845年~851年
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「エルヴィン団長、お呼びですか?」
「あぁユニ。ご苦労。こちらへ。」
団長から直々の呼び出し。それも、長くこの調査兵団へ身を置いている者だけに限って。団長の隣に立たされたが、私にも何の話をするのかは聞かされていない。呼び出した全員が団長室へ集まったのを確認してから、ようやくエルヴィン団長は口を開いた。
「次の、1ヶ月後に予定している壁外調査についてだが。」
あぁ、なんだ、壁外調査についての話か、と思った。しかし続いた話は予想もしていなかったもので、私の頭では到底、理解が追いつかなかった。
「この調査兵団内に、敵が潜んでいる。壁を壊した奴か、或いはまた他の、巨人になれる人間が。」
「えっ…!?…それは、なぜ…!?」
「我々が捉えた2体の巨人を、覚えているか?」
「え、えぇ。ソニーとビーンと名付けられた、2体の被検体ですね?何者かに殺されたその2体が、何か…?」
あの時のハンジさんの荒れようといったら、目も当てられなかった。声を上げて涙を流していて、私には到底理解のできない感情だった。しかし、それがなんだと言うのだろう。
「その2体をやったのも、奴らの仕業だ。…恐らくな。そして私が104期生訓練兵達の勧誘のために行った演説。そこで私は、エレンの生家であるシガンシナ区の地下室に、巨人に関する謎が隠されていると公表した。」
「まさか…誘き出したっていうのか!?」
「そうだ。次の第57回壁外調査では、その敵の捕獲を目標とする。…無論、ここにいる者のみで行う事にはなるが。表向きは、新ルート開発のための遠征。行って帰ってくれば良いだけの、新兵のための遠征とする。」
「そんな、事って…。」
「これから、真の作戦の会議を行う。ユニ。君にはその間、兵団内の管理を任せたい。…上官がほぼ全員ここに篭もりきりになってしまうからな…。その代わりに、あとで私から全て説明させてもらう。質問や異議も、全て受け入れる。どうだろうか?」
「団長が、そう仰るなら…。…承知しました。」
団長から告げられたのは、恐らく、真実なのだろう。だからといってすぐに「そうなんですね」と受け入れるには、重すぎる真実。だって104期生の新兵なんて、私は毎日顔を合わせているのに。あの子達の中に敵が紛れているなんて、考えたくもない。
…今日の彼らの訓練が終わっていて、良かった…。
それに、私とリヴァイを分け、私をこちらに残したのもこういう意図があったからのようだ。上官達が席を外している今、兵団内の管理ができるのは現状、私しかいない。これがリヴァイであったなら、逆に問題を起こしていた可能性もゼロじゃない。…悲しい事に。
「こらそこ!何を争ってるの!?」
「ユニさん!コイツが、俺が隠していた酒を勝手に飲んだんですよ!」
「だ〜から、飲んでねぇって!」
「いや酒くさっ!!有罪!」
「ユニさーん!今日の夕食で使う食材が、まだ届かないんですが…。」
「え、まだ?なら、馬を向かわせよう。昨日は雨だったから、荷馬車の車輪が泥濘に嵌って動けないのかも。」
「なるほど!用意して、すぐに向かいます!」
「あっ、ユニさん!」
すぐこれだ。調査兵団は変わった人間が多い。故に、小さなトラブルは日常茶飯事。タイミングが悪いと、今みたいに立て続けに問題が発生する。今は考え事をしたくないから、とても助かった。
コンコン、
「どうぞ。」
先ほどハンジさんがやってきて、作戦会議が終わったと報告を受けた。その報告を聞き真っ直ぐ団長室へとやってきたが、団長が顔を見るなり「苦労かけたな」と一言。えっ、私、疲れた顔してた…!?
「すみません…、いくつか問題が発生しましたが、全て処理済みです。」
「そうか。見事だな。」
「…内容をお聞きになりますか?」
「いや。君が必要ないと思ったのなら、良い。」
「なら…小さな問題が立て続けに発生しただけですので、問題ありません。」
あんなの、団長のお耳に入れるほどの事はない。
今はそれよりも、作戦の内容を頭に入れなくては。極秘の任務なら、資料などは作成しないだろうから。
「優秀な部下を持って、私は恵まれているな。」
「そんな…、ふふ、嬉しいです。」
謙遜をしようとしたのだが、無理だった。だってこんなにストレートに褒めてもらえて、嬉しくないわけがない。自然と上がる口角を無理やり手で直して、向き直る。
「それよりも…作戦をお聞かせください。」
早く本題を話さなければと自身に鞭を打ち、机に広げられた陣形表を覗き込む。しかし私がいつもいる辺りを見回してみたが、名前の記載がない。私の代わりにそこには新たにリヴァイ班が結成されており、エレンを入れた手練の兵士が配置されていた。
「…エルヴィン団長、私はどこに──」
「君の配置は…ここだ。」
団長が名前を探す私の手を取り、ズズズ、と移動した先にようやく、名前を見つける。いつもよりも前方、次列中央・指揮班──
「……えっ…?」
ここは、指揮班──全体の指揮を執る、エルヴィン団長の班だ。まさか、私が、ここに…ここに配置されたとでも、言うのだろうか?
「君にはここで、私のサポートを頼みたい。地図を見てほしいのだが…、…ユニ?」
「いえ…、すみません、続けてください。…すみません…。」
今は作戦を聞かなきゃいけないのに……勝手に出てくる涙が、それを邪魔してくる。それでもちゃんと聞かなければと、一歩前に踏み出して地図を覗き込んだ。
「…そうだな。ここを通って行くと、いずれ巨大樹の森に当たる。中央の列のみ森に入ったら──」
団長は私の肩を抱き寄せ、そのまま作戦を話し始める。私はそれを聞き漏らさないよう、必死に団長の声に耳を傾けた。
やっぱりエルヴィン団長は、すごい。巨人になれる人間がいると分かったのだってつい最近の事なのに、彼はその力を使って敵を捕らえるとかウォールマリアを取り戻すとか巨人の謎を解き明かすとか、ずっと先の未来を考えている。私が逆立ちしたって思いつかないような発想ができる、すごい人。私は一緒に考える事はできないから、エルヴィン団長の元で、エルヴィン団長の指示で動く事で、彼の力になりたい。
「エルヴィン団長…必ず、成功させましょうね。…私、団長のためならなんでもします。なんでもできます。だから、なんでも命じてください。」
「…そうか…。なら、死ぬな。君が私を必要としてくれているように、私にも君が必要だ。」
「そ、……そん…、そんな、嬉しいセリフ…。…私っ、…つ、次の壁外調査で死ぬんですかっ…?」
「……死ぬなと、言っているんだが…?」
あぁ、エルヴィン団長を困らせてしまった。
でも、だって、エルヴィン団長がこの上なく私が貰って嬉しい言葉を言うから。
神様が私はもう長く生きられないから、最期に夢を見せようと情けをかけてくれたのかと思うほどには、幸せな言葉だ。こんなの、本当に私が貰っていい言葉なのだろうか?
「私っ、生きますっ…!エルヴィン団長のために、生きますッ…!!」
「はは……、君自身のために生きてほしいが…今はそれで良いか…。君はいちいち、大袈裟だな。」
「大袈裟なんかじゃありませんっ!」
そう、大袈裟なんかじゃない。彼は私の憧れで、尊敬する人で、心の支えで。言ってみれば、王と王に仕える臣下、もしくは教祖と信者のようなもの。彼がいなければ私は、まともに生きる事ができないのだから。