845年~851年
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審議の結果、エルヴィン団長、リヴァイ、そしてエレン自身の立ち回りによりエレンの身柄は調査兵団へ置く事となった。エレンの歯には、犠牲になってもらったが。全く、リヴァイの立ち回りがいい方に作用したから良かったが、見ていてヒヤヒヤしたしまだ幼いエレンがひたすら蹴られているのを見て心が痛んだ。リヴァイには、人の心が無いのか。
「痛かったよね、エレン…。」
「はい、まぁ…。」
「なぁエレン。」
「は…はい!」
「!」
ドサッ、と音を立てて、エレンの隣に腰掛けるリヴァイ。ビクッと体を揺らすエレンを庇うように、傷を拭うガーゼもそのままに2人の間に体を割り込ませた。完全にエレンは、リヴァイを怖がっているじゃないか…!
「チッ…。…エレン、俺を憎んでいるか?」
「い…いえ、必要な演出として理解してます。」
「なら良かった。」
エレンの忖度した返事を聞き「ほらな」とでも言いたげな顔で私を見るリヴァイ。「ほらな」じゃないよ。ビビって言い返せないだけなのに良いように捉えるんじゃない。
もう少し他人との関わり方も教えておくべきだったかもしれないと、過去の自分の行いを後悔した。
「調査兵団旧本部…私も行きたかったな…。」
「なんだ、行きたかったのか。」
「あぁいえ。懐かしいな…と思っただけです。それに私には、やらなくてはならない仕事がありますから。」
急な話だが、調査兵団は30日後に、壁外調査へと出征する。それには第104期生の新兵を伴っていくというので、壁外での立ち回りや馬を使った立体機動など、新兵に教えなくてはならない仕事が山ほどある。それに今回の壁外調査は従来のものと違い新しいルートを通らなければならないし、エレンの巨人の力が加わったものになる。それらを加味し新たな作戦を考えている団長の仕事をスムーズに回すのも、補佐である私の役目。こう見えて私は、実はとても忙しいのである。それこそ、入団したばかりの新兵並に。
「君達、調査兵団へようこそ。私は調査兵団団長補佐、ユニ・クラインです。実質、調査兵団のNo.2だね。堅苦しい挨拶はここまでにして…。みんな、よく調査兵団への入団を決めたね…。心から嬉しいし、心から歓迎するよ。ありがとう、みんな。」
入団した104期生の中には、見た事のある顔がちらほら。あのアルミンもちゃんといて、ホッと胸を撫で下ろした。
「私が今日君達に教えるのは、基本の立体機動訓練…の前に、現在の調査兵団の方針を教えよう。みんな、立体機動装置は外し、その場に座るように。」
「え…、座学、ですか?」
「座学というほど堅苦しいものじゃないよ。雑談と思って聞いて。なんなら、気になる事があったら発言もOKだよ。」
戸惑う104期生卒業生達。しかしミカサやアルミンが装置を外し始めたのを見て全員それに倣い、あっという間に全員着席した。雑談と事前に言った事もあり、みな思い思いに座っている。
「よし、始めようか。まず初めに。調査兵団第13代団長が掲げているのは、犠牲者を最小限に抑える、という事。信じられないかもしれないけど、
前団長から現団長へ代変わりしてから死傷者の数は格段に減少したの。…それでも、少なからず犠牲者は出てしまっているけれど…。」
「それは、調査兵団勧誘の際に聞きました。」
「…そうね。でも、私の隊の団員は、ここ数年入れ替わってないの。これが何を意味するか、分かる?」
「…ユニさんの隊は、生存率が高い…という事でしょうか?」
「そう!そうなの!私の隊はね、全員、私が選んだ人達だけで組んでるの。そして私の隊に入ったら、徹底的に教えている事がある。…ミカサ、覚えてる?」
ミカサとは、即席だったが班を組んだ事がある。その時に私は班員全員に、これを伝えたはずだ。
記憶を辿る仕草をしたミカサは、やがて思い出したように口を開いた。
「仲間が食われても、助けに行くな。助けに行くのは、自分が確実に生き残り、帰ってこられる確信がある時のみ。悲しむのも弔うのも、自分が生き残ってから。」
「さすがだね、ミカサ。…残酷なようだけど、これが一番だと、私は考えてる。生き残らないと、死んでいった仲間を思い出す事すらできないから。仲間を助ける事は、素晴らしい事だよ。現に私だって、何度も助けられた事がある。」
主に、リヴァイに、だ。彼は人を助けられるだけの、戦闘能力がある。助けて無事に生き残るだけの、立体機動の能力も。
「助ける事は、とてもいい事。だけど自分には人を助けるだけの技量はない。なら、どうすれば良い?答えは簡単。立体機動装置を使いこなせば良い。自分の手足のようにね。さ、みんなお待たせ。立体機動装置を装備しようか。」
ようやく、立体機動の訓練だ。訓練兵時代に飽きるほどやってきただろうが、調査兵団に入ったのだからこの先相手にするのはあのふざけた模型ではなく、本物の巨人。残りたった1ヶ月で、私はこの子達を訓練兵から調査兵へ、育てなくてはならない。
全員立体機動装置を装備し終えた事を確認してから、「じゃあ、着いてきて。…着いて来られるならね」と、森の中へと飛び出した。
まずは、立体機動装置を使った鬼ごっこからだ。
「ずいぶん、楽しそうだったな。」
「えっ?あ…声が聞こえてましたか?恥ずかしいなぁ。」
彼らが入団して初めての立体機動訓練は、思いのほか楽しかった。みんな想像していたよりも立体機動装置の扱いが上手く、楽しみながら訓練できた。彼らも楽しそうにしていたので、つい。
「彼らはどうだ?有望か?」
「はい!特にミカサは事前に貰っていた資料通り、すぐにでも戦力になるかと。アルミンも、体力さえつければ立ち回りでカバーできると思います。」
「彼か…。ずいぶんと気に入っているようだな。」
つい、ミカサやアルミンを贔屓して話してしまった。しかし彼ら…特にアルミンは、エルヴィン団長の言う通り特に気に入っている。だからついつい、肩入れしてしまう。
「アルミンは…団長に似ていますから。彼には、今どうすればこの状況を打破できるかを導き出す、力があります。私は彼の中に、エルヴィン団長と似たものを感じました。」
「そうか…。嬉しい事を言ってくれる。…が、少々妬けるな。」
「!」
妬ける。ヤキモチ。その言葉は、以前にも一度エルヴィン団長の口から出てきた事がある。驚いて彼を見ると優しく目を細めて「…私がヤキモチを妬くのは、おかしいか?」と。そのセリフも、あの時と同じだ。
私はその時、逃げた。何事もなかったかのように、最初からそんな会話はなかったのだと、蓋をした。エルヴィン団長もそれを承知で、何も言っては来なかった。
だけど、今は違う。私はもう、逃げない。
「いえ…、嬉しいです…。」
「フッ…、そうか。私も、嬉しいよ。」
エルヴィン団長が嬉しいと、私も嬉しい。
ひっそりとした口付けは、私の選んだ紅茶の、いい香りがした。