845年~851年
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ついに迎えた、第57回壁外調査、当日。
表向きは、カラネス区からシガンシナ区までの新ルートの開拓のための調査。
真の目的は、104期卒業生の中に潜む敵を誘き出し、捕らえる事。
この1ヶ月で、巨人捕獲装置の開発・製作は無事間に合わせる事ができた。
例の資金調達のためのパーティーで、思いの他出資してくれるとい声を上げた貴族が多かったためだ。
その巨人捕獲装置を携えた、今回の壁外調査。
初めての壁外調査に緊張している新兵。生きて帰ってくるだけだと普段よりもリラックスした様子の兵士。真の目的のため、若い兵士に悟られぬよう表面上は穏やかな表情を浮かべる、上官たち。
様々な思いを胸に、私達は今日、壁外調査へと赴く。
「これより、第57回壁外調査を開始する!前進せよ!!」
ゴゴゴゴ…と重い音を響かせて開かれた門から、一斉に馬が駆け出す。ここを潜れば、向こうは巨人のテリトリーだ。
「左前方、10m級接近!!」
チラ、と左側に現れた巨人を見、後方を確認する。援護班の支援は十分に間に合う。その事を確認し、馬を降りる事なく進み続けた。
そうして道なりに進んでいくと、やがて市街地を抜けた。ある程度進み後方も開けたところまで到達したところで、団長の合図で長距離索敵陣形が展開される。
「長距離索敵陣形!展開!!」
四方八方にみなが散っていくのを、静かに眺めた。私は今回、次列中央・指揮。エルヴィン団長の班に組み込まれている。本当に、光栄な事に。
どれくらい走っただろうか。陣形が展開されてからそんなに時間が経たぬうちに、右側でいくつか、赤い煙弾が打ち上げられたのを確認した。それを見たエルヴィン団長が「ユニ、進路を左へ」と言うので、慌てて緑の煙弾を装填し左上空へと打ち上げた。
「エルヴィン団長…。これは本来、団長が打つべきでは…?」
「そうだな。フッ…、君が珍しく、緊張しているようだったからな。」
「き、緊張しますよ!そりゃ!だってエルヴィン団長の班なんて…5年振りなんですから!!」
そう、5年振り。私が分隊長へ昇格してから、当時分隊長だったエルヴィン団長の班に入れるわけもなく…現在へと至る。その前の壁外調査ではフラゴン班に異動になってしまったし、もう長い事エルヴィン団長の元で動いていなかった。そりゃ、肩に力も入る。
「!…右翼側、大丈夫でしょうか?」
「奇行種か…今はまだ、様子を見よう。」
右翼側の遠くの方に、黒の煙弾。まだ遠いが、あの煙弾の下では誰かが戦っている。倒せているのなら良い。しかしあちら側にまた、黒い煙弾が上がる事があれば…。いや、エルヴィン団長の判断を信じよう。そもそもこの長距離索敵陣形だって、生存率100パーセントというわけではないのだから。
「右翼側、黒の煙弾を確認!先ほどよりも近づいています!」
「!…まさか、とうとう…。」
敵が、誘き出されて来たのだろうか?
「団長、私が向かいますか?」
「……いや、まだだ。」
「…承知しました。」
エルヴィン団長の判断は、待機。なら私は、エルヴィン団長の指示に従う。5年もの間分隊長を務め自身が判断し指示をする立場だったというのに、エルヴィン団長の指示は絶対という事だけは、体に染み付いて取れないらしい。
「紫の信煙弾…緊急事態のようですね。…!」
「口頭伝達です!右翼索敵、壊滅的打撃!右翼索敵一部、機能せず!」
「来たか…。…このまま、当初の作戦を遂行する。ユニ、緑の煙弾を。それと、君は口頭伝達を左に。」
とうとう、作戦が開始される。何も知らない団員達には申し訳ないが、もう少し、耐えてほしい。
バシュゥゥゥウウ──
斜め左に打ち上げた、緑の信煙弾。この煙弾に従って進むとまもなく、巨大樹の森へと当たる。作戦決行は、間もなくだ。
「…私は、向かわなくて良いんですよね?エルヴィン団長。」
「あぁ。…すまないな。」
「いえ。」
別に、私が行ってどうにかなるなんて思ってはいない。私が加勢したところで邪魔はできても、きっと倒す事は叶わない。行った先にリヴァイがいるというのなら、行く価値はあるが。
「見えてきた…。巨大樹の森…!」
「ユニ。当初の作戦通り、君は森の入口にて、後方への指示を頼む。我々は先に捕獲地点へと向かう。」
「承知しました!」
「リヴァイ班が捕獲ポイントに入るまで、エレンを守れ。戦わなくて良い。リヴァイがいても、だ。」
「!」
「エレンを守れれば、それで良い。他にも援護班がいるが、助けようとは思うな。今回の敵は、今までの巨人とはわけが違う。」
もう一度、頭の中で本作戦の本質を思い起こす。
私達の目的は、女型の巨人の捕獲。そのためにエレンを囮にして、この巨大樹の森まで誘い込んだ。女型の巨人を捕獲できるのなら、兵士の犠牲はやむを得ない。…しかし、エレンを失うわけにもいかない。私が何をすべきか、頭の中でハッキリと優先順位をつけた。
「…分かりました。」
「よし。君の馬は、私が連れて行く。頼んだぞ、ユニ。」
「はいっ!」
エルヴィン団長の隣へ馬を寄せ、ギリギリの距離で手綱を向こうへと渡した。その際にギュッと強く手を握られたので彼を見ると「死ぬなよ」と強く視線で語られた。…エルヴィン団長にそんな命令されたら、何がなんでも生き残らなきゃ。
「はい。行ってきます。団長も、ご無事で。」
たった数分の別れなのに、今生の別れのような雰囲気だ。でも実際、調査兵団にいる以上いつ死んでもおかしくないのだから、この熱量は間違いではない。
パシュ、と手前の木へアンカーを刺し、馬から飛び降りた。私はここで後方へ速やかに、そして正しく指示を出し、作戦成功へと事を運ばなければならない。
「中列のみ、最高速度のまま森の中へ直進!!エルヴィン団長と合流し、指示に従う事!!他の者は立体機動に移り、森へ入る巨人を食い止めろ!!」
「え…!?今、我々は…どうなっているんですか!?撤退しないんですか…!?…ユニさん!」
「これはエルヴィン団長の指示。作戦遂行のため、団長の指示に従え。……っと、ごめんごめん。エルヴィン団長の指示だから、ちゃんと従ってね。」
つい肩に力が入りすぎて、団員に対し厳しい口調になってしまった。慌てて言い直したのだが、時既に遅し。それはそれはキレのいい敬礼をし、自分の班員にそれを伝えに行った。まぁ、分かってくれたのなら、いいか。
「繰り返す!中列のみ、最高速度のまま森の中へ直進!!エルヴィン団長と合流し、指示に従う事!!他の者は立体機動に移り、森へ入る巨人を食い止めろ!!」
声を張り上げて何度かそう繰り返していると、森の入口には続々と団員達が集まってきた。それに引き寄せられるように下の方には巨人も群れを成しこちらを見あげていて、正直気持ち悪い。
「…リヴァイ班。」
遠くの方に、リヴァイ班の姿が確認できた。サッサッ、と作戦続行のサインを送ると、リヴァイが了解のサインを返す。
彼らが森の中へと入ったのを確認してから、私も立体機動で森の中へ入り、その身を隠した。
───来た。
ズシンズシンと、聞き慣れた巨人の足音が近づいている。森の中でこの速度で走れているという事は、木々の間を今日に縫って走っているという事だ。つまりは、エレンのように巨人になれる人間が本当にいたという事になる。それを予め予想していたエルヴィン団長の頭の良さが恐ろしい。
足音の進行方向には、リヴァイ班がいる。既にブレードを装填済の立体機動のグリップを、ぎゅ、と握り直した。
私のやるべき事は、敵の巨人を捕獲ポイントに誘導しながらエレンを守る事。
「!」
ザッ、と風が木々を揺らした音の直後、視界に女性の体つきの巨人が入ってくる。リヴァイ班との距離は20mほど。このままだとすぐに追いつかれる。しかしリヴァイ班の面々はリヴァイの指示で馬のスピードを上げ、その間隔をキープした。なんなら、少しづつではあるが離れていっているように見える。
数人が援護と称して飛び出していくも、無惨にも次々と、それも虫を手で払うように殺していく様は、さすがに鳥肌が立った。しかし、私がエルヴィン団長に託されたのは、女型の巨人を捕獲するため、エレンを守れ、という事。それが一番大事で、今この瞬間には、それ以外の情報は全てシャットアウトしなければならない。
「っ、エレン!」
「ッ…!ユニさんっ!!」
「前を見て!エレン!!」
木々を薙ぎ倒しながら突進し、エレンに手を伸ばすその指先を、ブレードの刃で切り落とし、瞬時に身を隠す。今の攻撃で、女型の巨人はこちらに意識を向けざるを得なくなっただろう。
「兵長!立体機動に移りましょう!!ユニさんもいるなら、私達でやれます!!」
「兵長!アイツは危険です!俺達でやるべきです!!」
「指示を下さい!」
「このままじゃ追い付かれます!!」
ポイントまでは、もうすぐだ。脅威を前に、リヴァイ班の面々は完全に萎縮してしまっている。これでは、戦闘になったところで勝ち目はない。
「リヴァイ!当初の作戦通りで!!」
それを聞いたリヴァイはすぐさま、音響弾を打ち上げた。
キィィィィイイン───
こうしている間にも、兵士達の命が次々と散っていく。
あわよくば項を削げないかと狙ってはみるが、ブレードの刃が項に到達するよりも前に勘づかれ、その度に距離を取った。そうしている内にリヴァイ班との距離はさらに開いて、もう捕獲ポイントだ。
ザッ──
敵が調査兵団の姿を確認したところで、もう遅い。
「撃て!!」
エルヴィン団長の合図で、罠が発動する。
ここからが、真の作戦の開始だ。