、エレンみたいに巨人になれる人間がウォールシーナ内にいる想定は、していないのですか?これじゃ、余計に信用なりませんね。」
向こうの方では、既に次の作戦が始まっているはず。
ガタッ、
「っ待て!動くな、イェーガー!」
「変装ごっこはもう、終わりだ…!」
「…あぁッ…!?」
もう1台の馬車から飛び出してくる、ジャン。本人達は替え玉作戦を無理だと言い張っていたが、周りが大丈夫だと押し通した。だが、私も無茶だと思っていた。だって、似てないから。それでもここまでこうしてやってこられたのだから、似ている…という事?いや、憲兵がエレンの顔をちゃんと覚えていなかっただけだろう。
「団長!俺も行きます!」
「装備は第4班から受け取れ。」
「了解!」
「威勢がいいのはいいが、死なねぇ工夫は忘れるなよ。」
「はいっ!」
何が何だか分からないといった様子で、憲兵は我々調査兵を見送る。その狼狽えっぷりを見て、本当に我々と同じ兵士なのかと疑いたくなる。
「団長!ユニさん!これを!」
「あぁ、ありがとう。」
私と団長、2人分の立体機動装置が届けられる。それを迅速かつ丁寧に装備して、数回ガスを吹かした。
「団長、いつでも行けます。」
「よし。…動ける者は全員続け!女型捕獲班に合流する!」
「エルヴィン…、待てッ…!!」
「!!」
エルヴィン団長へと向けられる、銃口。それを視界に捉えるのとほぼ同時に、反射的にそれを阻止するよう、超硬質ブレードを抜いた。そして団長と憲兵であるナイル・ドークの持つ銃の間に、体を割り込ませた。
「貴様のやっている事は…王政に対する明らかな反逆行為だ!!」
「今すぐ…その銃を下ろしなさい。今は、そんな事をしている暇はないの。」
「ナイル…てめぇの脳みそは、その薄ら髭みてぇにスカスカか?何が起きてるのか分からねぇらしいな。」
「ッ…、装備を外せ!エルヴィン!!」
…完全に、思考が停止している。今優先すべきはエルヴィン団長ではなく、ウォールシーナ内の安全だ。どうやらそれが分からないらしい。私達は、こんなところでこんなくだらない足止めを食らっている暇はないというのに。
「ナイルさん…分かりませんか?さっきの音は、巨人が出現した音ですよ。巨人になれる人間が、巨人化した音。エレン以外にそういう人間がいたって、何もおかしい事じゃない。たとえそれが、ウォールシーナ内にいたって。その人類にとってのの脅威が、いるんですよ。今、すぐそこに。それでもなお、こうして睨み合うつもりですか?こうしている間にも、その巨人はたくさん、人を殺しているのに。…憲兵団はずいぶんと酷い事をなさるんですね。我々調査兵団は民を守ろうとこうして立体機動装置を装備しているのに、それを外せだなんて。」
言いながら、一歩、また一歩と前に出ていく。こちらに向けられた、銃口に向かって。ここまで近づけば必要ないと判断し、ブレードは鞘に収納した。
「く…来るな!止まれ!!」
「止まって何になるんです?本当に私を止めたいなら、その引き金に指をかけて、引けばいい。そうなれば、私はその銃弾を受け足を止めるでしょうね。いいですよ、私は。あなたの言う通り巨人がいないというのなら、私達は確かに、反逆行為を犯しているのでしょう。ほら、使い方くらい分かりますよね?引き金を引く、その覚悟がないなら…!」
ガッ、と銃口を掴み、照準をずらす。ここまで近づけば、後ろにいる憲兵だって無闇に撃てないはずだ。私の目の前には、無能だろうがなんだろうが、ナイル・ドーク師団長がいるのだから。
「早く住民を避難させろ!!それくらいならできるだろ!!この、無能が!!」
ドォォォォオオン!
なんてタイミングの、轟音。今のはきっと、エレンの巨人化の音だ。何があったのかは知らないが、エレンは巨人化するのを躊躇した。だから時間が開いてしまったのだ。これでは、調査兵も少なからず命を落とした事だろう。
「巨人同士が戦っているだと…!」
「はいッ…、街の被害は、想像を絶するかと…。住民、兵士共に、多数の死傷者が出ています…!」
「ッ…!っ、エルヴィン!全て貴様の作戦が招いた事か!!」
「そうだ。全て私の独断専行だ。弁解するつもりはない。」
キッパリと、エルヴィン団長はそう断言する。ナイルはそれを聞き、その団長の元につかつかと歩み寄り胸倉を掴んだ。
「街中でそんな作戦を決行すれば、どんな事態になるか分かっていたはず…!なぜだ…なぜそんな事ができた!?」
「あなたは、中途半端な人ですね。民を守りたいという気持ちは、確かにあるのでしょう。しかしエルヴィン団長のように…犠牲を伴った先にある未来を見る力はない。民を守りたい…その気持ちだけじゃ、私達人類の住むこの街は守れませんよ。」
パシ、とナイルの手を掴む。私の力では到底敵わないが、2人の間に無理やり、体を割り込ませた。
「……人類の、勝利のためだ。」
「ッふざけるな!貴様は反逆者だ!今すぐこの場で処刑しても、上も文句は言わんだろう!」
「構わない。だが、あとの指揮も頼むぞ。」
「っ!エルヴィン団長!」
「絶対に女型を逃がすな。兵の展開はペール。補給はバイラーが担当だ。ユニを伴い彼らと連携し、東の壁際に何としても女型を追い込むんだ。」
「まッ、待て!!…お前、本当に…これが、人類の、ためだと…。」
「その一歩になると信じている。」
とうとうナイルさんは言葉をなくし、その手を離した。全く…聞いているこっちがヒヤヒヤした。
「全員、銃を下ろせ!奴には手錠を!」
「…は……、はぁ!?」
安心したのもつかの間。ナイルは次に、あろう事かエルヴィン団長に手錠をかけると言い出した。
「全兵を現場に派遣し、住民の避難、救助を最優先で行え!!……エルヴィン…貴様の処刑は、正当な裁きの場で決めてもらおう…。」
「待っ…、ふざけるな!!」
「ユニ。…全てが終われば、喜んで。…リヴァイ、お前は動くな。無駄死には嫌いだろう。」
「あぁ…嫌いだ。するのもさせるのもな。」
「ユニ。こうなった以上、君だけでも現場に合流してくれ。頼んだぞ。」
「団長…!…っ、〜〜〜ッ、承知しました…!っナイル・ドーク!!…この恨みは…いつか必ず…!!」
団長にそう言われてしまえば、諦めるしかない。このような決断したナイルをひと睨みしてから、アンカーを飛ばして東の壁を目指した。