845年~851年
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ドォォォォオン!
元エルヴィン団長の部屋で十分に仮眠をとりエレンの巨人化実験をしているという地点に馬で向かっていると、そんな衝撃音が耳に飛び込んできた。きっとエレンが巨人になったのだと馬を急がせると何やら様子がおかしく、右腕のみ巨人化したエレンの姿と、その傍らに立つリヴァイが班員にブレードを向けられているところであった。
「兵長!エレンから離れて下さい!近すぎます!」
「いいや、離れるべきはお前らの方だ。下がれ。」
「なぜです!?」
「俺の勘だ。」
「あなた達…、エレンが巨人化できる事は、最初から分かってたはずでしょう?何をそんなに狼狽えてるの?」
ストッ、と馬を下り、近くにいたエルドにその手綱を託した。巨人化したエレンが怖いというのなら、私が、エレンは脅威ではないと証明すれば良い。
「ユニさん!離れて下さい!」
「いいや、離れない。エレン、ちょっと失礼するよ。」
エレンの肩を借りて巨人になり損なった体を靴で踏み登ってみると、僅かに温かさが伝わってくる。筋肉が剥き出しな分、とても高温なようだった。
「わ…すごい…。ねぇ、この状態って、自分の意思で動かせるの?」
「エレぇン!!その腕触っていいぃぃぃ!?ねぇ!?いいよねぇ!?いいんでしょ!?触るだけだから!!」
「…ハンジさん。」
…邪魔が入った。戸惑うリヴァイ班の面々を押しのけて入ってきたのは、ハンジさん。この空気をものともせず自分を貫き通すその姿勢には、毎度感服する。
許可も得ずに表面に触れるものだから、ジュゥゥゥウ、と肌を焼かれてもなお喜ぶ姿には、正直引いた。
「ねぇ!?エレンは熱くないの!?その右手の繋ぎ目、どうなってんの!?すごい見たい!」
繋ぎ目は…同化している、とは少し違う。しかし別々のものとも言い難い。繋がっている、が正しいだろうか?
私がそうしている間にエレンは腕を引っこ抜こうともがき、やがてブチブチ!という音を立てて後ろにひっくり返った。…エレンの肩に手を置いていた、私とともに。
「いっ…た…、くない…。リヴァイ!」
あのままいけば、後頭部を地面に強打していたはず。それを阻止したのは、他でもないリヴァイであった。ご丁寧に一緒に落ちてきたエレンは受け止める事はせず、1人地面に転がっている。
「おい…危ねぇだろうが、エレン。」
「っ…、す、すみません…。」
「リヴァイ。エレンだって気が動転してるんだから、責めないであげて。大丈夫?エレン。」
「はい…。」
体を起こしたエレンを抱き起こし、背中を摩る。
みんな、エレンがまだ15歳の少年であるという事を忘れてやしないだろうか。兵士になったからといって、精神が急に大人になるわけではない。エレンが巨人になれるからといって、何をしてもいいわけではない。みんながみんな、焦りすぎだ。
「…この後は、1度旧本部に戻る事になるよね?リヴァイ。」
「…だろうな。おい、クソメガネ。」
クソメガネ、って……もしかして、ハンジさんの事を言ってる…?人を呼んでいるとは到底思えない呼び方だが、呼ばれた方も呼ばれた方で全く気にしていない様子で、意味が分からない。うーん、当人達が気にしていないなら、良いのか…?
「ユニ。てめぇの言った通り、旧本部で待機だ。お前らも、戻るぞ。」
よくよく考えてみれば、リヴァイは私を"てめぇ"と呼ぶし、私もそれを良しとしているから別にそこまで気にしなくとも良いのかもしれない。…エルヴィン団長の事を"野郎"と言うのは、とても許されたものじゃないが。
「みんなにお話があります。」
そう言って講堂に集めたのは、リヴァイ班の面々。元、私の班だ。リヴァイがエレンと地下にいる間に話しておかなければならないと、全員を集めた。そうして話し始めたのは、先ほどの事。
「みんな、さっきの狼狽えっぷりには正直、がっかりだよ。まだエレンと信頼関係を築けていないのは分かるけど、それにしたって全員、余裕が無さすぎる。」
「しかし…、エレンが勝手に、許可なく巨人化を…!」
「…みんなはエレンが、いつでも好きな時に巨人化ができると思ってたの?なら、午前中にでも巨人化できてたよ。でも、できなかったんでしょう?エレンのあの能力は、みんなが思ってるよりも確実性のあるものじゃないよ。…現状はね。」
エレン自身、手のひらを噛む事で巨人になれる…という事しか分かっていないはず。前に巨人化した時と、今。何かがたまたま共通して、たまたま巨人になれただけなのだと思う。
「それと…エレンはまだ、15歳の新兵。巨人になれるのだって、つい最近まで本人も知らなかったの。だからエレン自身も戸惑ってる最中なの。そんな男の子に"あれしろ"、"これしろ"なんて、酷だと思わない?…あなた達は先輩なんだから、先輩の威厳を見せて。しっかりしなさい!」
「…はい…。」
「…とはいえ…警戒心が強い事はいい事だから、みんな上手くバランスを取ってね。」
少し強く言い過ぎただろうか。しかし、全員にきちんと、自覚してほしかった。
こんな環境に身を置いて、エレンはさぞ肩身が狭かっただろうと思うから。
「ユニ、話は終わったかい?なら、2人を呼んできてくれ。」
「分かりました。」
ハンジさんからの指示で部屋を出、扉を閉める間際、班員達が腰を上げ何か話し始めるのが少し聞こえたが、それがエレンの話である事が分かったので、そのまま扉を閉じた。
やはり根はいい子達だから、話せば分かってくれるのだ。
しかし、彼らの班長は別だ。我が強くて、それを押し通そうとするのは彼の悪い癖だ。それも兵士長という肩書きがある分、タチが悪い。
まぁ彼も正しいと思った事をする奴だし、いい方に作用する事も多いのでそれは信用している。…口より先に、手が出ていなければいいのだが。
「エ〜〜レン!体調は大丈夫?」
「ユニさん!はい、だいぶ回復しました。」
「巨人化すると、体力を消耗するのかな?無理しないでね。」
ぺた、とおでこを触ると、少し熱かった。しかしエレンは元々体温が高いのかもしれないし熱いといっても熱があるというほどではないので、その点は心配いらないのかも。
パシ、とエレンの体温を確かめる私の手を取ったのは、リヴァイ。少しの間掴まれ、やがて離されたが…一体、なんだというのだろうか。
「じゃ、行こうかエレン。ハンジさんが呼んでる。」
「あぁ…、はい。」
本来の目的を果たすべく、エレンの背を押し地上階へ向かう階段へと誘導すると、その手もパシッ、と払い除けられた。昨日の夜払い除けられた時よりも弱い力ではあったが、意図が分からず思わず眉間に皺が寄る。
「ねぇ、何?いくら長い付き合いだからって、言ってくれなきゃ分からないんだけど。」
「てめぇは……頭が悪ィのか?…なぁ、エレンよ…。俺はコイツに、今すぐ話さなきゃならねぇ事がある。」
「はいっ!」
「ここを進んだ先にある扉が見えるか?」
「はい!見えます!」
「ここからあそこまで、10mもねぇ。1人で行けるな?万が一の時には俺がお前を拘束するが、そんな事はしねぇよな?」
「は…はい!もちろんです!」
「なら、1人で先に行け。俺とユニは、10秒後に行く。いいな、10秒だ。中の奴らにも、そう伝えておけ。」
「はいっ…!!」
エレン…完全に怯えているじゃないか。扉の向こうに消えていくエレンを見送っていると「エレンに、ベタベタ触るんじゃねぇ」と一言。
……え?それだけ?
そう思いジッとリヴァイを見つめると、とうとう彼はため息をひとつ吐いた。
「エレンはガキだが、男だろうが。他の男にベタベタ触れていたら、エルヴィンの野郎も気が気じゃねぇと思うが。」
「!…団長…。」
エルヴィン団長は時たま、ヤキモチを妬いてくれる。エレンに触れていたら、エルヴィン団長はヤキモチを妬くだろうか…?彼は大人だから、私が子供のエレンに触れていても特に何も感じないとは思うが……可能性があるなら、控えた方が得策か。
「ん…、分かったよ。」
「…チッ。」
こちらが考えを改めたのに舌打ちするなんて、私はリヴァイが分からない。