845年~851年
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ユニ。君に頼りきりで申し訳ないのだが…これから調査兵団旧本部へと赴き、リヴァイに今回の作戦を伝えてきてはくれないだろうか?戻るのはいつでも構わない。明日は休暇をあげるから、ゆっくりしてきなさい。」
エルヴィン団長の頼みなら、なんでもします!と調査兵団本部を飛び出し、早馬を走らせ旧本部へ。到着した頃にはもう夜になってはいたが、まだ中には灯りが点っていた。厩舎に馬を繋ぎ旧本部へと足を踏み入れると、中は古くなってはいたが当時のまま残されていた。
「…ユニ、か…?…来たなら来たと、早く報告しろ。」
気配を殺したリヴァイが暗闇から静かに現れるので、思わずビクリと肩が跳ねた。外部からの侵入者を警戒しての行動なのだろうが、心臓に悪いのでやめてほしい。本当に。
「ごめん。当面の食料と水、それとリヴァイのために紅茶の茶葉をいくつか見繕って来たの。」
「ほぅ…気が利くな。」
とりあえず手に持っていた紙袋をリヴァイへと手渡すと、僅かに口角を上げ喜んだ…ように見える。しかし、それはついでだ。
「それと、次の壁外調査について、エルヴィン団長から色々と聞いてきたの。みんなに会う前に、リヴァイとだけ会えて良かった。」
「…班員の前では、できねぇ話か?」
「そうね…。とにかく、どこかの部屋で話しましょう。」
「…昔の、エルヴィンの部屋が空いているが。」
「えっ…!まさか、掃除してくれたの…!?」
「てめぇが来たら、この部屋を使いたがるだろうと思ってな。ここに人を寄越すならてめぇか、ハンジしかいねぇだろう、と。」
なんて粋な計らい!!リヴァイありがと〜!と叫び出したくなったが、今はまだ私がここにいる事が他の者に悟られるのは避けたい。喉まで出かかった感謝の言葉を、一旦飲み込んだ。
「おい…てめぇの名前がねぇじゃねぇか…。」
「ふっふっふ……いい所に気づいたね。ここを見たまえ、リヴァイくんよ。」
エルヴィン団長がまだ分隊長だった頃に使っていた、彼の部屋。そこのデスクの上に陣形表を広げると、リヴァイはまず自身の班がどこに配置されているのかの確認をした。そうして自分の名を見つけると同時に私の名がそこに記されていない事に気が付き、彼は眉間に皺を寄せた。そう来ると思ったとばかりに上がる口角をおさえることもせず、次列中央・指揮を指差すと、リヴァイの眉間の皺はより一層深くなった。
「エルヴィンの野郎…!」
「野郎とか言わない!リヴァイもそろそろ自分の班を持つべきだと、団長がそう判断したのよ。」
「……。…作戦を聞こう。話はそれからだ。」
誰がどう見ても、不満げ。子供かと言いたくなる程に不機嫌さを隠そうともしないリヴァイは、少しかわいい。それこそ、猫みたいに。その黒猫にエルヴィン団長から聞いた裏切り者捕獲作戦の概要を漏らさぬよう事細かに話すと、今度はまた違う意味で眉間の皺が濃くなっていった。
「この調査兵団に…裏切り者だと…?」
「エルヴィン団長は、ほぼ確実にいると、考えているみたい。」
「……それで、てめぇはそれで納得してるのか?」
「え?…納得もなにも、私は団長の作戦通りに事が運ぶなら、団長の指示に従うよ。異論はない。」
「…そうかよ。」
月明かりに照らされて、一瞬リヴァイの瞳がキラリと光ったように見えたのは、見間違いだろうか。未だ不機嫌さは隠せていないが、伝える事は伝えた。
私から受け継いだ現リヴァイ班の面々も、しばらくリヴァイが姿を見せていなければ何かあったのではと心配するだろう。彼らにはまた別に、表向きの作戦を伝えなければならないと、机の上に広げた地図や陣形表を丁寧に畳んだ。
「俺は…てめぇとやるのが一番楽なんだがな…。」
ボソリと呟かれたリヴァイの言葉は、静かな部屋ではしっかりと聞き取れた。彼を見るとそっぽを向いてはいるが、こちらを気にしているのが見て取れる。
「……私も、リヴァイと壁外を飛び回るの、好きだよ。」
「…そうか…。…なら良い。」
お互いいい歳で、それも彼は私よりも2つ年上なはずなのだが…素直になりきれない自身の部下がかわいいと、思ってしまった。
「みんな〜!数日ぶりだね!エレンも、審議所ぶり!」
「ユニさん!いらしてたんですね!」
元気よく講堂へと入っていくと、蝋燭の灯りだけでは少し薄暗かったが全員が揃っていて、私とリヴァイを見るやいなや一斉に立ち上がりワッと集まってきた。まるで人気者にでもなった気分である。
「ごめんねみんな。リヴァイを借りてたよ。馬から食料を下ろすの、1人じゃ大変でさ。」
「そんな…!我々に言ってくれれば、お手伝いしましたのに!」
「確かに…。ちょうどリヴァイがいたから頼んじゃったけど、みんなにお願いすれば良かったね。兵士長自ら荷降ろしなんて、面目丸潰れだね。」
「てめぇ…死にてぇのか。」
「リヴァイ。団員の前で団長補佐に手を上げるのは、如何なものかと思うよ。」
ギリ、とリヴァイの手が私の頭を掴む。エルヴィン団長のよりも小さいリヴァイの手は、たぶんだけど私のよりは大きい。つまりは、普通に痛い。
「さ、そんな事より。エルヴィン団長から陣形表を預かってきたから、みんな次の壁外調査の話をしよう。こんな夜更けに、ごめんね。」
「いえ!お願いします!」
この班の子達は、みんないい子達だ。実力があるだけでなく、人柄も良い。さすが、私が選んだだけあるメンバーだ。…今はもうみんな、リヴァイの班になってしまったが。
時折質疑応答も混じえて今回の壁外調査の目的を話し終えると、もういい時間になっていた。エレンを始めとした班員全員、リヴァイの厳しい訓練を受けているはず。そろそろ休まないと明日のエレンの巨人化実験に支障が出てしまうかもしれないと、キリのいいところでお開きにした。
「今日は解散!」と解散の合図をし片付けをしていると講堂に残ったのは2人。リヴァイと、エレンだった。どちらも何か話したそうにしているが、口は開かない。うーん、困った。
「2人とも、寝ないの?」
「あ…はい。ユニさんと少し、話がしたくて…。」
「私と?…そう。…リヴァイは?」
「……紅茶。」
「…ここは喫茶店じゃないんですが?」
全く、言葉足らずにも程がある。素直に私が淹れた紅茶が飲みたいと言えばいいものを。思わず小さくため息が漏れた。
「エレン、少し待ってて。今リヴァイに紅茶を淹れるから、その後で良ければ少し外に行こう。」
「あ、はい。」
手のかかる部下を持つと、苦労が絶えない。リヴァイだって自身で紅茶を淹れるのはとても上手なはずなのに、わざわざ私に淹れさせようとする辺り甘え方が壊滅的に下手というか…それでも、かわいいとは思うのだが。私ももう少しリヴァイのように立ち振る舞ったら、エルヴィン団長にもっとかわいがってもらえたりするのだろうか?いや、無理。どう考えたって、私が無理だった。やっぱナシ!
いつもの手順で紅茶を淹れリヴァイの前へ出すと何も言わずカップを持ち口をつけ「うん…悪くない」とだけ。
リヴァイはリヴァイで、私は私でいいや。