845年~851年
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バシッ!ドサッ、
「うっ……!…リヴァイ…、ちょっと、手加減して…!!」
対人格闘技の訓練を開始してから、既に15分経過した。リヴァイからしてみれば、まだたったの15分なのかもしれない。しかし彼に比べて対人格闘技の心得がない私はもうまともに体を動かす事もできなくなっていた。せっかく全身の筋肉痛が治ったばかりだというのに、これではまたすぐに寝込む事になってしまう。それでは、業務に支障が出る。そうなればそれこそ彼のいういざという時に、役に立たない事態に陥ってしまう。
悲痛な私の叫びを聞いたリヴァイは表情の読めない顔で私を離し「情けねぇな」と一言。
何も訓練兵時代、対人格闘技をサボっていたわけではない。これでも毎回、真面目に受けていた。それでもなおこのザマなのだから、適性がなかったという事に他ならないだろう。
リヴァイから解放されると疲労が一気に自身の体を襲い、上がった息を整えるので精一杯だった。体はすぐに起こせそうにない。
「はぁ…、…っは…。…リヴァイ…!」
「なんだ。やると決めたのはてめぇだろ?」
「だからといって…!…相手の実力が、見えてないの…!?」
リヴァイは、人に何かを教える事に向いてない。それも、壊滅的に。人に何かを教える時は、その人の今の実力を見極め段階的に成長するよう訓練内容をステップアップさせていくもの。私の実力を見極めは、最初の1回で済んでいるはずだ。それなのにリヴァイはその後も何度も何度も手加減なしで私を叩きのめすものだから……これでは訓練などではなく、ただの一方的な暴力だ。
「体に覚えさせるのが一番手っ取り早いだろうが。」
「私が覚えてるのは、やられた時の恐怖だけだよ!もう!訓練はするけど、別の人とする!!」
「あ?なぜそうなる。俺が適任だろうが。」
「適任なわけあるか!もう無理!職権乱用して申し訳ないけど、上官命令です!!」
「何言ってんだ、てめぇ…。」
「リヴァイには…、リヴァイの特訓には…っ、付き合ってられないって…、言ってるのッ…!」
グググ…と体を起こすが、筋肉痛、打撲、その両方が合わさって全身が痛んだ。だが、このままここにい続けるわけにもいかない。痛む体を引き摺って、リヴァイに背を向け歩き出した。
リヴァイはただ黙って、私が去るのを見送った。
覚束無い足取りで私が向かうのは、団長室。私の言う事に納得できないのであれば、エルヴィン団長からリヴァイに、進言してもらうしかない…!じゃないと、死ぬ…!!
コン、コン、
やっとの思いで団長室の前へと辿り着きノックを2回。手が震えて不自然なノックになってしまったが、やがて少しの間を置いたあと「どうぞ」と入室を許可する返答。カチャ…と弱々しい音を出し開かれたドアから中を覗くとエルヴィン団長が驚いたような表情で目を見開いて、側へと駆け寄って来てくれた。
「一体…、何が…。」
団長の顔を見たら安心して、膝から崩れ落ちそうになるのを抱きとめられる。ようやく、生きて帰ってこられた心地がした。
「リヴァイとの……対人格闘技の訓練、で…。」
「なに…?」
私の発したたった一言で何があったか察した団長は、私を自身の肩へと担ぎ上げ、寝室へと移動した。途中デスクの上にあったお茶を手にし、それをベッドのサイドチェストへ置いてから、私の体を優しくベッドへと降ろした。
「はっ…!エルヴィン団長!私っ、訓練終わりで…!ベッドが汚れてしまいます!」
「いや、いい。動かずにそのままでいろ。」
団長の言葉は絶対の私の体は、ピタリと動くのをやめた。そうしていたら団長の手は私のジャケットを脱がし始め、固定ベルトもひとつひとつ外していき、最終的にはシャツのボタンをも外し始めた。
「あの…、団長…?」
「!…これは…、リヴァイ…。」
「わぁっ!?」
開いたシャツの中を見て、顔を顰めるエルヴィン団長。え?と自分も自身の体を見るとところどころ赤くなっていて、それはそれは酷い有様であった。
「…すまない。私がリヴァイとの訓練を後押ししたばかりに。」
「だっ…、団長が頭を下げるような事では…!!私が決めた事ですし!お止めください…!」
肌蹴た衣服もそのままに、目の前で頭を下げるエルヴィン団長の肩に手を置いて頭を上げるようお願いする。が、団長はなおも頭を下げたままであった。
「エルヴィン団長…。…団長…、私、嫌です。団長に頭を下げられるなんて…。」
「しかし…。」
「私も、リヴァイがあんなにも人に何かを教えるのが下手だと思いませんでした。だから、エルヴィン団長のせいじゃありません…。」
ポタ、と私の太ももに、水滴が落ちる。それが自身の涙だと気づいたのは、視線を上げたエルヴィン団長が驚いたように目を開いたからだ。
「ごめん、なさい…。でも…、エルヴィン団長。団長は、私のために頭を下げたり、しないでください。」
「…ユニ…。」
「…私は、エルヴィン団長の事を、信じてます。誰よりも、何よりも。」
「………。」
私の足の横に置かれた手を取って、手の甲にキスをひとつ。おとぎ話に出てきそうなそれは少し気恥しく、誤魔化すように団長の手のひらに頬を擦り付けた。そうしていたら徐ろに団長のお顔が近づいてきたので、受け入れるように目を閉じた。
珍しく…というよりも、おそらく初めてだ。エルヴィン団長に見上げられるかたちでのキスは。
「…エルヴィン団長…お慕い、しております…。」
口から出た言葉は、無意識だった。気持ちが溢れてしまって、勝手に外へと出てしまった。気づいた時にはもう遅く、エルヴィン団長の耳にしっかりと届いたあとであった。
「…!っエル、ッ…!」
ドサ、と音を立てて、体が後ろへと倒れる。それなのに体が痛まなかったのは、背中に回されたエルヴィン団長の手が、私の体を支えてくれたからだ。
「…今の君の体に、負担はかけたくないのだが…君があまりに愛らしすぎて……。」
ギッとベッドが軋み、今度は真上から見下ろされるその瞳には今までにないほどに熱が篭っていて、心臓がドッドッドッ、と煩く鼓動を速める。
徐ろに団長が私の手を取り自身の心臓へと当てると、彼の心臓の鼓動が伝わってきて──彼もまた、鼓動を速めているのが分かった。
「私も、君を大事に想っている。」
肌蹴た私の胸に置かれた手を、ギュッと握った。私がどれだけドキドキしているか、伝わった事だろう。
もうどうにでもなれ、と伸ばした両腕は痣だらけでみっともなかったが、今は一刻も早く、エルヴィン団長に触れたかった。