845年~851年
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ヒュ、ガキン、ガキン──
辺りに、何度も何度もそんな音が響く。目の前にはワイヤーが何十本も突き刺さった、女型の巨人。その項はご丁寧に自身の両手でガッチリと隠している。しかし…普通に覆っているだけならば、超硬質ブレードで簡単に切り落とせる。それができないのは、奴の手がビキビキと音を立て硬質な皮膚で覆われてしまう事にあった。
ヒュ、と体を動かす事のできない、敵の頭に降り立つ。リヴァイとミケさんがブレードで攻撃した意味は、一応ある。硬質な皮膚の表面は一部粉々になり、パラパラと零れ落ちている。攻撃が通じていないというわけではないのだ。
「肩の筋肉を削ぎ落とし、腕を下げさせましょうか?」
「いや、時間が惜しい。」
次の作戦を思いついたのか、団長がサッと手を上げ、団員に何やら指示を出す。が、ここからではどんな指示かは分からなかった。
スタッ、と隣に誰かが降り立つ気配がして見てみると、リヴァイが顰めっ面で女型の巨人を見下ろしていた。
「オイ…いい加減、出てきてくれないか?こっちはそんなに、暇じゃないんだが。」
隣に立つリヴァイは、私ではなく女型の巨人本体に向かって語りかけた。外からがダメなら、中から…という事だろうか。
「なぁ…お前はこれから、どうなると思う?お前はこの状況から抜け出す事ができると思うか?こっちの迷惑も少しは考えて欲しいもんだ。お前を引きずり出す方法を考えては試しを繰り返すんだぞ。」
あぁ、違う。リヴァイはただ、文句を言いに来ただけだ。それと脅しも少々。このどうにもならない状況に、イラついているらしい。
「お前は確か色々なやり方で俺の部下を殺していたが…あれは楽しかったりするのか?俺は今、楽しいぞ。なぁ…?お前もそうだろ?お前なら、俺を理解してくれるだろ?」
楽しいのは本当だろう。だってリヴァイは楽しい時、口数が増えるから。しかしその理由が理由だけに、人としてどうかと思う。
「そうだ、ひとつ聞きたい事があった。お前の手足は切断しても大丈夫か?また生えてくるんだろ?お前自身の本体の方だ。死なれたら困るからな。」
「!っ、リヴァ──」
きぃやぁぁあああ!!
思わず、耳を塞いだ。私だけでなく、隣に立つリヴァイも、他の団員も、全員。音響弾なんか比にならないくらい耳を劈くような高音は、女型の巨人から発されたもの。
ようやく収まったかと思い両手を離すと少しフラついて、ガシッとリヴァイに手首を掴まれた。
「てめぇ…びっくりしたじゃねぇか…。」
「エルヴィン!匂うぞ!」
「!」
ミケさんの言葉を聞き、一目散にエルヴィン団長の元へ飛ぶ。
「方角は?」
「全方位から多数!同時に!」
「!…発破用意を急げ!」
「エルヴィン!先に東から来る!すぐそこだ!」
「荷馬車護衛班!迎え撃て!!」
巨人が多数、こちらに向かってくる。タイミング的に女型の巨人が叫んだ事と何か関係がありそうだが、そんな事、私がいくら考えたって分からない。今はただ、エルヴィン団長の指示に従うのが最優先だ。
「!?無視だと…奇行種なのか…!?っ、3体突破します!」
東から来た巨人の群れ、3体。荷馬車護衛班が交戦を試みるも、まっすぐ女型の巨人に向かって進み続けるため取りこぼした。エルヴィン団長の指示は、迎え撃て、だった。ならあの巨人達は、倒さなくては…!
「エルヴィン団長!あの巨人達は、私が倒します!次のご指示を!」
パシッ、ギュィィイイ──
ザッ、ザシュッ!
背の高い2体を倒したが、2、3m級の巨人1体が女型の巨人に辿り着き、足に噛み付いた。誤ってワイヤーを切ってしまわぬよう注意しながら、残った1体の項も切り落とした。
「全方位から巨人出現!全員戦闘開始!!女型の巨人を死守せよ!!」
女型の巨人の周囲には、全方位から一斉に巨人が集まってきている。上に逃げるしかないと、女型の巨人の顔めがけてアンカーを刺し一度上空へ飛んでから、体勢を立て直した。このままでは、作戦は失敗してしまう。エルヴィン団長も自ら戦闘に参加している。
「っクソ…!」
女型の巨人に群がっているので、項ががら空き。処理はし易い。しかし切っても切っても、無限に巨人が増える。それに巨人の発する蒸気によって、どんどん視界が悪くなる。それに処理が間に合わず、女型の巨人はどんどん、その体を減らしていっている。
「全員、一時退避!!」
「!」
声を頼りにエルヴィン団長のいる方向へと進むと、彼はいた。彼は既に、今作戦の失敗を受け入れているようだった。
「やられたよ。」
「!エルヴィン団長…。」
「…何て面だ、てめぇ…そりゃあ。」
「敵には、全てを捨て去る覚悟があったという事だ。まさか…自分ごと巨人に食わせて、情報を抹消させてしまうとは…。」
なんて、嬉しそうな顔をするのだろう。作戦が失敗したというのに、次の瞬間にはもう、頭を切り替えている。団長の中では、既に次の作戦に気持ちが切り替わっているのかもしれない。なら、私もそれについて行く。
「総員撤退!巨人達が女型の巨人の残骸に集中している内に馬に移れ!カラネス区へ帰還せよ!!」
「…団長、私の馬はどこに?それと、私は帰還の際もエルヴィン団長の班にいても良いのでしょうか?」
「……君は、リヴァイと共に行きなさい。」
「エレンの護衛、ですか?」
敵が巨人に食われた今、エレンの護衛が必要なのだろうか?エルヴィン団長の判断なのだから異議はないが、なぜなのか、その理由が知りたい。
「あぁ。…それと、万が一に備えガスと刃の補充を。」
「!…敵が、まだ生きているとお考えですか?」
そんなまさか…とは思ったが、エルヴィン団長は、敵がまだ生きている可能性を追っているようだ。確かに、可能性が僅かでもあるなら、用心するに越したことはない。
「…もしかしたら、な。…君の馬は、ここから50m先だ。…リヴァイ。君も、ガスと刃の補充を。」
「時間が惜しい。十分足りると思うが…なぜだ。」
「命令だ。従え。」
通りがかったリヴァイにも、装備の補充するよう指示。なぜ、と聞かれて命令だなんて、私に対する態度とは大違いだ。
言われたリヴァイは団長から視線を逸らしジッとこちらを見るので一度頷くと「…了解だ。お前の判断を信じよう」と大人しく踵を返した。
「ではエルヴィン団長。ご無事で。」
リヴァイの後を追う形で、補給班の元へと急いだ。ただでさえ撤退するまでの時間は残り少ない。補給作業も、最速で行わなければ。
「リヴァイ。エルヴィン団長が、リヴァイ班と合流しろって。」
「あぁ?あとはただ帰るだけじゃねぇのか?」
「…さっき、女型の巨人から出てきた人が食われているところ、見た?」
「いや…見てねぇな。」
「確実に死んだと確認できていないから、生きているかもしれないと…エルヴィン団長は考えているのかも。」
「…そうか。なら、さっさと行くぞ。」
ブレードを6本、全て新品の物に。ガスは缶ごと綺麗に取り替えた。プシュゥゥウ、とガスを吹かして向かったのは、自身の馬の元。リヴァイの馬はリヴァイ班が連れているはずだと、私の上を立体機動装置で移動しながら、彼らを探した。