845年~851年
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「ど、どうしよう!エルヴィン団長!」
「なんだ、どうしたんだ、ユニ。」
朝。いつもだったら考えられない、少し乱雑なノックで団長室のドアを叩いた。私の焦りようが伝わったのかすぐに扉は開かれ、私はサッとドアの中に体を滑り込ませた。
「団長…!シャツが…入らなくて…!!」
入っては、いる。一応。しかし数年前に着ていたシャツは確かに私のシャツなのに、ボタンがギリギリ止まるかどうかの瀬戸際。つまりは、太ったのだ。最近リヴァイに痩せすぎだと言われ食べるようにしてはいるが、もう何年もワイシャツを着ていなかったため自分のサイズが変わっている事に全く気が付かなかった。今日はこれから王都へ向かわなくてはならないというのに…これは、由々しき事態、そして、緊急事態である。
「ユニ…着替えなさい。誰かに借りるでもいいし、最悪いつもの服でいい。これで外に出るのは、あまりにも…。」
「うっ…!でもみんな、私よりだいぶ背が高くて…、サイズが…、…ハッ!リヴァイ…!!」
「っ待ちなさい!その姿で彷徨くんじゃない!」
バサッ、と肩に掛けられる、大きいジャケット。エルヴィン団長のものだ。袖を通すと上半身はすっぽりと隠れ、パツパツのボタンの閉まりきらないシャツは隠された。
「団長の匂いがする…。」
「…ユニ。」
「あっ!ご、ごめんなさい!行ってきます!」
リヴァイは、快く貸してくれるだろうか?貸してくれなかったら、困る。ハンジさんやミカサも私よりも背が高いし、クリスタ…は逆に小さそうだ。やはりリヴァイが貸してくれないと、困る!
コンコン、と先ほど団長の部屋を叩いたのとは大違いの、静かなノックの音。あんなに大きな音を立ててしまうと、「うるせぇ」と機嫌を損ねてしまう可能性があったため、極力静かに叩いた。
「…誰だ。」
「私…ユニです。」
「…入れ。」
入室の許可。静かにドアを開け中を覗くと、リヴァイの部屋らしく綺麗に整理整頓されていた。思い返してみれば、リヴァイの部屋に入るのは初めてかもしれない。後ろ手でドアを閉めてリヴァイの姿を探すと、恐らく寝室の方から彼は出てきた。
「朝から何の用だ。…いや、その前になんだ、その格好は。」
「えぇと、緊急事態でね。リヴァイ、ワイシャツ貸してくれない?」
「あ?」
案の定、眉間の皺が深く刻まれる。しかし、ここで怯むわけには…諦めるわけにはいかないのだ!
「昔着てたシャツがね、入らなくなっちゃったの…!特に最近はいっぱい食べるようにしてるから…。だからね、お願い!リヴァイのワイシャツ、貸して欲しいの!」
「……今、着てんのか?」
「?…あぁ、小さいやつ?うん、そう。エルヴィン団長に見せたら、すぐ着替えなさいって。」
「だろうな。ちょっと待ってろ。」
これは…意外にすんなり貸してもらえるみたいだ。時間も時間なので、助かった。少し待ってようやく戻ってきたリヴァイが「ほらよ」と投げて寄こしたのは、皺ひとつない真っ白なワイシャツ。だけど新品というわけでもなく、リヴァイの匂いがする。
「ありがとう、リヴァイ!」
「構わん。が、シミひとつでもつけてみろ。ただじゃおかねぇからな。」
「はぁい。じゃ、あとでね。」
リヴァイと体型が近くて、助かった。彼は逆に嫌かもしれないが。部屋へ戻りエルヴィン団長のジャケットをハンガーに掛けてシャツを着替えると、やはりぴったりサイズで。これからもサイズで困ったら相談させてもらおうと、失礼な事を考えた。
コンコン、
「エルヴィン団長、ユニです。」
「あぁ、どうぞ。」
今度は落ち着いて、ノックできた。いつもの日常である。
「ジャケット、ありがとうございました。無事リヴァイから借りられて、何とかなりそうです。」
「それは良かった。あれでは少々…な。…しかしシャツを着ると首元が寂しいな。私ので良ければ、着けると良い。」
「えっ?い、良いんですか?」
「あぁ、構わないよ。」
団長がクローゼットから持ってきたのは、ジュエリーボックスのようなケース。中には団長がいつも着けているループタイや、リヴァイが着けているようなクラバットがたくさん入っていた。こ、これが、紳士の嗜み…!
「リボンでもあれば、君に似合うのだろうが…あいにく、そのようなものは今はなくてね。」
「いえ…私が事前に準備していなかったので…。あ。これをお借りしてもいいですか?」
「あぁ、いいよ。」
数あるループタイの中でも、一際明るくて、キラキラしたもの。エルヴィン団長が着けているところはまだ見た事がないそれは、エルヴィン団長の瞳の色によく似ていた。
「私が着けてあげよう。一度、シャツの襟を上げて。」
「あっ、はい!」
わざわざ着けてくれるなんて…!襟を立てて少し待つと、ゆっくりとループタイが通され、襟を直される。その際にエルヴィン団長の指が首や頬に当たって、少し擽ったい。
「…ふむ、よく似合っている。それは私には少し派手だから、良かったら君にあげよう。」
「えっ!?良いんですか!?」
お下がりだろうがなんだろうが、エルヴィン団長からの贈り物。そんなの嬉しくないわけがない。
「あぁ、私はもう、使わないからな。…フッ…、そんなに素直に喜んでくれて、私も嬉しいよ。」
「嬉しいに決まってます!…ありがとうございます…。宝物にしますね…。」
「……、…ユニ。」
優しい声色で、私を呼ぶエルヴィン団長。ドキリとして見上げると愛おしそうな顔でこちらを見下ろしていて、そしてゆっくりと近づいてきた。
今日はこれから王都に招集…それに加えて女型の巨人の本体の捕獲の任務があるというのに、こんなに幸せで良いのだろうか…?
そんな考えが頭をよぎったが、目の前にある幸せを易々と見逃せるはずもなく…ありがたく、その幸せに身を委ねた。