845年~851年
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「……帰るのか?」
「リヴァイ。何?まだ帰ってほしくない?」
話し合いも終わりそろそろ調査兵団本部へ戻ろうかと馬のいる厩舎へと向かう道中、リヴァイに呼び止められる。少しからかってやろうと上記のセリフを言うと、彼は肯定も否定もなくジッとこちらを見つめた。そして──
「…紅茶。」
「……、…良いけどさぁ…素直じゃないよね、リヴァイ。」
言いたいのに、言えない。甘えたいのに、甘えられない。リヴァイの過去を考えると、幼い頃に母親に甘えた経験がないから分からないのだろうとは思う。また、本音を言えるような環境でもなかったはずだ。
リヴァイの母親役をするつもりはないが、彼のこういうところは、多少は付き合ってあげた方が良いのかもしれない。
本人の、精神の安定のために。
「分かった。行こう。」
夜までに出発できれば、私は構わない。ただ単に、私が明日の朝起きるのが辛くなるだけだ。
紅茶を飲んで、話をして。そうしてゆっくり過ごしていたらリヴァイが立体機動訓練をしたいと言うので森へと移動してきた。
それまでリヴァイ班の面々が訓練をしていたのと入れ替わりで森の中へと入ると、懐かしい気持ちが溢れてきた。
「…あの頃のてめぇは…よく、笑っていたな。」
まさかリヴァイも、懐かしさを感じているのだろうか?リヴァイのいうあの頃の私、とは…リヴァイが調査兵団に入団した頃の事だろう。
「…あの時は、まだ分隊長でもなかったしね。上官の指示に従ってさえいれば、あとは好きにできたし。」
「てめぇは上官の指示なんて、聞いていなかったと記憶しているがな。てめぇが聞くのは、エルヴィンの指示だけだろうが。」
「あはは、そうだっけ? 」
「……てめぇが…、この世で一番、信頼しているんだろう?」
少し先の方で、トン、と木に着地する、リヴァイ。その様子がいつもと違って、私もその隣へ緩やかに着地した。
「…そうだよ。…エルヴィン団長は、人類を救える、希望なの。違う意味ではリヴァイも同じだけど…エルヴィン団長がいなければ、それは成しえないと思ってる。エルヴィン団長の指導力、統率力、人望、…それと、人類を救うためなら犠牲をも厭わない、冷酷さ。その全てを兼ね備えてる人なんて、もうきっとこの先、現れないよ。それができる人だから、私は命を預けられる。エルヴィン団長について行けば、私は絶対に後悔しないから。」
「……そうか…。」
「…ねぇ、リヴァイは今、何を迷ってるの?」
遠くを見つめるそのグレーの瞳は、一度私を見、その後伏せられた。こんなリヴァイの姿は、今まで見た事がない。部下の不安要素を取り除くのは、上司の勤め。あのリヴァイがこんな顔をしているのだから、よっぽどの何かがあるはずだ。
「…ハァ…。迷ってるわけじゃねぇよ。…いや、迷ってはいるか…?今からエルヴィンの野郎に、直談判しに行くか行かねぇか…てめぇにかかってるぞ、ユニ。」
「えぇ…。うん…分かった。いいよ。」
「…これはただの確認だが、てめぇは何があってもエルヴィンに着いていく。信じているから従う。間違いねぇな?」
「うん。」
「…なら、俺も信じよう。エルヴィンを信じるというよりも、お前をな。」
「え…?」
「エルヴィンの判断を信じる、お前の判断を信じよう。俺もお前の判断ならば、後悔しねぇ。」
「……リヴァイ、私の事何だと思ってるの…?」
私にとってのエルヴィン団長は、生きるための指標、目的。しかしリヴァイにとっての私は…それとは違うのではないかと思う。
「昔…言ったはずだが。お前は、俺の救いだと。」
「…言ってたね。」
「あの時から…出会った頃から、変わらねぇよ。」
なんと返答して良いのか、私には分からなかった。ただ、嬉しいような、ムズムズするような、切ないような、そんな感情が胸の中に広がった。
「だから直談判には行かねぇでおいてやる。感謝しろ。」
「…ちなみに、何の抗議をしに行くつもりだったの?」
「あ?お前をこっちに戻す話に決まってるだろうが。」
そんな事で、悩んでいたなんて。いや、彼にとっては"そんな事"なんかじゃないのだろうが…彼の中での私という存在がそこまで大きなものになっていたとは思わなかった。確かにリヴァイにしては気にかけてくれている、とは感じていた。だがそれが、団長の取り決めに異を唱えようとするほどのものだとは、知らなかった。思わず感極まって、片腕でリヴァイの背を引き寄せた。
「っ!おい…!」
「ありがとう、リヴァイ…。私もリヴァイを、戦闘面においては一番信頼してる。だからこれからも、背中を預けるね。…次の壁外調査では別の班だけど…それぞれの場所で、信じて戦おう。」
作戦が成功しますように、という想いを込めて、リヴァイの背を擦る。そうしたらリヴァイも私に応えるように数度私の背を撫で、やがて体を離した。
「……帰るのか?」
ここへ来る前と、同じセリフ。しかし先ほどの声色に比べるといくらか軽いものに変わっていた。不安要素がひとつ、取り除かれた事によるものだろう。
「そうだね。エルヴィン団長が待ってるだろうし。…でも安心して。ここへ2、3日に1回来られるよう、団長に相談しようと思ってるから。」
「!…本当か?」
「うん。リヴァイがエレンを虐めないか心配だからね。エレンにも、他の新兵と同じように教育が必要だろうし。だから、大丈夫。」
「……虐めてねぇよ。」
「なら良いけど。じゃあ、そろそろ帰るよ。」
私の返答に満足したらしいリヴァイは、それ以上引き留めては来なかった。こう見えてリヴァイは意外と寂しがり屋らしい。今までこんなに長い期間離れる事はほぼ無かったため、知らなかった事実だ。なんにしても、30すぎにもなる大の大人が情けないのだが…私も私で悪い気はしていないので、始末が悪い。